プリウス,トヨタ,PHV
(画像=トヨタWebサイトより)

トヨタのプリウスPHVがフルモデルチェンジし、EVモードでの走行距離を68.2kmに拡大したほか、充電した電気が切れても、37.2km/Lの低燃費ハイブリッド車として走行ができる。また量産車としては世界初、ソーラーパネルで充電できる仕組みも取り入れている。

初代は販売不振だったプリウスPHV

プリウスPHVのPHVとは、プラグインハイブリッドの略で、スタンダードなプリウスとは違って、充電をして走行することもできるクルマだ。EVモードのみのほか、充電が切れた後は、ハイブリッド車として走行もできるので、充電のインフラを気にする必要がない。

プリウスPHVが誕生したのは2012年で、当時は今よりも充電ステーションの設備が不十分であり、100%EVでは遠出にはまだまだ不安がある時代だったことから、電気とハイブリッド車の切り替えができるという両者のイイトコどりをした存在として注目を集めていた。

だが初代プリウスPHVはグローバルで累計販売台数が7万5000台、日本国内では約2万2000台となっている。日本では最も売れた年でも1万1000台に止まることとなり、目標の年間3万5000~4万台には遠く及ばない結果となってしまっていた。

その原因として、モーターのみで走行する距離が26.4kmと短かったこと、それにもかかわらずスタンダードなプリウスよりもかなり高額となっており、その価格差を埋める利便性がユーザーに感じられなかったことが大きな原因ではないかと言われている。

電池の容量が2倍に増量

新型プリウスPHVではバッテリーが8.8kWhと従来の2倍になっており、EV走行距離は68.2kmと、旧型の2.6倍も伸びた計算になる。EV走行での最高速度も135km/hとし、電気のみで走行できる領域を拡大した。70km近くあれば、毎日の通勤ならばEV走行だけで賄え、電気自動車としての利用がほとんどだという人もいるだろう。

また1.8L高効率エンジンを搭載し、HV走行燃費も37.2km/Lの低燃費を実現しているから、遠出をした際にも安心だ。

充電は、急速充電なら20分で満充電量の約80%、普通充電の200V/16Aなら2時間20分、100V/6Aなら14時間程度で満充電となるなど、充電にかかる時間も格段に進歩している。

具体的にはどのような充電方法となるのだろうか。AC100V/6Aの普通充電では、家庭の配線を使えるため、専用の配線工事は要らない。 外出先では約4200基のトヨタの販売店や、合同会社日本充電サービス(東京都港区)の約1万4600基充電スポットで充電が可能となっている。購入したユーザーは、何らかの形で、充電できるはずだ。

さらに量産車では世界初となる「ソーラー充電システム」を採用した。太陽光のエネルギーを、駐車中は駆動用バッテリーに供給。最大約6.1km/日(平均で約2.9km/日)の走行分の電力量が充電できる 。走行中は補機バッテリーの消費を補って、燃費向上に貢献している。

外部給電機能は、今回追加した「EV給電モード」を選ぶことで、エンジンをかけずに家電が利用でき、さらにエンジンが作動する「HV給電モード」では、最大1500Wの出力でガソリン満タン状態から約2日の電力を供給できる。

また社有車に外部給電付車両を導入し、災害時に貸出するなど、トヨタ災害復旧支援活動の充実に貢献している 。

プリウスPHVも、TNGA(Toyota New Global Architecture)基づき、デザイン面にも力を入れている。全体としては、現行のプリウスから、尖った部分を減らし、FCVのMIRAIに通ずるデザインに感じられる。透明アクリル樹脂を採用した大型グリルと4眼LEDヘッドランプは未来的な印象だ。先行車のテールランプや対向車のヘッドランプで車両を認識し、照射範囲を左右16個のLEDで細やかに制御する「アダプティブハイビームシステム」を採用し、 安全性にも寄与している。

またリヤでは、バックドアガラスに採用した2つの膨らみを持つダブルバブルウインドー。一本の赤いラインでつないだハイマウントストップランプなど、一目で「プリウスPHV」と分かる、印象づけられるデザインとなっているとこ ろも、魅力を感じる一因となるだろう。

プリウスPHVの販売

ではこのプリウスPHVの日本での販売台数はどうなっていくのだろうか。トヨタによれば、新型プリウスPHVは月間目標台数を2,500台に設定していたが、予約受注で約8,000台にまで達しているという。なかなか好調ぶりがうかがえる数字だ。

最も安いモデルは326万円からあるが、スタンダードなプリウスの方は247万円から買うことができる。

この差をどう考えるかというところだが、PHVの方は、9万6000円の補助金が出ることもあり、ランニングコストを考えるとお得だと考える可能性は大いにあると思われ、販売台数は大きく伸びていくのではないだろうか。

なおプリウスPHVの一番高いグレードだと420万円だが、MIRAIは670万円の本体価格から202万円の補助金をひけば468万円となるので、近い存在の候補として浮上してくることも考えられる。

より環境と効率を重視した次世代エネルギーの自動車を考える上で、重要なポジショニングとなるのが、このプリウスPHVだろう。(高橋大介、モータージャーナリスト)