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(写真=PIXTA )

東芝テックの株売却という記事が出た。中核事業ではないということから、売却の方向になったという報道内容だが、東芝はすぐに否定。POSレジなどの事業は注力事業だという。世界のトップ企業が親企業の大失態の中で翻弄されている。

東芝テックのPOSは世界シェアナンバーワン

原子力事業の7000億円という大幅損失で大揺れの東芝 <6502> だが、半導体事業の株式売却時期を2017年度以降に先送りにした影響もあって、グループ会社の株式売却に動いているようだ。上場会社の株式は買い手がつきやすく、短期間で利益が出せることから、2017年1月には東芝テック <6588> を含むグループ7社の株式を売却すると報道された。

それから2カ月後、3月13日に日経が「東芝、テック売却へ POSレジ最大手」と報道、直ちに東芝が「株式の売却を検討している事実はない」と否定するなど、東芝をめぐる再建への流れが不透明になっている。それでも「やはり東芝テックの売却はあるのでは」という思惑が先行し、報道当日の株価は上昇した。こういった否定報道があると、株価は落ち着くものだが、最後まで上昇傾向なのはやはり売却への期待感のほうが強いのだろう。

東芝テックはPOSレジ国内シェア52%、世界の25%(2013年度/東芝テック2014~2016年度中期経営計画より)を占める世界的なトップ企業だ。

国内ではPOSレジの導入はほぼ一段落したように思われるが、最近はスパーやコンビニのレジが新しい方向へと向かってきた。スーパーでいえばセルフレジであり、レジ打ち込みと精算を分化させたセミセルフレジだ。このところセミセルフレジを導入し始めているスーパーが目立つ。どんどん進化するPOSレジで、東芝テックの未来は明るいようにみえる。投資家は東芝の中で身動きがとれなくなるより、外に出たほうがいいと判断しているようだ。

中核事業ではないが注力事業

東芝テックは1919年創業の間宮堂が前身で、1926年に国内初の金銭登録機(レジスター)を発売している。1940年に東芝が買収、照明器具や和文タイプライターを「マツダ」ブランドで製造販売していた。1957年には再びレジスターの生産を開始し、POSレジでは国内シェア52%にもなる国内トップメーカーとなった。1999年には照明事業を東芝ライテックへ譲渡し、社名を東京テックに変更した。

「社会インフラや原子力以外のエネルギー、情報通信技術を中心に再建を進める」東芝が、レジスターやオフィス複合機、ラベルプリンタ、インクジェットヘッドなどを商品カテゴリーとする東芝テックを売却する、というのは当然考えられる状況だだった。

ただ「リテール&プリンティング事業は注力事業領域」と明言し、売却を直ちに否定した。しかし資金不足が解決されたわけでなく、2017年3月末までに大きな決断が迫られていることには変わりない。

東芝損失の大もととなったアメリカ、ウエスチングハウス(WH)の再建に関して、「東芝のメモリー事業、完全売却に現実味。一体いくらになるの?」(3月13日日刊行工業新聞)という報道も出た。4月1日に創業するメモリー新会社、東芝メモリーの市場価値は2兆円は下らないという市場関係者もいるほどで、少なく見積もっても1兆5000億円とのこと。これが実現すれば、東芝の状況が大幅に変わる可能性がみえてくる。

今回名前のあがった東芝テックは、2015年にも売却話が持ち上がり、結局は何なかったという過去がある。今、東芝テックを売却すると1000億円の売却益が出るといわれている。(ZUU online 編集部)