為替レートの決定要因の概要について

まず、為替レートの決定要因の概要について書きます。為替レートの直接的な一番の決定要因は簡単に言ってしまいますと「売り買いの量」つまりその外貨がどれだけ売られているか及びどれだけ買われているかという為替の需要によって決まります。これについては、株式の売買に置き換えて考えて頂ければ分かりやすいと思いますが、ある株式が買われている量が売られている量を上回っていれば、株価は上がることになります。それと同じ様に例えば米ドルが買われている量が売られている量を上回っていれば、米ドルの価値が上がりますし、逆に買われている量が売られている量を上回っていれば、米ドルの価値が下がります。 その他の為替レート決定要因で、主なものとしては、テクニカル要因、投機的要因、ファンダメンタル要因などがあります。

まず「テクニカル要因」についてですが、過去の為替レートの値動きを、価格や時間を軸としてグラフにしたもの(チャート)から、投資家が売り時、買い時を予想することにより、レートが変動することがあります。過去の為替データは世界中の投資家が見ていることから為替レートを決定する大きな要因の一つと言われています。

次に「投機的要因」ですが、ヘッジファンドや機関投資家などの投機筋は、大きな資金を投入して短期的な利ざやを稼ぐ取引を繰り返し行っていて、外国為替市場に占める取引の割合が大きいことから短期的な為替レートの変動に影響を与えると言われています。最後に、「ファンダメンタル要因」についてですが、主なものに「経済指標」や「金利」があります。「経済指標」については、国によっても異なり、様々なものが発表されていますが、アメリカのGDPや雇用統計など重要指標は特に為替レートに大きな影響を与えると言われています。一般的にこれらの経済指標から総合的に判断して、景気が上向きであると見られれば、為替レートは上がる傾向にあり、景気が減退していると見られれば、為替レートは下がる傾向にあります。 「金利」については、一般的には高金利の通貨は、景気が上昇していると見られ、価値(為替レート)が上がる傾向があり、低金利の通貨は、景気が減退していると見られ、価値(為替レート)が下がる傾向があります。ここまで主な為替レートの決定要因について説明しましたが、以下に書きます外国為替取引についても、これらの為替レートの決定要因を充分考慮した上で行う必要があります。

直物相場と先物相場について

一般的に外国為替取引には、通貨の受け渡し(資金決済)の時期によって、直物取引と先物取引があります。外国為替の取引の契約が成立してから、翌々営業日に外貨とその対価の受渡しをする外国為替取引のことを直物取引と言います。そしてこの直物取引に適用される為替レートのことを直物相場(スポット・レート)といいます。これに対して、外国為替の取引の契約が成立してから、3営業日以降に外貨とその対価の受渡しをする外国為替取引のことを先物取引と言います。同じくこの先物取引に適用される為替レートのことを先物相場(フォワード・レート)といい、契約が成立した時点でこの受け渡し時の為替相場(先物相場)も決まります。一般的には先物取引が単独で行われることは少なく、直物取引のリスクを緩和するような先物取引を組み合わせて取引されることが多いようです。このとき組み合わされる先物取引のことを「為替スワップ」といいます。

通貨デリヴァティブ取引について

次に通貨デリヴァティブ取引についてです。まず「デリヴァティブ」とは、外国為替や株式・債券売買など一般的な金融商品の相場変動によるリスクを回避するために開発された取引(金融商品)で、金融派生商品とも呼ばれています。先に少し書きました「為替スワップ」も、このデリヴァティブ(金融派生商品)の一つになります。それでは、通貨デリヴァティブ取引についてですが、主なものに「為替スワップ」や「通貨オプション」があります。

「為替スワップ」とは前述の通り、外国為替市場で、直物取引と先物取引の組合せの取引を同時に行う取引のことを言います。それに対して「通貨オプション」とは、特定の通貨を、将来の特定の期日または期間内に、契約した価格で売買する権利の売買のことを言います。この通貨オプションにより決められた価格で特定通貨の売買ができるため、前述の「為替スワップ」と同様に為替変動リスクの回避のために利用することが出来ます。この場合、買手は権利の代価であるオプション料(プレミアム)を支払えば、権利を行使することも、権利を放棄して行使しないこともできます。一方、売手は買手が権利を行使した場合、これを受ける義務があります。

為替レートと金利市場について

前にも書きました通り、一般的には高金利である場合は、景気が上昇している、また投資先としても魅力があると見なされるため、一般的には通貨の価値(為替レート)も上がる傾向にあります。従って、例えば日本円の金利が上昇すれば、為替レートは円高になることが予想されます。例えば、日本の景気が上向いて回復しているとすると、個人や企業の購買力が高まり、その結果お金を借りる個人や企業が増えて、金利が上昇することになります。 金利が高くなると円を持つこと魅力があるので、円が買われることになり、円高になります。

しかし、円高になると外国からの輸入品が安く買えることになりますから、国内の物価が下がり、それに連動して金利も下がることになります。金利が下がりますと、通貨の価値(為替レート)は下がりますので、今度は円安になり、外国からの輸入品が高くなり、国内の物価が上昇します。このように為替レートと金利市場は、常に一方向に進むのではなく、お互いに調整し合いながら、循環を繰り返すことになります。

為替レートが変動する要因を把握する

前述しました通り、為替レートが変動する要因には、前述しました、主な要因であるテクニカル要因、投機的要因、ファンダメンタル要因以外にもテロや戦争など時代・環境などによって変わる要因やアメリカのFRBの議長の発言、日本政府の要人の発言など政策要因など様々なものがあり、外国為替取引を行うにあたっては、これらの要因、つまりは為替の需要・供給を発生させる要因について把握して為替レートの動きについて自分なりの予測をする必要があります。特に発表されるタイミングが決まっている、経済指標や政策発言などはチェックすることが望ましいと思われます。また、為替レートのチャートの分析や各国の経済状況の分析も為替レートの変動を把握する上では有効な方法であると思われます。