「やりたい仕事」ではなく「求められる仕事」を

起業をしたけれどまったく上手くいかない。
お金ばかりがどんどん出ていって、うまくビジネスがまわらない。
起業したての経営者が陥りがちなこの悩みに答えはあるのでしょうか?

経営コンサルタントの小川晋平さんは数々のクライアントを見てきたなかで、売上を逃してしまうポイントが存在すると指摘し、そのポイントをクリアすれば売上を伸ばすことができるとしています。

まずは「売上1000万円」が最初の目標です。これをクリアするには一体どうすればいいのでしょうか。さっそく見ていきましょう。


「売上1000万円」も稼げないのなら「起業家としての稼ぎ方」を知るべき

多くの会社の寿命は、きわめて短いものです。

例えば、今日立ち上がった会社が10年後まで生き残る割合はだいたい6%ともいわれ、100社のうち94社はそれまでに倒産することになります。

競争に勝ち抜き、会社の売上を伸ばしていくことは至難の業。見通しを立てて独立し、起業に踏み切ったとしても苦戦している経営者は多いはずです。

では、だいたいどのくらい稼げれば、起業してひとつの壁を突破したと言えるようになるのでしょうか?

起業する人にとって、売上1000万円はひとつの指標です。厳しいことを言うと、1000万円稼げないのであれば、起業する意味はないでしょう。(『起業のマトリクス』1ページより)

こう断言するのは 『売上アップに必要な「打ち手」が一目でわかる 起業のマトリクス』 の著者で“高単価化コンサルタント”の小川晋平さんです。

なぜ「1000万円」が一つの基準となるのでしょうか? それはズバリ、売上1000万円以下では、諸経費や税金を考えるとサラリーマンをしているときよりも生活が苦しくなるからです。

小川さんは、「起業家としての稼ぎ方」を知って実践すれば、それほど苦労することなく1000万円を達成できると言います。もし、起業して1000万円以下しか稼げていないのならば、それは実力不足でも運がないのでもなく、単純に「稼ぎ方」を知らないからです。

もし会社で優秀なプレーヤーだったとしても、この「稼ぎ方」を知らなければ成功は覚束ないでしょう。経営者の稼ぎ方はサラリーマンの稼ぎ方とは全くの別物です。この点は心に留めておくべきです。

「やりたいこと」から始まる起業は失敗する!?

なぜ売上が伸びないのでしょうか?

それは「そもそも」の段階で間違えているからかもしれません。

「そもそも」とは「商品づくり」のことで、本書で詳細に解説されています。そのポイントをいくつか紹介しましょう。

小川さんによると、売上を伸ばすには 「商品づくり」「集客」「顧客化教育」「販売」「応援設計」 という5つの手順があります。その中で最も重要なのが最初の「商品づくり」。ここでミスをしてしまうと、あとの4つの手順をいかにがんばったとしても、売上は伸びないからです。

そして、商品づくりを考えるときには大前提があります。

それは、起業して稼げる人は、「自分がやりたいこと」ではなく、「自分が求められていること」からビジネスをスタートしているということです。

もし、「やりたいことを仕事にする」という考えで起業するとしたら、あらためるべきです。

自分の「やりたいこと」に固執しているならば、稼ぎを生む商品を生み出すのは難しいでしょう。小川さんは、俳優の福山雅治さんを例に出して説明しています。

福山さんはもともとロックやパンク音楽をやりたくて音楽界に入ったものの、甘いルックスを持つ彼に求められるのは恋愛ソングでした。では、福山さんはどうしたのか。「音楽を続けるには、まず売れないといけない」と開き直り、売れるために何でもいいから求められていることをしようと考えたのです。

これは起業家も同じです。商品づくりは自分のしたいことではなく、「求められること」からはじまります。

「やりたいこと」をビジネスで追い求めることも必要ですが、それはもっとあとの段階です。まずは「求められていること」を探すことからビジネスがはじまるのです。

誰がビジネスの相手かを見てアプローチを考える

小川さんは「求められていること」を探すのは難しくないと述べています。

「なんで○○にしないのだろう?」と思うことや、周囲の人たちが困っていることをすくいあげ、自分ができることをビジネスにすればいいからです。

『売上アップに必要な「打ち手」が一目でわかる 起業のマトリクス』小川晋平著
『売上アップに必要な「打ち手」が一目でわかる 起業のマトリクス』小川晋平著

それよりも考えるべきは、「誰に」「何を」売るのかということ。そこが決まれば、「売り方」が見えてきます。

例えば、引退間際の経営者に対して、2代目に事業を承継するための促進プランを商品として売ろうとしたときに、広く浅い広告を使ってもターゲットには届かないでしょう。それよりも、富裕層向けビジネスを展開している企業と提携するなどといったアプローチの方が理にかなっているはずです。

また、お客様の「欲しいもの」ではなく、「困っていること」を発見することも商品づくりの重要なポイントです。

なぜなら、「欲しいもの」はすでにニーズが顕在化しているため、稼げる商品を生み出しにくいからです。ビジネスチャンスは潜在的なニーズにあります。

考えておきたい「起業の5つの軸」

では、最後に本書119ページの「起業の5つの軸」をピックアップします。この5つは事業を起こすにあたって判断基準にもなるので、ぜひ覚えておきましょう。

1.業務経験があるか、ないか

常識を打ち破り、新たなビジネスを展開するには、かならずしもその業界での経験があったほうがいいというわけではありません。経験者だからこその強みと、未経験だからこその強みがあることを知っておきましょう。

2.自分の売りがあるか、ないか

自分の売りを徹底して洗い出すことが、事業を決めるときの大事なポイント。周囲からよく頼まれることはなんでしょうか? それこそがあなたの「売り」です。

3.成功事例のマネができるか、できないか

より精密な分析をした上で、成功事例をマネすることが事業成功につながります。ビジネスモデルを見極めてマネをしましょう。

4.顧客接触(特定)ができるか、できないか

顧客がどこにいるかを特定し、その人たちにちゃんと接触できるかどうか。接触できなければ、いくら素晴らしいビジネスを考えても絵に描いた餅です。

5.絶対叶えたいことがあるか、ないか

前述したように、成功したいなら最初は「やりたいこと」を置いておかなければいけません。でも「やりたいこと」は起業家にとっての原動力でもあります。それを持ち続けることが、本当の成功へとつながっていきます。


起業した(する)からには、成功を収めたいのは誰もが一緒。そして、早い段階から成功を勝ち取らなければ、その後の成長にも大きく影響が出てきます。

本書は起業後1年以内に売上1000万円を突破するために必要な考え方やノウハウを、小川さんが考案した売上アップのためのツール「起業のマトリクス」を使って説明した一冊。起業家や起業志望者はもちろんのこと、士業やコンサルタント、デザイナーやクリエイター、美容師などの専門性の高い仕事を生業にしている人にも役立つはずです。(提供: 日本実業出版社 )

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