前回の世界金融危機から10年が過ぎた今、各国間の所得格差が縮小を続けている一方で、特に先進国における格差はますます広がっている 。
国際金融協会(IFF)は1月、「16年の世界の債務は、世界のGDP(国内総生産)の325%を上回っている(前年比)」との報告書を発表した。16年1月から9月までに債務が11兆ドル増え、217兆ドルに達したという(ロイターより )。
先進国だけではなく、経済成長が期待されている発展途上国ですら、債務が3倍に膨れ上がっている。また欧米でも深刻化する家計負債の原因の一つが、所得格差である点は以前から指摘されている。
こうした数字は氷山の一角だ。経済危機以降も世界経済が不安定なままであるのは、疑う余地がない。
「所得格差は世界4位」米国の6割の消費者が経済を楽観視
国同士の格差は金融危機以前から、すでに何十年にもわたり縮小傾向にあった。成長期に位置する発展国の経済とは対照的に、先進国の経済が成熟期あるいは衰退期に突入したと考えると、こうした格差の縮小・拡大の差は納得できる。
総体的には経済が豊かな国ほど経済危機の後遺症が重く、年間実質GDPの成長率も頭打ちしている。一方、発展途上国は経済危機時の比較的混乱も少ないように見える。
しかし各国・地域の格差の変化を見てみると、著しい差が現れていることが分かる。
例えば経済危機から順調に回復基調にあるとされている米国。金融危機前後は14兆ドルだったGDPが、2017年4月には19兆ドルまで成長しているほか(IMF統計 )、ピュー研究所の最新の調査からは「消費者の6割が自国の経済に自信を持っている 」ことなどが判明している。
それでは米国が誰にとっても公平な経済成長を遂げているかというと、けっしてそうではないようだ。OECDが2014年のデータに基づいて分析 したところによると、米国はコスタリア、メキシコ、トルコに次いで、世界で4番目に所得格差の激しい国とされている。