皆さんは1日に何回くらい「思考整理」をしているでしょうか。

もし思考整理を「新しいアイデアを考えるとき」とか「大きな問題にぶち当たったとき」にだけ使うものと考えていると、その回数は1日に1回あるかないかかもしれません。

しかし、思考整理は皆さんが思っているよりもはるかに多く、活用のチャンスがあります。たとえば、毎週月曜に1週間のスケジュールを立てる。毎朝その日のスケジュールを立てる。飛び込みの仕事やクレームに対応するための優先順位をつける。個々の仕事の効率的な段取りを考える。報告書の構成を考える……など、毎日のさまざまな場面において、思考整理は使うことができるのです。

(本記事は、井上龍司氏の著書『 会社では教えてもらえない 生産性が高い人の思考整理のキホン 』すばる舎(2017年6月24日)の中から一部を抜粋・編集しています)

仕事の基本は「優先順位」にそって進めること

思考整理
(画像=Webサイトより)

複数のタスクがあると、ついつい得意なタスクや興味のあるタスクから手をつけたくなってしまうものです。しかし、「やりたいこと」ばかり選んでいては、他のタスクが期限に間に合わなくなります。優先順位を決めるうえでの基本ルールは「やるべきことから手をつける」です。たとえば、期限が本日中のタスクと、3日後で良いタスク。優先するべきなのは、もちろん前者です。ただし、その期限でなければ本当にいけないのかは確認が必要です。本日中に終わらないとお客様に迷惑がかかるという重要なタスクもあれば、依頼してきた上司が特に理由もなく「今日中で」と言っているだけというタスクもあるからです。

指定された期限を超えると、どのような問題が起きるのかを確認し、もし問題がないのであれば、本当の期限はもっと後だということです。このように「本当の期限」を見極めることが、余裕のあるスケジュールをつくるコツです。

また、仕事が終わらないという方にありがちなのが、「そもそも量を抱えすぎ」というパターンです。スキルも高くスピードは決して遅くないのに、自分でいろいろと抱えてしまうため、結果的にパンクしてしまうのです。この場合は、自分のキャパシティを理解して周囲との調整を図るしかありません。

多くの方が陥りがちなのが、所要時間を考えていないために、無茶なスケジューリングをしてしまうことです。「とにかく全力で頑張って終わらせる」という姿勢も大事ですが、「このタスクは3時間くらいかかりそうだ」といった見通しをしているから、自分でやりきれるとか、他の人にお願いしようといった判断ができるのです。過去にやったことのあるタスクであれば、見積もりはしやすいはずです。しかし、未経験のタスクや、(企画を考えるなどの)ゴールが見えにくいタスクは、時間の見積もりが困難です。ある程度カンで見積もるしかありません。しかし、そのカンは経験を積むことで磨かれていきます。

「5W1H」を理解することでできる整理された計画書

計画という言葉はあいまいで、いったい何をすれば計画をつくったことになるのかよくわかりません。そんなときに参考になるのが、「5W1H」です。学校の国語や英語の授業で習ったことがあるかもしれませんが、「5W1H」とは、「何を」「誰が」「いつ」「どこで」「なぜ」「どのように」の英語表記の頭文字を取ったものです。たとえば、5Wのひとつの「Who」は、「誰がその仕事をやるか」という、計画の要素のひとつになります。同様に、他のWとHを考えていくことで、計画を整理することができます。

たとえば、When(いつ)は本番の日時だけを記載していますが、そこに至るまでの準備期間も必要です。いつ・誰が・何を準備するというスケジュールをつくる必要があります。また、Why(なぜ)は「認知度と売上」の向上とありますが、何人くらい参加者を集めたいかとか、何個くらい売りたいかといった目標を定める必要があるでしょう。もし何かの計画をつくる必要に迫られたら、焦らずにこのような5W1Hの表を用意しましょう。そして、それぞれの中身を少しずつ詰めていけば、必要な内容が整理された計画書がつくれるはずです。

仕事を細分化してひとつずつ処理することが整理術

仕事があとどれくらい残っているのか、今どの部分の仕事をしているかが把握できていないと、精神的に余裕がなくなってしまったり、締切間際でバタバタしてしまったりということになります。そのような仕事は、いくつかのステップに分けることが大切です。そうすることで、それぞれの作業内容や所要時間がイメージできるようになり、遠回りや迷い道のない進め方ができるようになります。たとえば、コンサルティングや商品企画の仕事では、よく以下のようなステップを踏みます。

