インタビュー,マネックス証券,広木隆,米国10年債利回り
(写真=ZUU online)

様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任し、長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に定評があるマネックス証券チーフ・ストラテジスト広木隆氏。個人投資家はどのような視点で金融マーケットを見ればよいか、その知見を聞いた。(聞き手:ZUU online編集部 菅野陽平)※インタビューは2017年1月26日に行われました。

まず確認したいのは「米国10年債利回り」

——広木さんは様々な経済指標をご覧になっているかと思いますが、通常の個人投資家が定点観測しておくべき指標はありますか。

まずは米国の金利です。金利と言っても、政策金利や長短金利など実は色々な種類がありますが、一番ポピュラーな米国の10年債利回りを見ておきたいところです。特に「米国10年債利回り」には、金融マーケットの見方が全て集約されているといっても過言ではないので、ぜひ定期的にウォッチするべきだと思います。

——米国10年債利回りをどのように見ていけばよいのでしょうか。

色々な見方がありますが、教科書通りの解説をすると、金利上昇は景気が好調の証です。しかし、問題はそこから先。更なる金利上昇を良いサインと取るか、悪いサインと取るかは、正直なところ状況次第です。米国景気が強いことが、金融マーケットにどう影響するかは、意味がいくつかあります。

米国景気が強い、だから米国株も上がるし、リスクオンムードで世界的に株価が上がる。しかも利上げによって米国金利が上がれば、円安ドル高が進み、日本には追い風。これが一般的なポジティブな見方だと思います。しかし、景気が過熱した場合、もしくは過熱しそうと予想される場合、FRBの利上げが加速する可能性もあります。そうすると、今後は米国景気が頭打ちになると見ることもできます。

重要なことは「インフレが加速してくるか」

——更なる景気拡大か、景気後退に入るのか、どのように判断すればいいでしょうか。

「インフレが加速してくるか」が重要なポイントです。金利上昇に加え、インフレも加速してくると何が起こるかというと、少し難しい話になりますが「実質金利が上がりにくくなる」ということです。実質金利というのは、名目金利から物価上昇率(期待インフレ率)を引いたものです。実質金利が上がらないと米ドルの頭が重くなってくる、米ドル高圧力が鈍るということなんです。

(編集部注)実質金利=名目金利−物価上昇率(期待インフレ率)

インフレのなかでも、米国の賃金インフレが加速するかどうかです。そこが一番重要な点です。現在、多くの金融市場関係者は、米国の賃金インフレが加速することを「良いサイン」だと捉えていますよね。労働市場の改善に加えて、賃金も上昇してくると、労働者の懐具合がよくなって、それが消費に回り、景気が良くなると考えられています。今は「賃金上昇」をポジティブなシグナルとして待っているのです。

ところが、どんどん賃金インフレが加速していくと、企業が労働者を雇わなくなります。現在、なぜ失業率が5%を切るくらいまで米国の労働市場が改善しているかいうと、労働者の給料が安いためです。リーマン・ショック以降、職を失った人がたくさんいて、給与は安くてもいいから働きます、と考えている人が一定多数いたのです。だから企業は設備投資せず、まずは賃金が安い労働者をどんどん雇った。労働生産性は上がってこないのは、このような理由も関係しています。

——米国の賃金上昇は良いことばかりではないのでしょうか。

FRBによる利上げで名目金利が上昇する一方、インフレも進む状態では、実質金利は上がりにくくなります。一般的に、実質金利の低下は自国通貨安(米ドル安)に繋がります。そうなると為替が円高ドル安に巻き戻るリスクが出てきます。投資マネーは、相対的に実質金利が高い国へお金が流れる傾向があるからです。

米国の賃金上昇は、一般的にポジティブな現象だと思われておりまして、それは間違いではないのですが、コインの裏表のように、別の視点を持っておくことも重要です。米国の賃金インフレに火がつくと、円高に巻き戻る前兆にもなりますから、米国10年債利回り(名目金利)と賃金上昇(インフレ)の2つを注意深く見ていくべきだと考えています。

広木隆(ひろき・たかし) マネックス証券執行役員チーフ・ストラテジスト。上智大学外国語学部卒業。国内銀行系投資顧問、外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任し2010年より現職。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師を務め、メディアへの出演も多数。マネックス証券ウェブサイトにて、最新ストラテジーレポートが閲覧可能。「ストラテジストにさよならを 21世紀の株式投資論」「9割の負け組から脱出する投資の思考法」「勝てるROE投資術」など著書多数。

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