利益確定の重要性を説く相場の格言に「利食い千人力」があります。含み益がいくら膨らんでも確定させなければ1円の利益にもならず、次の瞬間には含み損に転落することもありえるからです。
一方で「損小利大」という格言もあります。損は小さく抑え、利益が出たときにはなるべく膨らまそうという意味です。損切りと利益確定の幅を同じにしてしまうと、トータルでの利益がほとんど出なくなってしまうからです。
(本記事は、羊飼い氏の著書『超ど素人が極めるFX』(翔泳社)の中から一部を抜粋・編集しています)
利益確定のタイミングに正解はない
この2つの格言は矛盾しているようにみえますが、どちらも真実です。レバレッジがかかるFXではポジションをあまり引っ張りすぎるとそれだけ相場変動のリスクにさらされるので、早めに決済して利益を確保するのはとても重要です。
その一方で、あまり急いで利益確定すると、その後伸びるはずだった儲けを逃してしまったり、損切りした分のマイナスを埋めて終わるだけになってしまうこともあります。
じゃあどうすればいいか、利益はどこで確定すべきか、という問いに正解はありません。投資本などには5%とか10%の利益を目安に、などと書かれることも多いようです。
仮に10%で利益確定と決めても、現実には20%上昇するかもしれないし、3%で下落に転じるかもしれません。どれぐらい利益が狙えるかはそのときの相場次第で、局面ごとに判断するにはある程度経験も必要です。慣れないうちは、損切り幅よりも大きく取ったうえで教科書的に利益の幅を決めてしまうのもいいでしょう。
あるいは、相場の上昇や下落を追いかけて決算注文のレートが自動で変動する「トレール注文」を活用して利益を伸ばすのもおすすめです。ロングした場合なら、相場が上昇して高値を更新するとそれを追跡して決算レートも上に動き、下落に転じた時にあらかじめ指定したトレール幅を高値から下回った時に決済されます。
1回の取引の損失は「最大でも資金の10%以内」に
その取引コストの安さなどから外貨預金的にFXを使うのであれば放置もOK。しかしFXは基本的に為替相場の変動で利益を狙うもの。利益の額や利益の幅に捕らわれずに、流れの変化を重要視しよう。
前の項目で解説した通り、利益は早めに確定しても、なるべく伸ばすのも、どちらもアリです。しかし損切りはそうはいきません。FXではたった一度の失敗が、致命傷になりかねないからです。
1回の取引での損失は最大でも資金の10%以内に収まるように設定しましょう。最も重要なのは「いくらまでの損失なら耐えられるか」という自分の許容額なので、損切り幅はいくら小さくしてもかまいません。エントリーと同じ水準で損きりするのもいいでしょう。損切りばかりになることもありますが、実際の損はわずかで済みます。
損を取り返そうと感情的にならないこと
相場は一本調子で動くのではなく、変動しながら動きます。上昇トレンドでも小刻みに上がったり下がったり、ギザギザを描きながら上昇していくもの。小さな損失幅で損切りしていると、上昇途中のわずかな下落にひっかかって取れるはずの利益を取れなくなることもあります。
結果的に「もう少し待てば利益が出た、損切りしなければよかった」と悔やむこともあるでしょう。でもこの場合は小さな損で済んでいるので。次の取引で挽回できます。
これに対し、「損切りしておけばよかった」と悔やんだ時には、すでに取り返しのつかない額の損失が出ています。同じ後悔をするならどちらを選ぶべきかは明白です。
自らの失敗を認めて損切りするのは言うほど簡単ではありませんが、逆指値注文などを利用して事前に決めたシナリオを淡々と実行しましょう。損を取り返そうと感情的になってしまってはいけません。
羊飼い(ひつじかい) FXトレーダー&ブロガー
「羊飼いのFXブログ(
http://kissfx.com/
)」の管理人。2001年からFXを開始。ブログで毎日注目材料や戦略を執筆配信中。トレードはスキャルがメインで超短期の相場観には自信あり。