はじめに
社会や企業経営のグローバル化が進み、これまで日本の会社では当たり前とされてきた「年功序列」や「終身雇用」といった制度が崩れつつある。政府が進める「働き方改革」も、この流れをさらに加速されることだろう。つまり、これからは、どんな企業で働くかではなく、個人がどのように働き、いかに自分の市場価値を高められるかが重要となる。
そんな社会で、どうすれば競争を勝ち抜き、エグゼクティブの道を歩むことができるのか。これからの企業人に求められる行動や思考法について考えてみよう。
なぜ、日本企業は落ち込んだのか
かつて日本の産業界は、家電製品や自動車産業などを筆頭に、世界市場を席巻していた。しかし、それが今では一転、一流とよばれる企業でも経営難に陥ることが、そう珍しいことではなくなっている。
どうして、日本企業は力と輝きを失ってしまったのか。具体例を挙げながら、過去を振り返り、今、どのような社員が求められているのかを考えよう。
日本企業の危機は20年前から
低迷する日本企業の象徴の一つとして、しばしば話題に上るのが、「世界の亀山モデル」によって液晶業界を牽引してきたシャープ <6753> である。同社の屋台骨を揺るがせたのは、成功したはずの液晶部門への過剰投資であった。現在は台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)に買収され、2018年3月期でうやく4期ぶりに事業が黒字化した。
シャープとともに世間を騒がせたのが東芝 <6502> である。東芝の凋落は2015年の粉飾決算から始まったが、同社の重荷となっていたのが原発部門だった。同社は経営破綻した米原発子会社を売却。さらに優良な半導体事業まで売却して、難局を乗り切ろうとしている。
実は、日本企業のこうした業界の変化は、今、急に始まったものではない。銀行業界、化学業界、自動車業界、小売業界など、現実にはもう20年以上も前から、各業界は吸収合併、合弁、買収などによって再編が進行してきていた。それが今、われわれにとって身近な家電業界にまで及んできているというだけである。