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2023年までの将来予測

仙台オフィス市場の現況と見通し(2017年)

仙台,オフィス市況
(写真=Thinkstock/Getty Images)

はじめに

仙台では2016年の一年間にオフィス市況は大きく改善した。過去数年間、他の主要都市で市況改善が進む中で、仙台市では人口の転入超過数の縮小に応じたオフィス需要増加面積の縮小もあり、空室率はほぼ横ばいで推移していたが、複数のIT系企業の進出などが、そうした膠着状況からの転換を促した。本稿では、仙台オフィス市況の現況把握とともに2023年までの将来予測を行う(*1)。

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(*1)2016年の市況見通し結果は竹内一雅「仙台オフィス市場の現況と見通し(2016年)」不動産投資レポート2016.2.23ニッセイ基礎研究所を参照のこと。
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仙台のオフィス空室率・賃料動向

仙台のオフィス市況は東日本大震災直後に大きく改善したが、その後は他の主要都市で市況改善が進む中で、2014年~2015年にかけて仙台市の空室率はほぼ横ばいで推移した。しかし2016年に入ると仙台市でも空室率は低下し始め、三幸エステートによると、2016年3月に10.30%だった空室率は、2017年2月には8.26%に改善した(図表-1)。

成約賃料(オフィスレント・インデックス)は、2010年下期を底に上昇傾向にあるが、他の都市と比べると上昇の勢いは強くない(図表-2)。ただし、現在、空室率の低下を背景に、賃料の上昇傾向が強まっており、特に大規模ビル(基準階面積200坪以上のビル)では上昇が顕著である。2010年下期の底値から全体では+22.7%の上昇だが、大規模ビルは+36.1%の上昇となっている(*2)。

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2010年頃以降の仙台のオフィス市場では、空室率に規模別の格差がほとんどみられないという特徴がみられた。それが、2016年の3月頃から大規模ビルの空室率の低下が顕著になり、空室率に格差が見られるようになってきた(図表-3)。

三鬼商事によると、仙台ビジネス地区(*3)の空室面積は2016年末に3万9千坪で、ピークである2010年の43%に減少している(図表-4)。なお、賃貸可能面積は46万坪で、2010年以降、横ばいで推移している。

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(*2)オフィスレント・インデックスの大規模ビル指数より。
(*3)三鬼商事の定義による。仙台の主要5地区(駅前地区、一番町周辺地区、県庁・市役所周辺地区、駅東地区、周辺オフィス地区)からなる。
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仙台のオフィス需給と地区別動向

仙台のビジネス地区では7年連続で賃貸面積(稼動面積)が増加し、空室面積は6年連続で減少している(図表-5)。賃貸面積の増分は2011年以降、縮小が続いていたが、2016年は5年ぶりで拡大するなど(年間で+5千7百坪の増加)、新規供給がない中で需要の増加が続いている。月次で見ると、2016年は4度の(2月、3月、9月、10月)1千坪程度以上の需要増加があり、これが年間の賃貸需要を押し上げた。

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仙台では新規のオフィスビルの供給は、2007年~2010年に大量供給があったが、その後の新規供給は非常に限定されている(図表-6)。新築ビルの竣工が少ないことから、過去6年間、仙台ビジネス地区での賃貸需要の増加分のほとんどは既存ビルが吸収している(図表-6)。

仙台ビジネス地区内では、オフィスビルの賃貸可能面積の35%が駅前地区に、32%が一番町周辺地区に集中している(図表-9)。2016年に賃貸面積は5千6百坪増加したが、このうち、駅東地区が+2千6百坪でもっとも多く、次いで駅前地区2千百坪、一番町周辺地区+1千7百坪、県庁・市役所周辺地区+6百坪と続き、周辺オフィス地区では▲1千4百坪の減少だった。

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地区別にみても、仙台ビジネス地区の全ての地区で空室率は昨年と比べ低下した。2016年は特に駅東地区での低下が大きく、10月に大幅な低下がみられた(図表-10)。その一方で、駅前地区では4月頃から空室率は下げ止まり、底ばいの状況となっている。

2016年は12月に日本IBMが仙台駅東口駅前に「IBM仙台クライアント・イノベーション・センター」を開設(将来的に300人の採用を計画)するなど、IT系企業の仙台への拠点設立が多く見られた(*4)。こうした新規進出に伴う需要増加は二次空室を生じないことからも、市況全体にとってプラス面が大きい。

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(*4)日本経済新聞社「仙台にIT企業続々-16年度、日本IBMなど7社進出」(2017.1.12)より。そのほか、河北新報「日本IBM、仙台にサービス拠点 5年で100億円投資、地元雇用に力」(2016.6.16)、河北新報「IT技術者確保 仙台で ベンチャー進出拡大」(2016.5.10)、河北新報「全国から進出 ITベンチャー企業 仙台顧客支援拠点に」(2016.10.22)、日経産業新聞「IT企業が仙台に集積、大学教育や市助成が充実」(2017.1.13)など。
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仙台の新規供給・人口見通し