  1. 現状の把握:会社や現場の実態を正しく把握する
  2. 問題の発見:①の現状を受けて、どこを改善すべきかを特定する
  3. 解決策の検討:②の問題を解決する方法を考える
  4. 解決策の実行:③で決めた解決策を実行する

複雑な仕事や大きな仕事を任されて、「どのように進めたら良いかわからない……」と悩んだときには、作業に入る前にまずはステップに分解することから始めましょう。それをあらかじめ上司や取引先にも説明しておけば、仕事が完成してから「思っていたのと違う! やり直し!」と叱られる可能性も減るはずです。

思考整理にも使える「図解」

「図解」と聞くと、「絵を描くのが苦手だから」と敬遠する方もいるかもしれません。しかし、図解は決して難しいものではありません。普段の仕事に必要なレベルの図解であれば、いくつかの基本を知るだけで使えるようになります。

さまざまな図解のうち、もっともポピュラーでわかりやすく、かつ簡単に整理できるものが、「箱」と「矢印」で構成された「フローチャート」です。たとえば、何かトラブルが起きたときの整理。トラブルには何かしら原因があり、またさらにその原因をつくった原因があります。

レストランで「料理が出てくるのが遅い!」とお客様からの苦情があり、その原因は厨房での調理に時間がかかっていたからだとします。しかし、そこで調理担当者を叱ってもあまり効果はあがりません。担当者が嫌になって辞めてしまうだけです。それよりも、なぜ調理に時間がかかっているのかを深く追ったほうが、より具体的な改善策が見つかります。そもそも厨房が狭く、同時に多くの調理ができないからかもしれませんし、調理に時間がかかるメニューが多すぎるからかもしれません。

このようなトラブルと原因の分析は、「箱」と「矢印」で整理しやすいテーマのひとつです。フローチャートは状況の整理や業務の流れを可視化し、原因や対策を考えるのに非常に役立ちます。図解による思考整理にはさまざまなパターンがありますが、フローチャートは基本中の基本です。迷ったらとりあえず「箱」と「矢印」で、書き出してみましょう。

会議の生産性を倍増させるポストイット

思考整理のために「紙に書き出すこと」の大切さは個人作業に限らず、会議で議論を整理する場合にも有効です。議題や意見を、紙やホワイトボードに書いて、参加者が見えるようにすることで、話の脱線や、同じような意見の繰り返しを避けることができます。

また、「紙に書く」というなかでも、特にオススメしたいのが、「ポストイット=貼れる付箋」を活用することです。ホワイトボードに直接書き込むのと違って、ポストイットは貼ったあとでも必要に応じて、容易に場所を変えて貼りなおすことができるため、議論の整理がスムーズになります。会議中の発言ひとつごとに1枚を用いて、ホワイトボードに次々と貼っていきます。そして、似た意見であれば重ねたり、グループ分けできそうな意見はまとめて線で囲んだりすることで、議論の内容が整理されていきます。

また、「接客サービスが悪い」→「来店客が減る」といったように、付箋どうしを線や矢印でつなぐことで、情報間のつながりを表すことも容易です。
あるアンケートによると、会議中に考えを付箋に書き出したほうが、書き出さない場合よりもアイデアがはるかに出やすいという結果が出ています(スリーエムジャパン株式会社「会議に関する調査」より)。100円程度で手に入るわりには、絶大な効果を持ったアイテムです。皆さんの会社の会議室にぜひ備え付けておきましょう。今までよりも少ない時間で内容がまとまり、生産性がグンと上がった濃密な会議にすることができるでしょう。

井上龍司(いのうえ・りゅうじ)
1976年生まれ。東京音楽大学を中退後、慶應義塾大学環境情報学部を卒業。 外資系コンサルティング会社であるプライスウォーターハウスクーパース(現在はIBMにより買収)に入社。以後、自動車メーカー、総合商社、都市銀行、生命保険会 社など各業界の大手企業における戦略策定や業務改善、システム導入などのコンサルティング業務に長年にわたり従事。現在は、外資系金融機関において業務改善、システム開発などのプロジェクト管理に携わっている。一方で中小企業診断士の資格も有し、これまで小売店や理髪店、飲食店などのコンサル ティングや人材育成にも携わる。コンサルティングの仕事を通じて、仕事のスピードアップや品質の向上をもたらす「思考整理」の威力に気づき、その技術を習得し活用している。

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