国営新華社通信は、「世界の偽物(偽ブランド、コピー商品)の8割は中国とした欧州報告書の真相は如何に?」と題する記事を配信した。それは次のように始まる。

欧州刑事警察機構(ユーロポール)と欧州連合知的財産庁は、全世界の偽物の8割は、中国内地または香港の出自であるとレポートした。偽物問題に対する国内外の関心は高い。われわれ中国人はこの報告をどう見ればよいのだろうか。中国が商標権や知的財産権を侵害しているという問題の真相はどこにあるのだろうか?

中国はデータの真実性に疑義

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香港の繁華街(写真=burocx/Shutterstock.com)

70ページの報告書は、中国内地と香港が全世界の偽物の核心集散地であるとした。2015年の全世界の偽商品の86%はここから流通し、その知的財産権の侵害行為は突出している。欧州はこの行為によって多くの税収を失い、失業者を発生させ、本物の流通を阻害されたとしている。

しかし中国貿易促進会国際貿易研究部は、全世界の偽物統計など、科学的方法による根拠の明確なデータであるはずがない。一歩譲って中国の偽物出荷データが正しいとしても、どうしてその世界シェアまで把握できるのか?データの真実性に疑義を挟まざるを得ないと指摘している。以下反論が続く。

中国も偽物の被害者という論理

8割を超す偽物が中国産という件は科学的論証を待つとして、ここで確かなことは、権利の侵害は全世界の問題ということだ。中国を含む全世界の生産、流通、販売、消費等に悪影響を与えている。

そして中国自身も侵害の被害者なのだという論理へ導く。中国海関(税関)によれば、近年、中国への輸入商品における権利の侵害案件は、毎年10%増加している。2016年には757万8500件に及び前年比13.2%増加した。

海関は、中国企業の知的財産権に対する保護意識は不断に強まっていると指摘する。それは海関が権利侵害産品の輸出に対し、高圧的姿勢を保持しているからに他ならない。そして海関は偽物による権利の侵害を阻止するため、今後も努力を怠ることはない。

さらに質量監督検験検疫総局はアフリカ、中東向け輸出商品の重点検査を行った。3万2000回の検査で1000回、金額にして約7000万ドル分を不合格とした。これは日米欧など知的所有権にうるさいところ以外でも、検査して品質を守っているというアピールとみられる。

アリババは偽物一掃するのか

以上のように、記事は欧州レポートに対する反撃だ。そして当局の最新の立場を代弁している。確かに正規ルートに関してはこの通りなのだろう。しかし中国には必ず非正規ルートが存在する。それに中国がデータの真実性に疑義を唱えても説得力はない。失業率、小売総額などのデータは毎回同じだし、GDP成長率も中国ウォッチャーの予想通りである。

また記事は、ネット通販トップのアリババの偽物一掃プロセス中、問題商品は国産ではなく外国産に多いと強調している。しかしそんなことはどうでもよく、重要なのはアリババがトップ企業の責任として本気で偽物一掃に取組むかどうかである。何しろ総帥の馬雲はかつて、中国の偽物は本物より良い、と言い放った前歴がある。

とはいえアリババは直近の活動によって、3億8000万の商品ページから18万の違反店舗を追放した。そのうち675社は当局の捜査を受けているという。さらにアリババ自身もブラックリスト企業100社を公表した。しかしこんなパフォーマンスのレベルで済むはずはない。大株主のソフトバンクは、もっとモノ言う株主となってもかまわないだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)