外国人観光客が爆買いと称して、高級炊飯器などを複数購入し、両手いっぱいのショッピングバッグで家電量販店を闊歩していた姿は今や昔。訪日観光客の旅行スタイルがモノからコト消費に移行しつつある中、家電量販店にとっては、インバウンドによるバブルの宴が早くも終焉を迎えてしまったようにも写る。

こうしたトレンドの転換において、勢いを見せるのが郊外型の家電量販店で、各社の株価は好調に推移している。その背景にあるものは一体何なのか。

郊外型家電の株価はここ2〜3ヶ月で軒並み20-30%上昇

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(写真=PIXTA)

郊外型家電量販店の直近3ケ月の株価推移に着目すると、上新電機 <8173> は1300円台後半から1700円を超える水準まで20%以上も値を上げている。上新電機に負けない勢いを見せているコジマ <7513> は、5月中旬の株価は300円をわずかに超える水準だったが、足元では380円台を突破して25%近く値が上がり、400円台も伺う勢いだ。

さらに、この2社を上回る勢いを見せているのが、神奈川県を拠点とする家電量販店の中堅・ノジマ <7419> だ。3か月前は1600円後半で推移していた株価は、8月に入り急騰。2000円の大台を突破して2170円まで続伸し、約30%の上昇幅を記録した。

一方、都市部にも店舗を展開する家電量販店の株価は郊外型ほどの勢いはない。ヤマダ電機 <9831> の株価は一時、600円のラインを突破したが、その後は500円台後半の値で寄り付き、直近3ケ月の上昇幅は4%程度にとどまる。ビックカメラ <3048> は、5月の1100円台中盤から1200円台後半にまで値を上げて、ヤマダ電機を上回る上昇だったが、その幅は約12%と、郊外型には及ばない。

この間、日経平均株価全体の値動きは、2万円台を上回る局面もあったが、北朝鮮のミサイル問題で地政学リスクの高まりなどを受けて伸び悩み、足元の1万9500円を挟む値動きは、5月中旬頃と同じ水準にとどまる。

好調な業績、株主優待見直しに買い注文

一進一退の攻防が続く日経平均株価全体の動きとは対照的に、家電量販店の株価は全体として値上がり基調が散見できるが、その中でも郊外型の勢いは群を抜いている。

家電量販店の都心部への進出が相次ぎ、客を奪われる格好となった郊外型店舗では、閑古鳥が鳴くような状態が続いていた。さらに、交通の便から訪日外国人観光客による爆買いの恩恵を授かったというわけではない。それにも関わらず、株価を押し上げる要因はどこにあるのか。

まず上新電機については、8月10日に発表した2018年3月期の第1四半期連結決算によると、消費マインドの低下に加え、競合他社との出店攻勢、ネット販売の拡大などの影響を受け、売上高は前年同期比で0.4%減の865億5300万円に落ち込んだが、営業利益は同36.4%増の9億円、純利益は同25.5%増の5億8700万円となった。

売り上げでは苦戦していた上新電機の株価を、17年春までさかのぼってみると、4月中旬以降から上昇ピッチに勢いが付いている。同社は4月18日に株式の単元株式数を1000株から100株に変更することを発表し、株主優待の内容も見直した。これまでは1000株の2年未満の保有に対し、優待券1万1000円を贈呈していたが、その内容を100株の2年未満の保有に対し、優待券2000円の贈呈とする。8月18日の株価終値1718円で優待利回りを計算すると、これまでは利回り0.64%だったが、今後は1.16%と倍近くになる。

さらに9月末株主優待も新たに実施し、すべての株主に対し、5000円の優待券を贈呈する予定だ。この内容を好感した投資家からの買い注文が集まり、堅調な業績も相まって、株価は右肩上がりの状態が続く。

コジマの決算も好調で、17年8月期の第3四半期決算(非連結)では、売上高が前年同期比2.1%増の1697億1100万円、営業利益は同62.3%増の10億3000万円、純利益は6億7500万円と前年同期2億8900万円の赤字から黒字転換を果たした。業績の後押しともなったのが、ビックカメラとの統合により、取扱商品のラインナップが充実。さらに、不採算店舗の閉鎖などスクラップ&ビルドも効率的に進めたことが好調な業績に寄与し、株価上昇の要因ともなった。

ノジマも他2社同様に、2018年3月期の第1四半期の連結決算では結果を残した。売上高は前年同期比16.9%増の1124億8300万円、営業利益は同88.8%増の25億8600万円、純利益は同2.35倍の21億4200万円となった。デジタル家電専門店における4K対応テレビ、冷蔵庫、洗濯機などの販売が好調に推移し、業績を押し上げた。決算発表日の8月8日の終値は1783円だったが、9日には2000円の大台を一気に突破し、終値は前日比で約16%増の2043円まで続伸。その後も勢いを保った状態が続いている。

一時は、家電量販店の都心部や市街中心地への出店が相次ぎ、客を奪われる格好となった郊外型家電量販店だが、足元では、商圏内の顧客の需要をしっかりと囲い込み、好調な業績が続いており、投資家からの買い注文が入りやすい状況となっている。この勢いがどこまで続いていくのか、投資家ならずとも郊外型家電量販店から目が離せない。(ZUU online 編集部)