マツダの新型CX-5の受注が好調だ。CX-5は、2016年の12月に発表されたが、当初の月間販売計画台数は2400台を予測していた。だが2月2日の発売開始後、約1カ月経過した3月5日時点で、累計受注台数は1万6639台となり、7倍近い成績を納めている。
デザインと安全装備
マツダといえば、魂動デザイン。もちろんこのCX-5も魂動デザインは健在だ。今回のCX-5の人気は、誰もがひと目でマツダ車と認識できるルックスが定着した証拠でもあろう。さらに、魂動デザインの造形美を強調するために、塗装色にも工夫を凝らした。
生命力にあふれたエネルギッシュなソウルレッドプレミアムメタリックをさらに進化させた新しい赤の特別塗装色、ソウルレッドクリスタルメタリックを採用したほか、ロードスターRFで人気の高かったマシーングレープレミアムメタリックも含めて全8色を設定し、マツダらしい個性を持ったカラーから選べるようにした。
他にもユーザーが注目したのは、先進安全技術「i-ACTIVSENSE(アイアクティブセンス)」だ。これを搭載したグレードが、なんと全体の95%を占めているという。最上級グレードのL Packageが49%、先進ライトであるアダプティブ・LED・ヘッドライト(ALH)アクティブ・ドライビング・ディスプレイなどの装備を充実させた「PROACTIVE」が46%だ。
これはスバルのアイサイトが火を着け、ユーザーでも次に購入するなら安全装備が充実しているものにしようと考えていることの裏付けに感じる。マツダの場合は、人間中心の安全思想「MAZDA PROACTIVE SAFETY(マツダ・プロアクティブ・セーフティ)」に基づき開発された、アクティブ/パッシブセーフティの装備となっている。
幅広い用途と年齢層
CX-5のユーザー層は、30代、40代を中心に20代から60代以上までと幅広い。また、クロスオーバーSUVというだけあって、普段の買い物や通勤など町中はもちろんのこと、高速道路を使ったロングツーリングやアウトドアまでシーンを選ばず使えるところも魅力だったようだ。
ユーザーからは、「滑らかでとても走りやすく、もっといろいろな道を走りたいと思わせる」「静粛性が秀逸」「デザインが魅力的で品質の高さも感じられる」などの声がマツダに届いているということで、購入者の満足度は高そうだ。期待以上のクルマだった場合はとくに口コミで評判が高まっていき、受注数が増えていく結果になったのではないだろうか。
下取車のタイプはSUV(46%)に次いでミニバン(20%)が多いということで、SUVからSUVに乗り換える人がこんなにいるのかと驚いた。また下取車のうち初代CX-5の下取が39%となっているという。まるで、昔のスポーツカーのようなこだわりぶりだ。
SUVの販売好調が後押し
クロスオーバーSUVのマツダCX-5だが、世界的なSUVの好調がそれを後押ししたといえるのではないだろうか。
日本国内に目を向けると、RV(レクリエーショナル・ビークル)の販売は年間150万台前後と堅調だ。中でもSUVは過去4年間で、2016年こそ前年より少し減少したものの、他の年は100%超えを達成しており、2017年に入ってから、1月も2月も前年同期比15%増となっている。欧米をはじめとした海外でも、SUV人気は続き、プレミアムブランドからも次々とSUVが発売されている。
日本では、行動範囲が広がるオールマイティなSUVに乗っていると、クラスアップして見られるというイメージもあり、SUVに乗り換える人も増えてきているのではないだろうか。2012年に出た初代のCX-5の頃、SUVはいまほど広範囲の人々に人気はなかったが、評価が高く、カーオブザイヤーも受賞した。その後、SUVの人気が定着した良い時期にフルモデルチェンジしたというわけだ。
そんな人気ぶりのCX-5は、広島の本社工場で生産していたが、11月からは防府工場(山口県防府市)でも生産することを決定している。マツダは、グローバル販売台数165万台の達成を目標に掲げている。これは、中期経営計画「構造改革ステージ2」(2017年3月期−2019年3月期)で発表されており、具体的には、クロスオーバー系車種を需要に応じて柔軟に生産できる体制の構築に取り組んでいる。
2016年12月には、本社工場に加え、防府工場においても、コンパクトクロスオーバーSUVである、CX-3の生産を開始している。今回のCX-5の防府工場も、これに倣ったものだ。さらに、CX-5には、助手席シートが回転し昇降するリフトアップ機構が備えられた、助手席リフトアップシート車も追加投入され、さらにユーザーターゲットを拡大中だ。これは、高齢者などの福祉車両のほか、和服やスカートを履いた女性にも利用してもらえるように作られている。このような生産体制の強化とラインアップの拡充により、CX-5の人気は、今後もますます加速していくのではないだろうか。(高橋大介、モータージャーナリスト)