全国の自治体がこぞって返礼品に工夫を凝らし、数千円で特産品がもらえることで人気が高まっている「ふるさと納税」について、東京23区で構成する特別区長会(会長・西川太一郎荒川区長)が、特別区民税が大幅に減収している現状を踏まえ、高市総務相に制度の問題点を是正することを求める要望書を提出した。総務省が今後どのように対処するか注目される。

ふるさと納税の「当初目的」を逸脱している

ふるさと納税は2006年、西川一誠・福井県知事が導入した「故郷寄付金控除」制度が始まりだ。多くの地方自治体が高齢化による人口減少に直面、税収の減少や慢性的な財政赤字に苦しんでいたことが背景にある。08年には3万3149人が申し込み、約72億6000万円が寄附された。その後寄付に対する返礼品(特産物など)が年々豪華になり、寄付金も年ごとにうなぎ登り。2015年度は全国で726万件、寄付金総額1653億円規模にまでふくれあがった。

納税者には2000円を超える寄付金に対して、通常の所得税や住民税の寄付金控除のほか、住民税所得割額の10%を上限とする住民税の基本控除が実施されている。ふるさと納税額の上限は、全所得額の30%と規定されている。このことから年収1000万円を超えるような高額所得者は、大きな控除を受ける結果となり、中低所得者との格差が問題になってきた。

特別区民税の減収増などに危機感

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(写真=PIXTA)

特別区長会が申し入れた背景には、ふるさと納税で人口が一極集中する東京都の収入が激減していることにある。2016年度の東京都の特別区民税をみると、減収額が前年度の5.4倍、129億円に及んでいる。これは100人規模の区立保育所の年間運営費に相当する。待機児童対策に取り組む特別区には大きな痛手となる。

2017年度にはさらなる減収になる見込みから、特別区長会は「過剰な返礼品の見返りを受けた都民だけが、実質税負担減の恩恵を受けている」「『返礼品競争』を是正するため、返礼品に制限を設ける」ことなどを求めたほか、「寄付金額が個人住民税所得割額の20%を超える場合、税控除の限度額を20%から10%に戻すべき」などと訴えている。

東京新聞の調べでは、23区のうち昨年11月時点で中野、世田谷に加え、文京、足立など計10区が返礼品を用意しているという。(ZUU online 編集部)