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債務問題の概観

図1は、債務残高と財政赤字の推移を示しています。債務残高は1980年からほぼ一貫して増え続け、財政収支もバブル期の財政黒字と、小泉政権時代の財政収支の改善を除いて財政赤字は増える傾向にあります。

図1:日本の債務残高と財政赤字の推移

図1:日本の債務残高と財政赤字の推移

出典: 世界経済のネタ帳

注:2012年と2013年のデータはIMFによる推計値を表す

図2は政府債務の対GDP比の推移を示しています。こちらも図1と同様の傾向があり、一部時期を除いて上昇しています。

図2:日本の政府債務残高(対GDP比)の推移

図2:日本の政府債務残高(対GDP比)の推移

出典: 世界経済のネタ帳

注:縦軸は債務比率(%)、横軸は年。2012年と2013年のデータはIMFによる推計値を表す。

ここまでから分かるのは、財政赤字と既存債務の利払いが債務残高を増やしているという事です。本稿では財政問題に着目するので、その財政赤字、特に歳出面を取り上げてみましょう。


歳出の内訳

図3は、2013年度の一般会計の歳出予算案を示しています。基礎的財政収支(プライマリーバランス)対象経費が76.0%、国債費が24.0%になっています。国債費は既存債務の返済と利払いで手を付けられない部分で、財政再建において調整する事が可能なのは基礎的財政収支対象経費です。基礎的財政収支対象経費のうち、最も大きな割合を占めるのが社会保障関係費です。

図3:平成25年度一般会計予算歳出内訳

図3:平成25年度一般会計予算歳出内訳

出典: 「日本の財政関係資料―平成25年度予算案 補足資料―(財務省)」(PDF)


根本的な財政問題解決には社会保障費の抑制が必要

社会保障関係費は歳出の中で大きな割合を占めているだけでなく、その割合は年々増えています。図4は歳出面の構造変化を示しています。社会保障関係費が増えているだけでなく、基礎的財政収支対象経費の中での社会保障関係費は、2001年の21%から2013年の31%へとその割合が高まっています。

図4:歳出面の構造変化

図4:歳出面の構造変化

出典: 「社会保障の現状と課題(内閣府)」(PDF)

社会保障関係費の内訳を見ると、年金の割合は改善の兆しがありますが、医療費の割合が増え続けており、同資料でもその問題は指摘されています。(図5)財政問題の中で最も解決すべきであるはずなのに、抜本的な解決がされていないのが医療費なのです。

図5:医療費の動向

図5:医療費の動向

出典:同上


何故医療費は高騰するのか

医療費が高騰する最大の理由は「高齢化率の上昇」です。図6は、高齢化率と国民医療費を比較していますが、高齢化率と国民医療費は高く相関しており、回帰分析を行っても高齢化率だけで92.7%の説明が可能です。

図6:高齢化率と国民医療費の関係

図6:高齢化率と国民医療費の関係

出典:高齢化率は「国立社会保障・人口問題研究所」の推計、国民医療費は「厚生労働省」の推計。

注:高齢化率は、全人口に占める65歳人口の割合を表す。

但し、高齢化率の上昇が「医療費の上昇」の説明にはなっても、「財政への圧迫」の理由にはなりません。何故なら、医療を受ける高齢者が増えても、適切に医療費が徴収されていれば財政への影響は中立的なはずです。年々医療費が財政にマイナスの効果を示すようになっているのは、以下のような理由があります。

①高齢化率の上昇を相殺するだけ高齢者の医療費負担率を上げるという施策が採られていない

②医療費の自己負担割合が小さい事による高付加価値医療受診への集中

③医療技術の進歩による医療費の自然増

①については、医療負担率の低い高齢者の割合が増える事によって医療費が財政を圧迫するようになってきているわけですが、高齢化率による医療費上昇を補えるほど自己負担率が上がっていないので、医療費が財政を圧迫しています。下図7のように少しずつ医療費の自己負担率を上昇させていますが、高齢者に関しては極めて限定的な施策に留まっています。

図7:医療費自己負担の推移

図7:医療費自己負担の推移

出典: http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/07/ 平成19年版厚生労働白書(厚生労働省)

②について簡単な例を元に説明してみましょう。医療費は点数方式が採られていますが、ここに同じ病気Xに対する医療保険対象の治療方法に治療A・治療B・治療Cがあるとしましょう。それぞれの医療費は治療Aが50000円、治療Bが30000円、治療Cが10000円であるとしましょう。A>B>Cの順で治療の効きが悪くなるとします。この場合、治療Aはとても高くて、もし保険が効かなければ選ばれにくいでしょう。

医療保険制度は、中央値である治療Bの30000円が想定されています。様々な治療を選ぶ人がいますが、平均的には治療Bが選ばれる事が想定されているのです。

しかし、治療を受ける側に立てばどうでしょう。1割負担の後期高齢者を想定した場合、どうなるでしょうか。自己負担額は、治療Aが5000円、治療Bが3000円、治療Cが1000円となります。この時、患者にとっては「最高の医療と最低の医療の差が4000円しか無い」という事になります。

これは医療費のモデルを単純化したものですが、このような理由で全体として高付加価値の医療が選ばれる傾向にあり、医療費は「想定される額よりも高くなる」のです。

そして、この傾向は技術進歩によって更に高付加価値の医療が登場する事によって、これらが医療保険の対象に組み込まれていき、(3)のように医療費が自然増していくのです。


世間で騒がれる「税金の無駄」は歳出の枝葉末節

以上のように、国債問題の根幹となる財政赤字の主因は社会保障関係費、特に医療費である事が分かります。それに比べれば、世間で財政支出の大きさが問題視される公共事業費(歳出の5.7%)や防衛費(歳出の5.1%)は些細な問題に過ぎません。

ましてや、国会議員の歳費や秘書給与、政党交付金に関しては全て合わせても歳出の約0.1%(約1000億円)であり、国民感情として批判する気持ちは理解出来ますが、財政再建においては誤差の範囲であり、「議員歳費をどうするか」といったものに議論や報道の時間が割かれるのは社会的経済的に大きな浪費でしょう。

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