老後,貯める,生活費
(写真=PIXTA)

目次

  1. はじめに
  2. 老後のために投資が欠かせないわけ
  3. 年収1000万円で安泰とは限らない
  4. 「分散投資」「長期投資」の手始めは
  5. お金の使い方も「習慣」

はじめに

高齢社会が進行する中で、これからは投資をしなければ、安定した老後を過ごすことはできないといわれる。しかし、「投資は怖いから」といって二の足を踏む人も多いだろう。確かに投資にはリスクがあり、リスクの回避には「分散投資」が欠かせない。

ただし、分散投資も、その意味を理解し、正しく行わなくては意味がない。分散投資の必要性と正しい考え方について紹介したい。

老後のために投資が欠かせないわけ

豊かな老後を送りたい。誰もがそう願ってファイナンシャルプランナーである筆者のもとへ相談に訪れる。それは年収500万円であろうが年収1000万円であろうが、年収2000万円であろうが、誰しも描く夢である。

それでは、どのくらいの水準を「豊かな老後」と呼ぶのであろうか。人により異なると思うが、生命保険文化センターの生活保障に関する調査(平成28年度)によると、「ゆとりある老後生活費」は月平均35万円という結果が出ている。また、ゆとりある生活ための資金用途は、1位「旅行やレジャー」、2位「身内との付き合い」、3位「趣味や教養」の順になっている。

一方、収入を見てみると、世帯別の年金収入は月平均28万円(厚生労働省年金局データより抜粋)となっており、平均的な収入の高齢者世帯がゆとりある生活を送るためには、1ヶ月平均で7万円を現役世代に作った貯蓄から取り崩していくことになる。90歳まで生きると、65歳からの25年間で、7万円×12ヶ月×25年間=2100万円が必要となる計算だ。

年収1000万円で安泰とは限らない

年収1000万円を目指すサラリーマンは多い。手取りで考えれば税金や社会保険料、厚生年金や雇用保険などが引かれるため、おおよそ750万円前後になる。

一方、年収500万円のサラリーマンの手取りは400万円ほどになることを考えると、年収ベースでは500万円の差があっても、手取りベースでは350万円程度の差となる。

そのうえ、収入1000万円の人は一般的に収入に比例して支出も多くなりがちである。「1000万」という数字に油断してしまうのか、住宅費、教育費、レジャー費等、出費が多くなりがちなのである。一見すると裕福な暮らしをしているように見えても、実際の家計は火の車という家庭も少なくない。実は年収500万円の人のほうがしっかり貯蓄をしていたりする。

金融広報中央委員会が行っている「家計の金融行動に関する世論調査」(2017年)()によると、「金融資産を保有していない」と答えた2人以上世帯は31.2%となっている。年収別に見ると、年収300万円以上500万円未満の29.5%、年収500万円以上750万円未満の24.3%、750万円以上1000万円未満の16.7%の世帯が金融資産を保有していないという。年収が高ければ金融資産も多いかというと、必ずしもそうとは言えない現実がある。 これではとても、豊かな老後など送れない。

豊かな老後は運用しないと難しい? 老後に備えて十分な資金を用意できていない人が、豊かな老後生活を送るには3つの方法がある。

  1. 収入を増やす
  2. 支出を減らす
  3. 運用をする

とは言え、1と2はなかなか難しい。はっきり言って、3の運用を考えなければ、豊かな老後を迎えることは難しい時代となっている。現在35歳の人が毎月3万円ずつ貯めていっても65歳までにたまる資金は1080万円。1080万円では老後資金は足りないことは先のデータでも明白である。

それでは、同じく月3万円を運用するとどうなるのであろうか。5%で運用することができれば、65歳時には約2500万円(複利・税引前)と、単に貯めたときに比べ倍以上に増える。

そうはいっても、運用にはリスクがつきものである。このリスクをコントロールして最小限にとどめるのに必要なのが「資産分散」「時間分散」という分散投資と「長期投資」という考え方である。

「分散投資」「長期投資」の手始めは