ベストセラー『最強の働き方』の著者に聞く

世界のエリート,重要な習慣
(写真=The 21 online)

世界的なコンサルティング・ファームや外資系資産運用会社で働いてきた経験を持つムーギー・キム氏は、世界の一流ビジネスマンが大切にしている習慣を間近に見てきた。彼らが最も重視しているのは、実は、「当たり前のことを徹底的にやる」ということだと話す。本日発売の 『THE21』5月号 から一部を紹介しよう。

「約束には遅れるが仕事はできる人」などいない

ベストセラーになっている拙著『最強の働き方』は、これまで私が接してきた世界中の一流ビジネスマンたちが共通して実践している働き方や生き方を紹介したものです。言い換えれば、彼らが大切にしている働き方や生き方に関する習慣を1冊にまとめた本とも言えるでしょう。

この本の中では、「できる人ほどメールは即リプライ」「机やカバンの中の整理整頓を徹底する」など、「それって、別にグローバルエリートに限った話ではないんじゃないの?」という習慣をたくさん取りあげています。そうなんです。グローバルエリートは何か特別な習慣を持っているわけではありません。取り組んでいること自体は極めて普通のこと。しかし、その凡事を徹底しているからこそ、彼らは世界で活躍できているのです。逆に言えば、多くの人は凡事を軽視しているために、その潜在力を発揮できていないということです。

たとえば、「会議や待ちあわせの時間に遅れないこと」は、ビジネスマンなら誰でも必ず習慣化しなくてはいけないことの1つ。ところが、これを守れず、いつも時間に遅れてくる人がいますよね。こういう人はスケジュール管理ができていませんから、他のさまざまな締切りにも遅れがちです。また、相手の時間を大切にするという意識が低いため、約束もよく破ります。つまり、一事が万事。「待ち合わせ時間を守る」という凡事を習慣化できていない人は、仕事全般において人から信頼されず、「仕事のできない人」になりがちなのです。「あの人は約束の時間にはいつも遅れるけど、仕事は素晴らしくできるよね」という人を、私は寡聞にして知りません。

一方、「時間を守る」という凡事を徹底するには、スケジュール管理が必要ですから、仕事全般に関するタイムマネジメント力が上がります。また、時間を大切にするようになれば、仕事の優先順位をつけるようになるので、仕事の生産性も高まります。

「メールが届いたらすぐに返信すること」を習慣化している人は、他の仕事も先延ばしせず、すぐに取り組む人です。「メモを取るとき、内容をピラミッド構造に整理して、わかりやすく書くこと」を習慣化できている人は、他人とコミュニケーションを取るとき、話を構造化してわかりやすく伝えることができます。このように、1つの凡事を徹底することが、仕事全般の能力を大きく高めることにつながるのです。

腹落ちできていないから三日坊主で終わる

凡事を徹底して習慣化できている人と、そうでない人との違いは、その凡事の重要性をどこまで腹落ちさせて理解しているか、です。三日坊主で終わってしまうのは、その習慣を守ることの大切さが「知識レベル」で留まっているからです。

ですから、もし何かを習慣化するのであれば、心の底から「確かにこれは大切だ」と腹落ちできているものを選ぶべきです。雑誌の記事を読んで、「あの有名人がやっているのなら、自分もやってみようか」といった程度の意識では、決して長続きしません。また、健康法と同じで、習慣にも自分に合うものと合わないものがありますから、自分に合った「働き方の習慣」を選ぶことも大事です。このあとで、世界中のビジネスマンの多くが大切にしている習慣をいくつか紹介していますので、その中から本気で腹落ちできるものを選び、ぜひ実践してみてください。

ムーギー・キムが選んだ「世界のエリートの最強の習慣」6

1 朝の2時間で仕事の8割を終わらせる

これまで私が勤めてきた職場では、早く出世した人は皆、例外なく早起きでした。単に早起きであるだけでなく、より重要度の高い仕事を、起きてからの2時間の間に猛烈な勢いですませていました。

これは生理学的にも理に適ったことです。人は、睡眠を取っている間、自律神経をはじめとしたさまざまな機能を休めています。ですから目覚めた直後は、身体も心もフルチャージされた状態であり、集中力も創造性も最も高い時間帯に当たるのです。

このゴールデンタイムを、朝のテレビで今日の運勢を観ていたり、Facebookで「いいね!」の数を数えたりすることに費やすのはあまりにもったいない。また、出勤直後に、たいして頭を使わない長時間の"雑用"をするのももったいない。

朝起きた直後の2時間で、その日の仕事の8割を終わらせるくらいの気持ちで、仕事に取り組むことをお勧めします。そして、出社後も、午前中は、重要で、かつ頭を使う仕事をしましょう。

疲れた頭で残業する夜の2時間よりも、朝の2時間のほうがずっと生産的です。昔の人も言っていたように、まさに「早起きは三文の得」なのです。

2 タイムアロケーション(時間配分)を常に考える

「ムーギー、プロフェッショナルとして一番大切なのは、仕事のタイムアロケーション(時間配分)がしっかりできることなんだぞ」

これは、私がまだ若くて未熟だった頃、ボスから怒られたことの1つです。与えられた時間は誰しも平等。その平等で有限の時間を重要なことに割り振ることができているかどうかが、仕事の生産性に大きな差をつけます。

仕事には(1)やらなくてはいけない仕事、(2)やったほうがいい仕事、(3)やらなくてもいい仕事があります。このうち(3)は当然として、(2)もできる限りやらないようにする。そのぶん、(1)に時間を投入するのです。これをするためには、「自分が本当になすべきことは何か」を常に考え、判断する習慣をつける必要があります。

タイムアロケーションができる人は、仕事だけでなく、人生の持ち時間も有効に使えます。

※3~6は 本誌 に掲載しています。ご参照ください。

ムーギー・キム(ムーギー・キム)『最強の働き方』『一流の育て方』著者
1977年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA(経営学修士)取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、大手グローバル・コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より世界最大級の外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当したのち、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。著書3冊はすべてベストセラーとなり、『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』『最強の働き方』(ともに東洋経済新報社)、『一流の育て方』(母親であるミセス・パンプキンとの共著、ダイヤモンド社)は合計50万部を突破、6カ国で展開されている。(取材・構成:長谷川敦)(『 The 21 online 』2017年5月号より)

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