高齢だった親が亡くなり、相続する遺産に株券が含まれていた場合はどうすればよいのか。株式の相続は難しい。評価額が日々変動し、現金のように単純に分けることができないからだ。

上場株式の相続割合は話し合いで決まる

相続,遺産,争族
(写真=PIXTA)

株式の相続が現金や預貯金と大きく異なるのは、相続分が法定相続割合とは一致しない点だ。

相続人が妻と子2人の場合、通常であれば妻は2分の1、子2人は4分の1ずつが民法で定められた取り分だが、株式の場合は必ずしもこの配分に従う必要はない。株式は単なる資産ではなく、株主総会における議決権など社会的な権利も有すると考えられているからだ。

したがって、相続分は相続人同士の遺産分割協議によって決める。相続財産が株式のみであることはまれなので、土地・家屋、現金・預貯金とのバランスを見て検討する。たとえば分割が難しい自宅は妻が相続し、現金と株式を兄と弟で均等に分けても良い。もしくは他の資産と評価が同じになりそうなら、誰かがまとめて株式を相続する手もある。

協議内容は必ず「遺産分割協議書」として残しておこう。後にトラブルになった時に役立つだけでなく、相続税の申告の際にも必要になる重要な書類だ。

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受け取りには証券口座が必要

相続の割合が決まったら、株式の名義変更手続きを行う。親の名義から自分の名義にするのだ。名義変更手続きには財産を受け継ぐ人の証券口座が必要だ。故人と異なる証券会社の口座でも可能だが、手続きが煩雑になるためまず同じ証券会社に口座を作り、自分名義にした後で別の証券会社に移管するのが良いだろう。

移管完了後は、売却して現金化するのもそのまま保有し続けるのも自由だ。ただし売却のタイミングによっては相続の金額に差が出る可能性があることを覚えておくのが良いだろう。

たとえば兄の売却時には1株当たり1000円、弟の売却時に990円だった場合、同じ株数を相続しても評価額は異なることになる。

きっちり均等に分けたい場合は

評価額が日々変動するのが株式の相続の大きな特徴だ。どうしても均等に分けたい場合は現金化してから分けるしかないが、名義が故人のままの状態で証券会社のほうで売却手続きをすることはできない。

そこで便利なのが「代表相続人口座」を作る方法だ。相続人のうち1人を代表とし、その名義で証券会社に口座を開設する。いったん全株式をそこに移管し、一括して売却し代金を相続人数で分配する方法だ。

後から分配する旨は必ず遺産分割協議書に記載する。売却に伴う税金も平等に負担することも明示すると良いだろう。現金化した後で分配が実行されなかったり、税金や手数料についてもめ事になったりするのを防ぐことができる。

相続税はどのように払うのか

相続分が決まって名義変更・現金化して分配が完了すれば、財産を引き継いだ人が相続税を支払う。その際、相続税額を算出するために「もらった財産は金額にしていくらか」を明確にする必要がある。それが相続財産の評価という作業だ。

株の値段は現金と違って随時変動する。そのためいつの時点の価格を基準とするかがポイントとなってくる。上場株式の場合、評価額を「被相続人の死亡の日の最終価格」と定められている。ただし、株価が大きく変動した時のため、その月または前月もしくは前々月の平均額と比較して最も低い額を採用することになっている。

算出した株式の評価額と他の資産の評価額を合計し、税率(10%~55%)をかけたものが納付すべき相続税額となる。納付は現金が原則だが、株式は物納も可能だ。

株式以外の金融商品の相続

日本では自宅の土地・家屋と預貯金が主な相続対象だったが、最近では投資意識の高まりから預貯金以外の金融商品も相続の対象になることが増えてきた。上場株式の相続方法についてはすでに述べたが、投資信託、債券、外貨預金などその他の金融商品でも基本的な流れは同じである。遺言書がなければ相続人同士で遺産分割協議を開き、決定した相続分に合わせて証券会社に名義変更をしてもらう。

異なるのは相続税を計算するための財産評価額の算出方法だ。投資信託、債券、外貨預金など、金融商品によって算出方法は異なっている。

実際の計算式は複雑だが簡単に説明すると、一般的な投資信託の場合、課税時期の1口当たりの基準価額×口数にもらえる配当金を加えて手数料を引いたものが評価額となる。上場投資信託と呼ばれるETFやREITは、上場株式と算出方法は同じだ。債券は利付債か割引債か、上場されているかいないかで評価方法が異なるので詳細は省くが、要するに額面+利息の額と考えればよい。外貨商品の場合、財産を円に戻す必要はないが、評価額を算出する際は円に換算しなければならない。

相続財産の探し方

相続が発生した時に個人がどのような資産を保有していたか分からないケースが多発している。故人の通帳や郵便物、キャッシュカードやパソコンのデータから調べることもできるが、時間がかかり漏れも心配だ。どの証券会社を使っていたか分かっても、残高証明を請求するには相続人・被相続人双方の戸籍謄本など多くの手続きを要する。

相続税の申告・納税は、相続開始を知った翌日から10か月以内に行わなければならない。相続放棄をするなら3か月以内だ。書類の手配や分割協議がスムーズにいくとは限らないので、どのような財産があるかは生前から家族で共有しておきたい。(篠田わかな、フリーライター)

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