「見直し」「乗り換え」で連想するものはなんだろうか。携帯電話の契約、住宅ローン、自家用車の買い替え……。
同じ言葉が保険に対して、顧客側から普通に使われるようになったのは、この10年ぐらいだろう。それまでは「若いときに加入したものを解約するのは、損だ」という考え方が、一般的とされていたからだ。今回はこの4月から大きく変わる予定利率に伴って、見直しの機会にある読者のために、筆者の保険についての考え方を書こう。
過去最低の予定利率「0.25%」
この4月、ほとんどの保険会社の予定利率は1.00%から0.25%へと、大幅減になる。同じ商品や年齢条件でも、保険会社や商品によっては、保険料が最大20%以上増えてしまったり、積み立て機能がある商品は、解約返戻金が15%近く下がってしまったりするのだ。理由はこの市場金利。言うまでもなく2016年発動の、日銀によるマイナス金利政策が大きく影響している。
では急いで見直さなければ、という方もいるだろう。筆者は原則、新規保険提案時には「損・得」という考え方は推奨しないし、顧客にもこの言葉を使うことは少ない。
「損・得」は「同じ条件下で、同じ保険事故が発生、もしくは同じ保全手続きをした場合」でしか判断ができず、積み立てが目的の保険をのぞく「保障のための保険」では、いつ何が起こるか分からないからだ。
保険の大原則 「いつ、何が起こるか、分からない」
「いつ」加入するかによってランニングコストはもとより、生涯コストは大きく変わるし、「いつでも」加入できる保障など、どこにもない。
加入しようと思っていた矢先に、大病が見つかったり、大怪我をして保障が削減されたり、そうなることが分かっていれば、誰しもが「事故が起こる直前」に加入するだろう。当たり前だが、分からないから「保険」なのだ。
高額保障でも短期間で保険料が上がってしまうAプランと、保障はミドルサイズでも、一生涯保険料が上がらないBプランがあるとする。
保険期間や保障内容が違う場合、その人に「いつ」「どんなことが」「起こるのか、起こらないのか」分からないから、「どっちのほうがお得ですか?」と聞かれても、「明日私は死にますか?」と聞かれているようなものだ。
もし、「こっちがお得ですよ」という営業マンやファイナンシャルプランナーがいるなら、その答えの定義を聞いてみるといい。
そしてその定義に沿わないケースに陥った場合、「損なのか得なのか」また質問をしてみるといい。おそらく売る側にとって得であることが少なからずあるだろう。
新規で検討なら早いほうがいい
話は戻るが、先の記述の話は「新規で保険を検討する場合」の話である。
まったく何の保険にも加入していない20歳代の新入社員でも、死亡保険と医療保険には長年保険料を納めてきたが、介護保険や重大疾病の保険には未加入の50歳代サラリーマンでも、「いままで持っていなかった保障を、新規で検討する場合」はここでいう「新規」だ。
断言するが「新規で加入検討する保障があるなら、急いで検討すべき」だ。筆者は「検討すべき」といっているので、「加入すべき」とは言っていない。その商品と必要性を天秤にかけ、検討した結果契約をしようと思うなら、急いで3月中に契約するべきである。
前項でもお伝えしたが、「同じ商品で同じ年齢でも、保険料が上がる」ケースが多いので、同じ環境下であるなら、たった一日違いでも保険料が上がってしまうような事態は、できることなら避けるべきだ。
乗り換えで検討なら、なぜ乗り換えるのか明確に
反対に今回のテーマ「乗り換えは3月中にするべきか」についてだが、乗り換えのタイミングは予定利率の変更理由に、直結するとは考えにくい。
そもそも乗り換えは、現在の保障内容と必要性に差異が発生しないと、する意味が無い。
その「差異」とは例えば、
・ 保険期間が10年単位で更新し、将来大きく保険料が上がる性質を持つタイプに加入している
・ 子供が生まれたので、保障額を上げたい
・ 保障の種類を変えたい(例)死亡保険→介護保険
・ 保険の種類を変えたい(例)掛け捨て→積み立て
このような場合は「予定利率が変わるから」乗り換えの必要性が発生したのではなく、もともと必要性があって、「たまたま予定利率の改定が重なった」だけなので、
新規検討とおなじく「急いで検討すべき」である。検討して契約意思があり、申し込みが可能な体況(たいきょう)であれば、手続きを進めて料率改定前に契約を成立させるべきだろう。
逆に言えば、現在の保障に問題のない方は「変える理由がない」のだから題名とおり「無理して変える必要が無い」となる。
何が「損・得」で、その定義はどういった場合に当てはまるのか、冷静に考えてみればわかるものが、人は「急がされる」状況になると判断を誤ってしまいがちだ。
自分はなぜその保険に加入しているのか、もしくはなぜ加入していないのか、考えるきっかけとなるならば、この料率改定が唯一メリットとして生かされる事になるだろう。
佐々木 愛子 ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員Ⅱ種
国内外の保険会社で8年以上営業を経験、リーマンショック後の超低金利時代、リテール営業を中心に500世帯以上と契約を結ぶ。証券IFAを経て、FPとして10代のうちから金融、経済について学ぶ大切さを訴え活動中。FP Cafe'登録FP
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