企業の倒産,経営危機
(写真=PIXTA)

かつて日本の産業界は、家電製品や自動車産業などを筆頭に、世界市場を席巻していた時代があった。しかし、それが今では一転、一流とよばれる企業でも経営難に陥ることが、そう珍しいことではなくなっている。

日本企業の危機は20年前から起こっている

最近よく話題に上るのが、「世界の亀山モデル」によって液晶業界を牽引してきたシャープ <6753> である。同社の屋台骨を揺るがせたのは、成功したはずの液晶部門への過剰投資であった。現在は台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)によって買収され、ようやく3年ぶりに事業が黒字化する見通しだという。

シャープとともに昨今、世を騒がせているのが東芝 <6502> である。東芝の凋落は2015年の粉飾決算から始まったが、今の同社の重荷となっているのが原発部門である。2016年4〜12月期の決算で、同社は所有している米原発事業に関して7125億円の損失を計上する予定となっており、優良事業を売却することによってこの難局を乗り切ろうとしているものの、企業解体の瀬戸際という声もある。

実は、日本企業のこうした業界図の変化は、今、急に始まったものではない。銀行業界、化学業界、自動車業界、小売業界等々、現実にはもう20年以上も前から、各業界は吸収合併、合弁、買収などによって再編が進行してきていた。それが今、我々にとって身近な家電業界にまで及んできているということである。

企業が経営難に陥る要因とは

日本の大手メーカーが安穏としていられなくなった一番の理由を一言でいうと、「今までのやり方では通用しなくなった」ということである。

たとえば先のシャープを例に挙げれば、液晶の成功により、2004年に三重県に亀山工場を、2006年に亀山第2工場、2009年には大阪堺市に世界最先端の液晶工場と世界最大の太陽電池工場を建設した。これらによって一時は業界トップに立ったが、2008年に起こったリーマン・ショックを始めとする世界的な景気後退の中でサムスン電子との競争に敗れ、多額の負債に苦しむこととなった。

同社がこうなった要因として考えられることのひとつに、経営陣が「品質を極めれば世界が振り向く」と思い込み、価格競争の可能性や市場の変化などに意識を向けていなかったことが挙げられる。たいてい、企業が経営難に陥る原因とは、何かに固執した結果であることが多い。

「固執したもの」とは、経営者の面目なのか、派閥争いなのか、かつての栄光に対してなのか、それとも見たくない現実に蓋をしたからなのか。原因は必ずしもひとつとは限らないだろうが、いずれにしても、これらを一言で言い表すのであれば、それは「変化に対応しきれなかった結果」である。

実際、会社が創業時とはまったく違う業態になっているということは珍しいことではない。たとえば電機メーカーのソニー <6758> は、かつてはテープレコーダーやトランジスタラジオで事業をスタートし、ウォークマンやパソコンなどでも一世を風靡したが、現在ではゲーム機や金融が経営を支える主力部門となっている。楽天市場でEC市場を切り拓いた楽天 <4755> も同様である。

変化に乗り遅れて失速した企業の例を挙げると、スーパーのダイエーが挙げられる。かつては小売業で日本初の年間売り上げ1兆円を突破し、業界の革命児として大きく注目を浴びた。

しかし、やがて時代の変化に追いつけず、経営難に陥った際、創業者が優良子会社のローソン <2651> やリクルート <6098> の株を手放してダイエーを残すことにこだわったために、結局はイオン <8267> の完全子会社となってしまった。

どんなに成功を収めた企業であれ、変化し続けない限り生き残ることは難しいのである。創業者の執務室に恐竜の模型を置いていたのは「恐竜のように変化に対応できないと絶滅する」という戒めのためだったと言われている。

アメリカの巨大企業が成長し続けている理由も「変化」

「変化」に関して、かつてGE(ゼネラル・エレクトリック)の経営者、ジャック・ウェルチ氏は『ウィニング 勝利の経営』の中でこのように述べている。

「GE時代、私たちは常に変化し続けていた。今の世の中、どの会社もそうだろう。戦線に参加し、ましてや勝とうと思えば当然だ」

GEは1980年代、ウェルチ氏のもとで家電製品部門や石炭会社等を切り離し、代わって金融サービスやハイテク技術などに経営資源を投入した。氏の「業界でナンバー1、ナンバー2になれる事業だけで勝負する」という戦略によって、同社は大きな成長を遂げることとなった。これにより、ウェルチ氏は「20世紀最高の経営者」と呼ばれるようになったのは、ご存じの通りだろう。

おそらく今後、ビジネスの世界では、こうした再編の動きがますます活発化するに違いない。それは業界内の動きだけにとどまらず、会社単位でも事業の取捨選択や部署の統廃合、人員の再配置、整理などが進んでいくはずである。

社長が「手放したくない」と思う人材とは

それでは、こうした現状を踏まえて、今後、会社で生き残っていくためには、サラリーマンとしてどのように行動していけばいいのだろうか。

現在、経営者の立場にいる筆者が、もし他人から「どういう人材を手元に残しておきたいか?」と問われるならば、それは「新しいことに果敢にチャレンジしてくれる人」だと返答する。

もちろん、今の仕事をしっかりやってくれる人も大事ではあるが、もとはと言えば、現在行われている商売というのも、「未来の事業に使うための原資を今、稼いでいる」ということである。それだけ、「企業にとって未来は大切」ということなのだ。

これからは、オートメーション化やAIがますます進む世の中になっていく。要は、現状を維持するのに人手は今ほど要らなくなる。だから経営者にとっては、「ともに生き残る道を模索してくれる人」というのが余計に重要になってくるのである。

俣野成敏 (またの なるとし)
1993年、シチズン時計株式会社入社。31歳でメーカー直販在庫処分店を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)や『一流の人はなぜそこまで◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に10万部超のベストセラーに。2012 年に独立。複数の事業経営や投資活動の傍ら、「お金・時間・場所」に自由なサラリーマンの育成にも力を注ぐ。

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