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雇用の常識が通じない時代に
サラリーマンの雇用環境が大きく変化し、厳しくなってきているのを肌で感じている人は多いだろう。とはいえ、どんな世の中になっても、必ず業績が好調な企業というのはある。そういう調子のいい企業に最近よく見られるのが、黒字でもリストラをしていることである。
かつての常識では、企業は「赤字になったらリストラを行う」だった。今は「黒字だからこそリストラを行う」時代だ。
なぜ、好調な企業がリストラをするのか、その中で社員はどうやって身を守り、勝ち抜いていったらよいのか、考えてみよう。
近年のリストラ事情
以前のリストラは、単に対象者を年齢で輪切りにするだけだった。その上で面談を行う際の圧力で差をつけた。しかし今は、個人を直接ターゲットとするようになってきている。辞めてほしい人のリストラ通知書には退職金の上乗せなどを行い、辞めてほしくない人の通知書には上乗せをしないなど、通知の入口の段階から差をつけるのである。
企業の人員削減に対する需要を見越して、最近はリストラに手を貸す人材会社や社労士も現れ始めた。企業に代わって従業員と交渉を行い、退職に応じた者に別の仕事を斡旋する人員整理稼業である。こんなことが許されるのかどうかはともかく、そこに需要があるのは間違いないようだ。
一体なぜ企業は、ここまで露骨な人員整理を行おうとするのか。理由のひとつに、社内の事業形態が変化してきていることが挙げられる。昔の企業は、ひとつの事業に真っ向から取り組み、市場のパイを取ることを目標とした。
市場が大きくなっていく前提があれば、より多くのマンパワーと資本力がビジネスの勝敗を分ける。そうやって自動車産業など、かつては多くの日本製品が、世界の市場を席巻してきた。
いまは市場の拡大ではなく、市場の移り変わりを前提としなければならない。社員を大切にする家族主義を貫いた名経営者が舵取りをしていた時代とは、前提条件が変わっているのだ。