民間のサラリーマンなどがiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入していた場合、気になるのが転職した際の扱いだ。場合によっては、iDeCoを継続することができないケースもある。転職してから「こんなはずではなかった」とならないように、前もってiDeCoの転職時の手続きについて知っておこう。
iDeCo加入後に転職した際の手続きは?
iDeCoに加入できる対象者は3つのタイプに分かれている。自営業者などを指す「第1号被保険者」、民間のサラリーマンや公務員が該当する「第2号被保険者」、そして会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者に扶養される配偶者の「第3号被保険者」である。今回は、会社員(第2号被保険者)が転職により自営業者(第1号被保険者)になるケースと、他の企業に勤務(第2号被保険者)するケースについて焦点を当てたい。
まず、自営業者へ転身する場合だ。国民年金の保険料を納めていることや、国民年金保険料の免除を受けていないなどの条件を満たしていれば、引き続きiDeCoに加入することが可能だ。ただし、公的年金の被保険者区分が第2号から第1号に変わるため、「加入者被保険者種別変更届」(様式第K-010A号)を提出する必要がある。変更後は、月々の掛金の拠出限度額が6万8,000円まで引き上がるなどのメリットがある。
第2号被保険者のまま他の企業に転職する場合は、民間のサラリーマンとなるケースと公務員となるケースに分けられる。2017年1月の法改正により、公務員もiDeCoへの加入が可能となった。公務員に転職する場合は、転職先の事業主の証明を取得した上で、「加入者登録事業所変更届」(様式第K-011号)および「第2号加入者に係る事業主の証明書(共済組合員用)」(様式第K-101B号)を提出して手続きを行う。
第2号被保険者の転職において最も注意すべきなのが、民間企業へ転職するケースだ。なぜなら、企業によっては、iDeCoとは別に、企業型確定拠出年金(企業型DC)を実施しているケースがあるからだ。企業型DCが導入されていない企業や、企業型DCへの加入・非加入の選択が任意である企業なら、iDeCoへの加入を継続することができる。手続きは、前述の公務員と基本的には同じだが、民間企業の事業主の証明書類は「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」(様式第K-101号)であり、公務員とは様式が異なるので注意する必要がある。
なお、転職先において企業型DCへの加入が必須であり、iDeCoへの同時加入を認めていない企業では、iDeCoへの加入を継続することができない。この場合は、「加入者資格喪失届」(様式第K-015号)を提出し、iDeCoの資産を転職先の企業型DCに移す必要がある。詳細は、転職先企業の担当者に確認する必要があるだろう。
iDeCo加入後に転職した際の注意点
iDeCoでは、定期的に加入資格の有無をチェックしている。企業型DCに加入するなどしてiDeCoの加入者資格を喪失したのに加入者資格喪失届の提出を怠っていた場合は、資格喪失月以降に引き落とされた掛金は、後日還付される。ただし、還付の際は手数料相当分が差し引かれてしまうほか、還付された期間に遡って掛金を支払うことはできないので注意が必要だ。
また、自営業者へ転職した場合も、国民年金保険料の未納の月があると、当該月のiDeCo掛金は還付されてしまう。余計な手間と手数料が取られることを防ぐためにも、転職時の手続きは速やかに行うことが必要だ。
また、企業へ転職する際には、転職先あるいは転職を考えている企業において確定拠出年金がどのような扱いとなっているのかをあらかじめ確認しておきたい。たとえ転職先が企業型DCを導入していても、必ずしもiDeCoから企業型DCへ資産を移す必要はないからだ。企業型DCとiDeCoへの同時加入を認めているケースや、企業型DCまたはiDeCoのどちらかを選択できるケースもある。これは、転職先の企業型DCの規約によって変わってくる。
転職の手続きは速やかに
iDeCo加入後に転職する場合は、何らかの手続きが必要であることを覚えておこう。手続きを怠ったり対応が遅れたりすることで、余計な手数料が徴収されて自分の資産を目減りさせたり、掛金が還付されてしまう可能性もある。iDeCoは「自分で運用している自分の資産である」という意識を強く持っていくことが大切だ。転職が決まると、仕事の引き継ぎや引越しの手配などすべきことは多いが、同時にiDeCoの手続きも早めに進めておこう。
(提供: 確定拠出年金スタートクラブ )
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