Succession
(写真=Africa Studio/Shutterstock.com)

中小企業庁の「中小企業白書2016年版」によれば、中小企業の数はおよそ380万9,000社にのぼり、事業者全体の99.7%を占めている。実は大企業は、全体の0.3%にすぎない。

こうした状況下で、中小企業における事業承継の重要度は年々高まってきている。次世代にどう経営をバトンタッチするか、また株式をどのように譲るのか。これらはどの企業においても喫緊の課題だ。

そこで、事業承継を株式という観点から見た場合、どのような問題があるのかを紹介する。その中で、種類株式制度について、またどのようにすれば事業承継で活用が可能なのかも解説していこう。

そもそも事業承継とは

事業承継とは、事業を後継者にバトンタッチすることで、一般的には、社長や代表取締役といった役職はもちろん、その企業の株式も後継者もしくは親族等に引き継がれることが含まれている。

経営者の年齢が高くなるにつれ、次世代へどう移行していくかを検討する機会は増加するだろう。しかし、いざ事業承継を行うという段階には時すでに遅く準備が追いつかないということも少なくない。次の後継者が決まらない、決まったとしてもうまく承継ができないといった問題点が出てくることも予想される。そのため、早め早めの事業承継を検討することが望ましい。

事業承継における株式に関する問題とは

株式に的を絞った場合、事業承継ではどのような問題が生じるのだろうか。

第一に、想定よりも株価が高くなることがある点が挙げられる。中小企業では経営者が一代で企業を育て上げたケースも多く、経営者の財産の多くを会社に費やしていることもあるだろう。こうした場合、資産も増えて株式の評価額も高くなる可能性がある。そのため、贈与や相続時に多額の贈与税や相続税を払わなければならない、といった問題が生じる場合がある。

第二に、誰に事業承継を行うかによってその後の財産争いに発展し、場合によっては事業に支障をきたす恐れも出てくる。仮に長男と次男がいたとして、長男に事業承継を行ったとしよう。この場合、長男だけに株式を譲渡できれば、その後の事業に支障をきたす可能性は減るだろう。しかし、長男だけに株式を譲渡すれば、次男にはそれ相応の財産を渡さなければ不満が出ることになり、相続トラブルの引き金にもなりかねない。

不満や相続トラブルを生まないために、長男と次男に株式をそれぞれ譲ったとしよう。片方だけが経営に関与する場合には、もう片方が株式をもつ意義は薄れることになる。むしろ、経営に関与しないのにも関わらず多額の贈与税や相続税を支払わなければいけない可能性もある。こうした問題点をクリアにする必要があることも、事業承継における課題といえる。

種類株式の活用方法、相続税評価方法

株式を次世代へ引き継ぐ方法として、種類株式を活用することを検討してみよう。一般に株式といえば普通株のことをさすが、企業はそれ以外に権利の内容が異なる株式(種類株式)の発行を行うことができる。

種類株式にはさまざまなものがあるが、事業承継で活用できるのは主に「議決権制限株式」だ。

議決権制限株式とは、株主総会における議決権の制限がかかる株式をさす。たとえば、普通株は後継者である長男に、次男には議決権制限株式を持たせることとする。この場合には、長男が経営に関する発言権を持つが、次男には発言権はない。しかしこれでは次男にとってデメリットしかないため、配当優先株式と組み合わせるのだ。これによって、配当は優先的に次男へと渡るようにできる。長男は経営に専念でき、次男は配当を優先的にもらう代わりに口出ししないことで、双方にメリットをもたらすことができるのだ。

それでは相続税の計算において、種類株式はどのように評価されるのだろうか。原則として議決権制限株式は、議決権の有無を考慮せずに評価される。つまり普通株式と同様の評価となる。

ただし相続・遺贈に限り議決権制限株式の評価額を5%減とし、その代わり議決権株式(普通株)にその評価減した額を加算するといったことができる。つまり、経営に関与する者への相続税の負担が多少重くなるのだ。

事業承継対策に種類株式を活用する時の注意事項

種類株式の活用は、事業承継において有効と捉えることができるが、注意点もある。踏むべき手順が多いことと、事前に後継者や身内に相談をしておく必要があることだ。実際に利用する場合には、税理士・司弁護士・司法書士、経営コンサルタントなどの専門家と相談して利用したい。

事前に専門家や相続人といった関係者に相談することで、その後の相続トラブルなどが勃発しないように理解を得ておこう。注意点に対処できれば、種類株式を活用して円滑な事業承継を行うことができるだろう。(提供: みんなの投資online

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