5月相場が終了しました。日経平均株価は4月末の19,196円74銭から2.4%上昇し、19,650円57銭が月末終値となりました。欧州の政治リスクや北朝鮮との緊張状態の高まり等、地政学的なリスクが後退する中、好調な企業業績を追い風に、5/11(木)には年初来高値(19,961円55銭)を付けました。しかし、月後半にかけては米国での「ロシアゲート」疑惑の台頭等もあり、伸び悩む展開になりました。
そして6月に入った東京株式市場ですが、6/2(金)に日経平均株価は2015/12/1以来の20,000円台を回復(終値ベース)してきました。米国株高や円安が追い風になったものとみられます。
日経平均株価の「20,000円」は通過点になりそうです。好調な企業業績に対する評価が不十分とみられるからです。過去2年間の日経平均株価の予想PERの平均は15倍で、現在の予想EPS1,400円にそれを掛けると21,000円と計算されます。予想PERは市場心理を反映すると考えられます。市場心理が「平均並み」に回復すれば、20,000円を超えて上昇する可能性は十分ありそうです。
そんな見通しの6月相場ですが、物色的にはどんな銘柄が中心となるでしょうか。今回の「日本株投資戦略」では、5月末にかけて上昇してきた銘柄の特徴を踏まえつつ、6月相場で物色対象になりそうな銘柄を検討してみました。
日経平均株価が20,000円台を回復!けん引役の特徴は?
日経平均株価は4/17(月)の取引時間中に付けた18,224円68銭を安値に上昇に転じました。また、テクニカル面では騰落レシオがその日に68.06%と目先の最低水準を付け、一時は164.60%まで上昇しました。そこで、4/17から5月末まで、どんな銘柄の上昇率が大きかったのかを示したのが表1になります。時価総額の小さい銘柄は、上昇理由として個別材料が大きくなりがちになると考え、時価総額1,000億円以上の銘柄について調べることにしました。
表1からもご理解いただけるように、決算発表シーズンを迎えた3月決算企業で、会社側が今期大幅増益見通しを発表した銘柄が中心になっています。現在でも会社予想が市場予想(Bloombergが集計した市場コンセンサス)を上回っている企業が多くなっています。
業種別には、表1にもある日本写真印刷 <7915> や任天堂 <7974> (同期間の上昇率は27.0%)の上昇を受け「その他製造」がトップで、第2位は東京エレクトロン <8035> 等の上昇を受けた「電気機器」になっています。第3位以下は「建設業」、「情報通信業」、「化学」と続いています。テーマ的には「ゲーム」や「半導体」が強かったということになります。
5月に上昇率の大きかった銘柄が6月も活躍する可能性は十分あります。「ゲーム」や「半導体」は息の長い相場テーマになるかもしれません。ただ、ここでは株価的に出遅れたとみられる銘柄の抽出を試みたいと思います。
6月相場突入!出遅れ修正期待銘柄はコレ!?
前項でご説明したように、今回の「日本株投資戦略」では、今後株価的に出遅れとみられる銘柄の抽出を試みたいと思います。5/31(水)現在のデータから、全東証上場銘柄を対象に、以下の条件でスクリーニングしてみました。
(1)時価総額300億円以上(銀行、保険、証券・商品先物、その他金融を除く)
(2)2社以上のアナリストが予想EPSを公表
(3)騰落レシオが目先のボトムを付けた4/17(月)から5/31(水)までの株価上昇率が日経平均株価(+7.1%)未満
(4)今期営業利益(市場予想)が増益予想
(5)今期営業利益について、市場予想が5%超会社予想を上回っていること
(6)予想EPS(市場予想)が過去4週間で上昇
(7)今期予想PER(市場予想)が20倍未満
(8)来期営業利益(市場予想)が10%超の増益見通し
上記の全条件を満たした銘柄を株価上昇率の低い順番に並べたものが表2となります。
決算発表では、今期業績予想について、会社予想が市場予想を上回ると「ポジティブ・サプライズ」となり、株価が上昇しやすくなります。表1に掲載した銘柄では、ブイ・テクノロジー <7717> が18/3期の予想営業利益について、市場予想で94億円の所、会社予想は100億円と発表され、市場の前向きな評価につながりました。
しかし、そうした局面は一巡したとみられます。むしろ、アナリストの今期予想営業利益が市場予想を上回っている銘柄の中に出遅れ銘柄があるかもしれません。市場予想EPSが足元で上昇中であれば、アナリストの業績予想が強気に変化中であることを示唆しています。そして、さらに来期にかけても業績の高い伸びが期待できる銘柄の方が、パフォーマンスが上がりやすいとみられます。加えて、株価やPERに条件を付けていますので、過熱感の強い銘柄や極端に割高な銘柄は含まれにくいと考えられます。
「出遅れ修正期待銘柄」の投資ポイントは?
ここでは、表2にご紹介した銘柄の一部について投資ポイントをご紹介したいと思います。
商船三井 <9104> は3/7(火)に389円の高値を付けた後、株価が下落基調となりました。海運株への影響が強いバルチック指数も3/29(水)より約36%下げ、それに拍車をかけることになりました18/3期の営業利益について会社側は90億円を見込んでいますが、市場では158億円程度を見込んでいます。7月からは日本郵船、川崎汽船とコンテナ船事業を統合した新会社を設立し、業界をあげての収益安定化が進められます。そうした中、当社は競争力の強い分野に投資を集中させる戦略を取る方針です。
東京都競馬 <9672> の株価は昨年12/16(金)に294円の高値を付けた後、軟調な推移となってきました。今期の予想営業利益は会社側予想で2.1%増と鈍いことも影響しているかもしれません。ただ、南関東4競馬場在宅投票システム「SPAT4」において、4月から全地方競馬・全レースの購入が可能となりました。これで購入可能レースが年間で約9,000レースから約13,000レースに増える計算となります。17/12期の予想営業利益は会社側の52億円に対し、市場では56億円程度を期待しています。
アサヒグループホールディングス <2502> は17/12期の第1四半期・営業利益が前年同期比5.7%増と順調なスタートでした。通期では会社予想1,460億円に対し、市場では1,647億円を予想しています。国内事業で数量拡大、商品構成の改善、販売促進費の削減等を背景に好調が続いている模様です。株価も堅調で昨年来の上昇率は2割強に達していますが、5/16(火)に4,585円の高値を付けた後は押し目を形成しています。今年は5月に晴れる日が多かったですが、同月に日照が多いと夏は暑いという分析もあるようで、サマーストックとしても期待できそうです。
共立メンテナンス <9616> は学生寮、社員寮の運営で大手企業ですが、ホテル事業にも展開しています。営業利益について17/3期118億円から22/3期に190億円とする「新中期経営計画」を策定し、5/15(月)に発表しました。今期はそれを実現するための投資の時期として営業利益は前期比3.3%増と緩やかな見通しですが、市場では13.5%の増益を見込んでいるようです。
マクロミル <3978> はネット調査の大手企業です。14年4月に東証上場を廃止していましたが、この3/22(水)から再び上場を再開しました。2014年に買収したオランダ企業の効果で海外収益が期待できるようになったこと、広告のデジタル化を背景に国内市場の成長も期待できることが追い風になっているとみられます。今期の営業利益は会社予想で68億円強となっていますが市場では72億円前後を期待しているようです。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
鈴木英之
SBI証券
投資調査部
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