数年前になるが、ロート製薬 <4527> が社員の副業を認める旨を発表し、話題となった。もともと、法律上では労働者の副業を禁止する規定はない。しかしこれまでは「本業に支障が出る」として、多くの会社が就業規則に副業禁止の項目を入れていた。それが今、徐々に解かれているのである。
これは、裏を返せば会社が従業員をまる抱えしておけなくなったという意味である。早い話が「今後、給料を上げる保証はできないので、足りない分は自分で何とかしなさい」ということだ。つまり、企業が副業を認めるということは、社員個人に対し自助努力を求めているということでもある。
そうなると、社員の側も、これまで通り会社に与えられた務めを果たしていくか、副業と本業の両立を図るか、いっそのこと独立するか、という選択を迫られることになる。
最終回の今回は、独立を目指すサラリーマンのために役立つアドバイスを送ろう。
会社員をやりながらでも起業は可能
副業OKとなれば喜ぶ人は多いだろうが、必ずしも副業に収まっている必要はない。実際は会社員をやりながら、自分の会社を設立することもできる。
たとえば万一、副業禁止が就業規則の中に含まれているような会社であっても、家族の名前で会社を興し、自分はその株主になれば良い。株式投資と不動産投資は昔から会社員であっても寛容的な副業だからだ。副業禁止の規定がない会社であれば、自らが代表取締役になってもいいし、個人事業主になってもいいだろう。
実は筆者も独立する前、会社員をやりながら、本業とは関係ないフランチャイズ店をオープンさせた。その会社は今では右腕にマネジメントを任せ、しっかり利益を出しながら4店舗になろうとしている。
会社員時代には、本も出版した。会社のブランドに頼らなくても、個人名でどこまで通用するのか実験し、「これならやっていける」という手応えをつかんでから独立したのである。間違っても「嫌いな上司の元で働きたくない」とか「仕事がつまらないから」という理由で安易に独立しないことが大切だ。
会社員であることの「利点」
独立を考える会社員は多いと思うので、せっかくだから筆者の経験を少しご紹介しよう。
まず、注意してほしいのは、「会社を設立しよう」と思っても、すぐに会社員を辞めてはいけないということである。
ときどき「法人の方が個人より信用力がある」と勘違いし、焦って会社を辞めようとする人がいるが、実績のない会社にすぐに信用力がつくことはない。
それでは、どうすればいいのかというと、「会社に長年勤務している会社員」という信用力を使うのである。
多くの人は気づいていないが、銀行にとって、会社員は公務員の次に安心してお金を貸せる相手である。会社員は一定の給料が毎月入り、基本的に所得がマイナスにはならないからだ。勤続年数が3年も過ぎると社会的な信用力になる。
銀行からすれば、貸す際は「確実に返してくれる」ことが大前提である。入口の審査で属性はしっかりと見るが、その後独立したからといってそれを理由に借り入れをすぐに返済せよという事態にはならない。換言すると、きちんと返してくれさえすれば、ずっと会社員でいなくてもいいのである。