シーメンス、GEとの差は大きい

エネルギー・環境事業における主な競合メーカーは、今回のM&Aで利害関係が絡む4社(GE、シーメンス、三菱重工、アルストム)となり、GE、シーメンス、アルストムとの三菱重工の差は大きいです。図2はこの4社のエネルギー事業の売上高(2013年、三菱重工は2014年3月期)を一覧表にしたものですが、三菱重工が4社の中で一番売上高が小さくなっています。特にGE,シーメンスは三菱重工の3倍近い売上高を誇っており、単独でこれらの会社に勝とうというのは難しい情勢になっています。また、三菱重工は大型ガスタービンの海外での受注を増やす戦略を取っており、2013年度では前年度比+10台の18台(アジア9台、北米4台、国内2台、アジア3台)の受注を獲得しました。今後海外での大型ガスタービンの受注拡大を目指したいと考えていますが、その際もこれらの競合が立ちはだかることになります。世界規模で考えた場合、三菱重工の取り巻く競合環境は厳しいと言えるでしょう。

図2 GE、シーメンス、アムストルと三菱重工のエネルギー事業の比較

会社

売上高

GE

約3兆2,300億円(約323億ドル:2013年)

シーメンス

約4兆0,300億円(約290億ユーロ:2013年)

アルストム

約1兆9,900億円(約140億ユーロ:2013年)

三菱重工

約1兆2,540億円(2014年3月期)

出所:各社IR資料より筆者作成


GE、シーメンスとの競争で強みを見せられる分野

では、三菱重工はGE、シーメンスとの競争において、発電事業のどの分野で強みを見せられるのでしょうか?それは、「ガスタービンコンバインドサイクル発電システム(GTCC)」です。GTCCはガスタービンと蒸気タービンを併設することで、熱効率が高いというメリットがあります。三菱重工はこの分野ではGE、シーメンスと比べてそれほどシェアは離れておらず、NEDO調べによると2012年1月~9月実績でシーメンス38%、GE32%に次ぐ26%のシェアを誇っています。今回のアムストル買収でもガスタービン事業はシーメンスが取得する計画でしたが、蒸気タービン等のガスタービン以外の火力発電設備は三菱重工が取得する予定でしたので、GTCCとのシナジー効果やアムストルが強い欧州やアフリカ、中東への足がかりが狙いであったと考えられます。


「三菱・日立」vs「東芝・GE」の競争激化へ

今回の動きを受けて、「三菱・シーメンス連合」vs「GE・アムストル連合」による競争が激化することが考えられます。三菱とシーメンスはGE・アムストル陣営に対抗するために、提携の強化に動くことが考えられます。一方、GEはタービン事業では合弁会社を東芝と設立しています。また、三菱は日立と合弁で三菱・日立パワーシステムズという合弁会社を設立しています。今後は日本でも「三菱・日立」vs「東芝・GE」の競争が激化するものと思われ、三菱重工は提携、買収戦略の練り直しを迫られるでしょう。

【関連記事】
連続最高益でも株価軟調!日立に求められる次への戦略とは?
新会社誕生!昨今の電力業界において、事業統合が両会社の株価に与える影響を占う!