高齢化社会に伴って、認知症を患う人も多くなり、様々な社会問題を引き起こしている。相続問題も例外でない。先日、相談に来たAさんは、亡くなった母親が認知症を患っていたため、思わぬトラブルに巻き込まれた一人である。

認知症の母が書いた遺言書

相続,認知症
(写真=wavebreakmedia/Shutterstock.com)

Aさんの母親が亡くなったのは2カ月前のこと。父親は既に3年前に亡くなっていて、法定相続人は、Aさんと兄のBさんの2人だけである。母親の「四十九日法要」が住んで、兄弟で遺産相続の話し合いをしようとした矢先、母親が書いた「遺言書」が見つかったのである。

母親が残した遺言書は「公正証書遺言」ではなく、直筆で書いた「自筆証書遺言」だった。そのため、AさんもBさんも、母親が遺言書を書いたことを知らず、亡くなって始めて知ったのであった。

通常、被相続人(亡くなった人)が遺言書を残していれば、故人の最後の遺志を尊重して、極力「遺言書」どおりに遺産を分けることが基本である。

しかし、Aさん、Bさんの場合、一つ大きな問題があった。それは、母親は亡くなる頃にはかなり「認知症」の症状が進んでいたのである。Aさん、Bさんの2人は、認知症を患っていた母親が書いた「遺言書」をどう扱っていいのかわからず、Aさんが当職の所に相談に来たのである。

Aさんの具体的な相談内容は、「母親の遺志を尊重して遺言書のまま遺産を分割したいのですが、ただ兄が遺言書の内容に納得せず、遺言書は無効ではないかと言うのです」というものであった。遺言書内容は、ややAさんに有利な内容であったためか、Bさんからは、「遺言書を書いた時に、すでに認知症だったのではないか。もしそうであれば、遺言書は無効になるのではないか」という疑問の声が上がっている。

自筆証書遺言だから、当然書いた日付が書いてあるが、その時点で母親が認知症だったかどうかは、今となっては確かめようがない。

このような場合、どのように考えたらいいのだろうか。

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