OECD(経済協力開発機構)は4月13日、日本に対する「経済審査報告書」を公表した。その中では特に、長時間労働に対する是正が強く求められていた。日本は果たして変革できるのか、労働環境の改善についての提言を中心に見ていきたい。
OECDの指摘事項 日本の4つの課題
「経済審査報告書」は、OECDが加盟国の現状について分析した結果をまとめたものだ。同報告書では、日本の経済成長率は高まったが、依然として多くの課題があると指摘している。
経済成長が高まった理由としては、雇用創出が挙げられている。一方、課題としては、①人口減少、②賃金格差の拡大、③生産性の低迷、④政府債務残高比率が高いことなどが挙げられている。
(1)人口減少
高齢化の進展で、日本の人口は2010年から2050年の間に 25%近く減少し、1億人を切ると予想されている。同時に、高齢者(65 歳以上)の比率は、2015年の約26%から、約40%に高まり、OECD諸国中最も高い水準となる見通しだ。有効求人倍率は1を超え、人手不足は深刻化していると指摘している。
(2)賃金格差の拡大
非正規雇用の増大によって賃金格差が拡大していると指摘している。非正規雇用者の割合は1994年では雇用者全体の20.3%だったものが、2016年には37.5%にまで上昇している。さらに、非正規雇用者は、雇用が不安定なため技能を修得しにくく、生産性を高められない原因になっていると分析している。
(3)生産性の低迷
日本は、パフォーマンスの悪い企業が市場にいつまでも居残り、生産性の悪い活動をしているため、生産性が低いと指摘している。また、起業家精神が弱く、免許制度・許可制度が複雑であるため起業の障害になっていることも生産性の低迷につながっていると分析している。
(4)政府債務残高比率が高い
2014年の消費税増税と歳出抑制によって2014年から2015年の基礎的財政赤字は縮小したものの、政府債務残高は、GDP(国内総生産)の216%(2015年)となっており、OECD加盟国の中で最悪になっている。現在の国債利回りは低いため問題は生じていないが、金利が上昇した場合には日本の財政についてリスクが顕在化すると指摘している。