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こんにちは、経済学修士号を取得後、株価推定の事業・研究を行っている「たけやん」です。宜しくお願いします。

今回は、円相場と日経平均株価に相関関係があるかどうかを検討します。まず、相関係数の説明をした上で、円ドルレートと実効為替レートそれぞれを日経平均株価と比較します。それぞれ、相関している時としていない時とで差があるので、円ドルレートと実効為替レートから合成変数を作り、マネーストックやDIなどと共に簡単に回帰分析を行います。最後に、分析結果について補足します。


相関係数とは

相関係数とは、2つのデータ群の間の相関関係の度合いを示した値になります。相関関係とは、「一方が大きく(小さく)なると、もう片方を大きく(小さく)なる」という関係です。相関係数自体は-1~1の値を示します。相関係数の読み方には人によって若干違いますが、相関係数をRとすると、

|R| > 0.7 ⇔ 強い相関

0.7 >= |R| > 0.3 ⇔ 中相関

0.3 >= |R| ⇔ 無相関

とするのが一般的でしょう。相関係数が0の場合、全く相関していない事を意味します。

但し、相関関係があるからと言って、そこに因果関係があるとは限らない事に注意です。たまたま同じ動きをしていても、その動きにはそれぞれ別の要因が働いている場合、そこに因果関係は有りません。


円ドルレートと日経平均

プラザ合意自体の影響を取り除き、年毎の相関を見るため、分析期間を1986年1月~2012年12月までとします。この期間において、円ドル名目為替レートと日経平均株価を比較してみましょう。

下図1は、円ドルレートと日経平均株価の推移を示しています。相関している部分、逆相関している部分が色々とあり、ひと目で分かるような関係は見当たりません。

図1:円ドルレートと日経平均株価の推移

図1:円ドルレートと日経平均株価の推移

出典:日経平均株価は「 日経平均プロフィル 」。円ドルレートは「 PACIFIC Exchange Rate Service 」。

注1:左軸は日経平均株価(円)、右軸は円ドルレート(円)。

注2:赤線が日経平均株価、青線が円ドルレート。

各年毎に相関係数を取って、その推移を示したものが下図2になります。1980年代バブル末期と2005年以降は相関している傾向にありますが、バブル崩壊後の10年程度は逆相関している傾向にあります。

図2:円ドルレートと日経平均株価の相関の推移

図2:円ドルレートと日経平均株価の相関の推移

出典:筆者作成

正の相関傾向がある時期は、要するに「日経平均株価が上がると円安になる傾向」があるわけですが、2005年以降の相関関係の背景には円キャリートレードの影響があるのではないでしょうか。円キャリートレードは要するに「金利の低い円を借りてドルベースで運用する事」なので、リーマンショックまでは世界的なバブルの影響による株高と円安の関係が発生し、リーマンショック後は、資産を売る事による株安と円の買い戻しによる円高という関係があると思われます。


実効為替レートと日経平均

では、実効為替レートと日経平均株価の関係はどうでしょうか。ここでは名目実効為替レートを利用します。両者と円ドルレートの推移を示したものが図3になります。なお、実効為替レートは「値が大きいほど円安」である事に注意してください。 基本的には、円ドルレートと名目実効為替レートは逆相関する傾向がありますが、やや円ドルレートよりも日経平均株価との相関が強い部分がありそうです。

図3:円の名目実効為替レートと日経平均株価の推移

図3:円の名目実効為替レートと日経平均株価の推移

出典:日経平均株価は「 日経平均プロフィル 」。実効為替レートは「 BIS effective exchange rate indices 」。

注1:左軸は日経平均株価(円)、右軸は為替レート(円・指数)。

注2:棒グラフは日経平均株価、青線は円ドルレート、緑線は名目実効為替レート。

図4は、円ドルレートとの相関係数と名目実効為替レートとの相関係数の推移を示しています。円高・円安の関係が見やすいように左右の軸を反転させています。バブル崩壊直後と近年は大きく異なりますが、それ以外はだいたい同じように相関している様子が分かります。

図4:日経平均株価と為替レートとの相関係数の推移

図4:日経平均株価と為替レートとの相関係数の推移

出典:筆者作成

注:赤線が円ドルレートとの相関係数(左軸)、緑線が名目実効為替レートとの相関係数(右軸)。


簡単な分析

為替レートだけで日経平均株価を説明するには無理があるので、景気動向指数(DI・CI)とマネーストックを中心とし、円ドルレートと名目実効為替レートを使った簡単な回帰分析を行います。

それぞれの変数の相関の高さの影響を除外する為に、DI遅行指数とCI遅行指数とマネーストック、円ドルレートと名目実効為替レートを主成分分析によって合成変数を作成します。これにより、合成変数が1つ抽出されたので、これを用いて日経平均株価の回帰モデルを作成します。

作成した回帰モデルは

日経平均株価 = 4866.638 × 因子 + 16908.068

になります。以下に示すモデルの要約の通り、自由度修正済み決定係数が0.533で、このモデルで日経平均株価の53.3%を説明出来る事になります。

壱

弐


結果への補足

ここまで見たように、円相場で日経平均株価の関係から読み取れる事は少なく、円キャリートレードによる影響などで容易に正の相関が負の相関に変わるという事があるので、それだけで何かに使えるかというと、それは難しいでしょう。上記のモデルも、便宜上選択したのみで、因果関係があるわけではない事に注意した方が良いです。

ここまでで言える有効な結論は、「円安だから株価が上がる」といった安易な投資スタンスに合理性は乏しいという事であり、最近はその傾向が強いにしても、今後それが続く保証はどこにも無く、もっと広く様々な指標を使って分析を行うべきでしょう。

photo credit: heiwa4126 via photopin cc