仙台では今年4月に、中心部の新築ビルとしては3年ぶりとなる野村不動産仙台青葉通ビルが竣工する(図表-11)。それ以降、現時点では2020年まで大規模ビルの開発計画はない。

仙台市は若年層の集積度が高い都市である。高校卒業後の若者の流入により17歳から19歳にかけて人口が1.4倍に急増している(図表-12)。ただし、流入した若者は必ずしも仙台市に定着せず、その数年後には転出超過に転ずることもあり(図表-13)、19歳を小さなピークとする特徴的な人口ピラミッドが形成されている。

仙台市の人口の転出入は、東日本大震災後にそれまでの転出超過傾向(▲数百人程度)から、大幅な転入超過へと転換した。2011年以降、転入超過数はしだいに縮小し、2016年は+615人と2012年(+9,284人)の6.6%となった(図表-14)。

仙台市のオフィス賃貸面積の増減は、転入超過数との関連性がみられるため(図表-15)、オフィス需要の減少が懸念されていたが、複数のIT系企業の進出がオフィスの需要の減少を回避させる方向に働いたと考えられる。

2010年から2015年にかけて、仙台市では大幅に人口が増加しだ。ただし、生産年齢人口は減少が続いており、現時点での予測では、今後もその傾向は継続すると予測されている(図表-16)。

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仙台のオフィス賃料見通し

仙台における今後のオフィス供給や人口流入、経済予測などに基づくオフィス需給の見通しから、2023年までの仙台のオフィス賃料を予測した(*5)。

仙台の成約オフィス賃料は、新規供給の少なさとIT系企業などの企業進出を背景に、今後も上昇が続くと予測された(図表-17)。標準シナリオによると、2016年下期から2020年(下期、以下同じ)までに+15.5%上昇(2016年下期比)した後に下落に転じ、2023年には同+8.0%になるという結果となった(*6)。

当面の賃料上昇のピークまでの上昇率は、楽観シナリオで+24.5%(2016年下期比)、悲観シナリオで同+5.0%、2023年の賃料は楽観シナリオで同+17.5%、悲観シナリオで同▲4.8%だった。

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(*5)ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2016~2026年度)」2016.10.14、斎藤太郎「2016~2018年度経済見通し~16年7-9月期GDP2次速報後改定」2016.12.8などを基に、今後の実質GDP成長率見通しを設定した。
(*6)仙台市の成約賃料は、2016年下期に前年比で▲7.9%の下落だったため、2020年のピークは2015年下期比では+6.4%となる
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おわりに

2016年は仙台のオフィス市場にとって変化の年であった。日本IBMをはじめ、アマゾンジャパン、メルカリ、グルーポン・ジャパンなどのIT系企業が続々とカスタマーサポートセンターを中心とする拠点設立を表明したためだ。河北新報社によると、これら企業による採用人数は1,500人を超える見込みという(*7)。

仙台市の人口に関する最大の問題のひとつは、高校卒業後に大学や専門学校への入学で仙台市に流入してきた若者が定着せずに、就職やUターンなどで数年後には市外に転出してしまうことであった。現在ではわずかながら転入超過の状況にあるが、今後再び、震災前と同様に転出超過に転ずる可能性もある。今回のIT系企業の進出(*8)は、仙台における若者の就業と定着をもたらす可能性という点で、オフィス市場にとっても重要な意味を持つと思われる。

このように仙台のオフィス市場はIT系企業の進出で環境が大きく変化した。現在、こうしたIT系企業のさらなる進出への期待が高まっている。ただ、そのためには、新規の進出企業を受け入れるオフィスビルが不可欠である(*9)。

1990年代半ば以降の仙台のオフィス市場では、新規供給が特定の期間に集中し、それに伴う供給過剰でその後は新規供給がストップするというサイクルが現在を含め2度発生しており(図表-18)、現時点では2018年以降の新規供給の予定がない(図表-11)。IT系企業の進出の流れを継続させ、仙台のオフィス市場が着実に成長するためにも、築古ビルの再開発を含め、安定した新規供給が続くことが望まれる。

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(*7)河北新報「全国から進出 ITベンチャー企業 仙台 顧客支援拠点に」(2016.10.22)
(*8)仙台市内の若年層の人材の豊富さに加え、仙台市による企業立地への助成補助金の拡充(2016年4月より) なども要因になったという。助成制度については仙台市「企業立地促進助成金の概要」を参照のこと。
(*9)仙台がこれらIT系企業のカスタマーサポートセンターとしての進出先として選ばれた理由のひとつに、コールセンター立地の一大拠点である札幌市をはじめとする他の主要都市において、好立地の築浅ビルにコールセンターなどが入居できる空室がほとんど残っていないという背景もあったのではないかと考えられる(図表-1都市別空室率参照)。現在みられるIT系企業の進出の流れを止めないためにも、一定程度の新規のオフィスビル供給が続くことが重要と思われる。
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竹内一雅(たけうち かずまさ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 不動産市場調査室長

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