ドル円予想レンジ108.80-112.50
「Fed raises rates for second time in 2017 (米連邦準備制度理事会は2017年、2回目の利上げを行う)」-。これは6/15の英経済紙一面だ。FRBは6/13-14の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利引き上げを決定し、継続的な経済成長や労働市場の堅調さを背景に年内にバランスシート縮小に着手する方針も明らかにした。
イエレン強気は不安の裏返しか
6月利上げはある意味、想定範囲内だ。しかし筆者も含めて市場が驚いたのは、イエレンFRB議長の強気な姿勢であろう。前号では個人消費支出・物価指数の伸び率鈍化を指摘したが、6/14に米労働省発表の5月消費者物価指数(CPI)も前月比で大幅に低下していた。6時間後に会見を控えていたイエレン議長もさぞかし驚いたのではないか。
2日目(6/14)のFOMC会合は、前日に議論を尽くした後であり、実務的な経済見通しや金利ドットチャート見通しを持ち寄って事務スタッフと最終的な詰めに入っていたに違いない。となれば、CPI悪化での見通し修正は物理的に不可能だったのではないか。
勿論、イエレン会見ではインフレ圧力の低下を認めている。しかし「過剰反応しないことが重要」と発言。今までにないタカ派姿勢だ。会見中、トランプ大統領と再任に関する議論は無いとして記者らからの質問を避けたように見えた場面があった。何故か。筆者は次のように邪推する。
イエレン議長の任期は2018年2月3日、残すところ230日、半年強である。つまり金融政策の正常化を議長在任中の悲願とし、市場機能を取り戻して退任への花道を作りたいとの矜持が先立っているのではないか。想像の域を出ないが、イエレン議長自身が市場の動揺を抑え、自分にも言い聞かせようとした強気会見だったのではないか、と思えてならないのである。
雇用基調拡大も、物価上昇率は目標2%に届かず、翌6/15には米商務省が5月輸入物価指数を前月比0.3%下落、昨年2月以来15カ月ぶりの大幅な落ち込みと公表した。物価上昇圧力後退を示す有力なデータだ。市場はそうしたデータとの整合性を踏まえイエレン議長の行き詰まりを見据えているのかもしれない。6/16時点でのシカゴFEDウオッチでは次回、利上げ確率が高いのが2018/6/13のFOMCとしている。
6/19週のドル円上値焦点は月足雲上限111.405、日足一目均衡表雲帯111.82-112.23。5/17欧米時間下落前の戻り高値圏112.50-55、5/17高値113.12が期待値。下値焦点は200日線110.612、週足一目均衡表雲帯109.95-51、6/15安値109.265。割れたら6/14安値108.78、4/21-20安値圏108.875-72留意。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト