投資,辞め時,始める
(画像=PIXTA)

目次

  1. 「投資をやめるとき」とは
  2. 具体例から考える投資のやめどき
    1. 事例1:多種多様な投資信託商品を相続した60歳代女性の悩み
    2. 事例2:退職金を投資信託と定期預金のセットの運用プランで損失拡大させた初老の男性
  3. 投資をやめるタイミングは誰がいつ決める?
  4. これからは投資をやめる時期の教育も必要

「投資をやめるとき」とは

「人生100年時代」と言われる中、50歳はちょうど折り返し地点となる年齢だ。50歳は老後にむけた人生設計の見直時期であり、本格的な投資をするにはこれからが本番となる。

投資の観点で人生を見た場合、次のように、大きく4つのフェーズに分かれる。
・第1フェーズ(~25歳):  準備段階(投資の基礎や教育をうける) 
・第2フェーズ(26歳~50歳):  発展段階(社会人として投資の経験を増やす)
・第3フェーズ(51歳~75歳):  活用段階(相続や退職金の運用や子供などへの贈与)
・第4フェーズ(76歳~) :  始末段階(元気なときに投資をやめる準備) 

最近、平均寿命や平均余命よりも注目されるようになったのは、「健康寿命」だ。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義され、厚生労働省が3年に1度公表している。

2016年の推計によると男性の平均は72.14歳、女性の平均は74.79歳。現在年金の受給開始年齢は65歳なので、年金を受け取り始めてからたったの7年から9年程度で日常生活を送るのが不自由になる計算だ。

また生命保険文化センターの調査では、過去3年間に介護経験がある人にどのくらいの期間介護を行ったのかを聞いたところ、介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均59.1カ月(4年11カ月)となっている。介護が始まってから、おおよそ5年後に亡くなることを示している。

このように日常生活に支障をきたすようになる前が、投資をやめる潮時といえるだろう。しかし、人はいつ事故にあったり病気になったりするか、わからない。投資をやめる判断をする具体的な基準はあるのだろうか。

具体例から考える投資のやめどき

投資はいつやめればよいのか。ファイナンシャル・プランナーとして具体的な相談例を参考に考えてみよう。

事例1:多種多様な投資信託商品を相続した60歳代女性の悩み

相談内容
「投資経験豊富な父親が突然死去。相続財産には多種多様な投資信託の商品もあり、名義は変更したものの、証券会社の担当者からの訪問や運用報告書が郵送されている。投資商品内容もわからず今後どうしたらよいか相談したい」

相談者はこれまで家事や子育てが中心のため、投資経験もなく、数年前にご主人が亡くなり、一人暮らしの生活をしていた。投資信託の商品や運用実績を見たところ、一部の商品では損失もあったが、円安や株価上昇の影響でかなりの益が出ていた。

相談者は投資の勉強をする気はないとのことで、売却や子供に生前贈与することも検討しては、とのアドバイスを行った。

事例2:退職金を投資信託と定期預金のセットの運用プランで損失拡大させた初老の男性

相談内容
「退職金をとりあえず銀行の投資信託と定期預金のセットプランの商品を購入。当初預入期間である3カ月の間は定期預金の金利が上乗せされる。3カ月を過ぎると通常金利が適用されるので、定期預金を解約するつもりだった。しかし、銀行員の勧めでさらに定期預金の解約資金で投資信託を追加購入。さらに他金融機関の資金も複数の投資信託の商品を購入した。結果として損失は拡大、どうしたらよいか相談したい」

相談者は投資経験が少なく「分散投資」や「卵は一つのかごに盛るな」の言葉は知っていた。特定の商品だけに投資をするのではなく、複数の商品に投資を行い、リスクを分散させた方がよいという教えだが、複数の投資信託を購入することが「分散投資」だと勘違いしていた。

「通貨別」「時間別」「国別」「商品の種類」等でリスクを分散することに意味がある。また投資信託の商品には商品の特性と全く関係のない名前がつけられている場合が多い。

まずは商品の特性を把握し、同じような商品であれば、運用実績や純資産残高等をみて解約したらどうかとアドバイスした。また株主優待制度でお得な株式を購入し、奥様に優待券(例えばいつも利用しているお店のもの)をプレゼントしてみてはいかが、とアドバイスした。

投資をやめるタイミングは誰がいつ決める?