少子化対策に進展が見られない中、育児支援に積極的な企業が増加しています。少子化が社会問題化し、働き方の変革に注目が集まるようになりました。仕事と育児の両立に前向きな姿勢を見せることは、企業の利益にもつながります。少子化の現状と、育児支援に定評がある企業の取り組みについてまとめました。

日本の少子化の現状

日本の出生率は1975年以降減少を続けています。内閣府の「平成28年版少子化社会対策白書」によると、最新の合計特殊出生率は「1.42」です。合計特殊出生率とは「1人の女性が一生に産む子どもの平均数」を指すもので、2で人口は横ばい、2を切ると人口は減少します。

少子化対策担当大臣が創設され、さまざまな施策が行われてきたにもかかわらず、少子化の流れはおさまる気配がありません。少子化の原因は複合的なものですが、大きな要因として「産後の復職の難しさ」と「男性の育児参加不足」が挙げられます。

少子化社会対策白書には、出産後に就業を継続した女性は約4割とあります。半数以上が妊娠・出産を機に退職する計算です。たとえ復職できたとしても、育児との両立が難しければ、結局は辞めざるを得なくなります。

両立の難しさの原因としては、父親である男性の育児参加の不足が考えられます。内閣府の調査では、6歳未満の子どもを持つ夫の家事・育児関連時間は1日当たり67分で、先進国では他国に大きく差をつけて最低水準です。しかしこれは、日本企業の長時間労働にも原因があるといえるでしょう。内閣府の調べによると、30〜40代の男性の多くが週60時間以上、つまり週休2日で1日12時間労働をしています。

夫の支援が得られないとなると、女性が1人で家事育児を行う必要があります。保育施設に入所できるか頼れる親や知人がいない限り、仕事を続けることは難しいでしょう。支援がない中での育児の過酷さは、「ワンオペ育児」という言葉の流行からもうかがえます。

企業としてどのような育児参加支援ができるか

少子化問題を解決するには、男性の育児参加が重要となります。企業として男性の育児参加を支援する方法には、どのようなものがあるでしょうか。

代表的な対策として、男性の育児休業取得促進があります。育児・介護休業法では、子が1歳になるまでの間、男女問わず休業を申し出ることができます。しかし厚生労働省の『平成27年度雇用均等基本調査』の結果概要によると、現実には配偶者が出産した男性のうち、育児休業を申し出たのは2.65%に過ぎません(2013年10月1日〜2014年9月30日までに配偶者が出産した男性のうち、2014年10月1日までに育児休業を開始した男性)。制度としては存在していても、十分に活用されていないのが現状です。

その背景には、職場には男性が育児休業を取りにくい雰囲気があると言われています。このような状況を改め、育児休業をはじめとする男性の育児参加を支援することが今後企業にも求められます。

イクメン推進企業の特徴

厚生労働省では毎年、「イクメン企業アワード」を発表しています。仕事と育児を両立できる労働環境が評価された企業に贈られるものです。2016年グランプリは株式会社丸井グループとリコーリース株式会社の2社、特別奨励賞として大成建設株式会社と大和証券株式会社の2社が受賞しました。

受賞した企業の取り組みの特徴を調べてみると、以下の3つの共通点があります。

1. 数値目標を設定し評価対象とする
丸井グループでは、男性の育児休職取得率をKPI(重要業績評価指標)として内外に公表しています。具体的な数値目標を設定し勤務評価に影響するとなれば、育児休業を許可する側も申請する側も積極的になります。

2. 経済的支援を行う
育児休業中は基本的に無給となるため、収入がなくなることを危惧して育児休業をためらう人が少なくありません。そこで大和証券をはじめとするいくつかの企業は育児休業中の一定期間を有給化しました。また、時短勤務やフレックス勤務、地域限定勤務など、休まなくても育児参加ができる仕組みも経済的な育児支援と言えます。

3. 「雰囲気を変える」取り組み
「育児休業が取りにくい雰囲気」への対策が必要となります。受賞企業ではいずれも経営者からのトップメッセージ、幹部会議、上司による声かけ、セミナー・座談会などを通じて、男性の育児休業は推進されるべきことである旨を発信しています。

企業による育児参加支援は、社員の知見の広がりやモチベーションの向上、さらには社会的貢献につながります。福利厚生としての視点だけでなく、経営戦略としても大切であるといえるでしょう。男性社員の育児参加率が低いと感じている企業は、まずは育児休業取得率の向上から手を付けてみてはいかがでしょうか。(提供: フクリ!

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