定年退職や中途退職など会社を退職することになった場合、退職者に対して会社側から退職金という一時金が支給される。この退職金も給料と同じく支給される時に税金がかかるが、源泉徴収については会社側が手続きするため、退職者は源泉徴収された後の退職金を受け取ることになる。そのため大抵の場合は退職金の源泉徴収額を気にすることはないのだが、もし会社がその手続きを一切行っていなかった場合、支給される退職金は一体どうなるのだろうか? 今回はこうしたケースについて説明していきたい。
目次
退職手当等に対する源泉徴収とは
退職者へ退職金が支給される時、その退職金の源泉徴収票を会社からもらうことになっている。この源泉徴収票を退職者が使用する機会は基本的にはないのだが、確定申告などの税金からの償還を得るために必要となる場合がある。そのため、万が一に備えて退職金の源泉徴収票は会社から受取保存しておいたほうがよい。ただし、会社によっては意図的に源泉徴収票を出さないこともあるので、その場合は自分自身で会社に対して源泉徴収票の発行をお願いする必要がある。
また退職金の源泉徴収票が最も必要となる時は、会社が退職金を退職所得としてではなく賞与と同じ用途で退職者に支給をした場合である。普通の感覚ではあり得ないことであるが、この場合は退職金であっても退職所得控除が適用されず、通常の賞与と同じく所得税の分だけ減額になってしまうので気をつけなければいけない。
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退職所得の受給に関する申告書とは
退職金の準備で行うことの中に、あまり聞きなれないが「退職所得の受給に関する申告書」の提出がある。この「退職所得の受給に関する申告書」は、退職者が退職金を受け取る際に会社に提出することが必要な書類の1つである。退職金が支給される時に「退職所得の受給に関する申告書」という申請書が未提出だと、退職金に一律20%前後の所得税が源泉徴収されてしまうことになる。
会社は「退職所得の受給に関する申告書」を受理した後、支払い先の税務署長や住所地の市町村長から提出を求められた場合以外は税務署などに提出する必要はなく、会社が保管することになっている。これは、会社が税務調査を受けた時に税務署へ提示する場合があるからである。そのため、退職者本人がその控えを自分自身で持つ必要は原則無いが、もし貴重な退職金が所得税によって減ることに対して不安や心配であるなら、申請書のコピーを自宅で保管してもよいだろう。
退職所得の受給に関する申告書を出している場合
「退職所得の受給に関する申告書」の書類を提出すると、退職金に対して退職所得控除が受けられる。これは勤続年数が長いほど控除される額が大きくなるという特徴がある。一般的には勤続年数が20年以下である場合は、勤続年数に40万円を掛けた値が退職金から控除され、その後の残金の約半分が課税対象となる。ただし、控除額が80万円以下となった場合は一律80万円になる。
こうした事情により「退職所得の受給に関する申告書」は提出したほうが、控除額が大きくなるため忘れずにする必要がある。 ただし、退職金の控除が適用されるのは所得や退職金の金額が少ない場合だけなので、一定額以上の給与や退職金をもらった場合は、控除を受けられない可能性があるので注意したい。さらに「退職所得の受給に関する申告書」を提出するかしないかで源泉徴収される金額が変わるため、退職者が実際に退職する前に提出することが望ましい。
退職所得の受給に関する申告書を出していない場合
「退職所得の受給に関する申告書」を会社へ提出すると、会社側が所得税の金額などを計算し正確な源泉所得税額を算出して徴収してくれるため、退職者自身が確定申告を行う必要は原則無い。「退職所得の受給に関する申告書」は源泉徴収などの税金の控除を行う時に必要なため、それを会社へ提出しなかった場合は、退職所得控除を全く受けられなくなり、約20.42%の所得税を支払わなければならなくなる。
この所得税は源泉徴収されるため、後で退職者本人が確定申告して所得税額を精算する事になり面倒ではあるが、以下の場合に当てはまれば申告書を提出せずに意図的に確定申告したほうが得である。それは「年の途中で退職したため所得が少ない場合」である。年の途中で退職し、そのまま再就職しない場合は源泉徴収された金額が通常よりも多くなる事がある。また退職した年の所得が少ない場合は、社会保険料や生命保険料の控除をはじめとした様々な控除が給与所得に反映されないからである。
退職金は源泉徴収対象ということを忘れずに
退職金は賞与などと同じく会社から支給される一時金であるため、源泉徴収がなされる。「退職所得の受給に関する申告書」という書類を提出すれば、退職金に対して退職所得控除が受けられるため、支給される金額を増やすことができる。逆にその申告書を提出しなかった場合は賞与と同じく所得税がかかり、受け取れる金額が所得税の20.42%分だけ減ってしまう。そのため、少しでも退職金の金額を増やしたいなら、「退職所得の受給に関する申告書」は必ず提出しよう。
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