高齢化が進む今、死亡時の相続では次世代の資産移転に支障があるため、生前贈与を円滑にしようと色々な法改正が行われています。2003年に導入された「相続時精算課税制度」も生前贈与を促進するための法改正の1つです。この制度を利用する場合、65歳以上の直系尊属より20歳以上の直系卑属(推定相続人を含む)への贈与に関して1人当たり2500万円まで贈与税が非課税になります。
しかし、相続時精算課税制度はあまり利用されていないと言われています。この制度が利用されない理由として、生前贈与自体が一般的でなかった点や、生前贈与を知っていても相続時精算課税制度に関してはあまり知られていなかった点が挙げられます。
さらに一番の理由は「贈与税としての節税効果がない」ことがあります。また「一度選択すると二度と通常の贈与税に戻れない」など制度自体にデメリットが多く、制度自体が複雑で、相続時精算課税制度が敬遠される要因になっているのでしょう。
非課税枠の高い相続時精算課税制度
相続時精算課税制度があまり利用されない理由の一つは「通常の贈与税より必ずしも得するとは限らない点」です。果たして相続時精算課税制度は本当に不利になるのでしょうか?
相続時精算課税制度のメリットは非課税枠が高い点です。
通常、110万円を超える贈与に対しては贈与税が生じ、その贈与額に応じて最大55%の累進税率が課されます。このため一度に大型の贈与を受ける場合は高額な贈与税が生じます。ところが相続時精算課税制度を利用すると、贈与のうち2500万円以内の部分に対しては贈与税が課せられず、それを超える部分に関しても税率は一律20%と低く設定されています。
2500万円は一生の総額であって、累積額が2500万円以内であれば非課税となります。超えた部分に関しては一時的に一律20%の贈与税が発生するものの、相続税算出時に相続税の方が有利になる場合、差額が戻ってきます。
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