アイデア出しと言うと、コンサルタントやクリエイティブな仕事をする方のみに課された仕事のように思われますが、実際はどんな職種の方にも求められるスキルです。売上拡大や業務の効率化のためのアイデアを、皆さんも上司や取引先から求められたことがあるのではないでしょうか。

しかし、どんなアイデアを出すときでも、何もない状態から良案を生み出すのは簡単なことではありません。そのように悩んでいる方の話を聞いていくと、そもそもインプット(情報収集)が少なすぎるのではないか、と思うことがあります。

「アイデアマン」とは、生まれつき創造力や発想力を持っている人に限りません。普段からインプットを心がけていれば、誰でもアイデアマンになることはできるのです。

(本記事は、井上龍司氏の著書『 会社では教えてもらえない 生産性が高い人の思考整理のキホン 』すばる舎(2017年6月24日)の中から一部を抜粋・編集しています)

限られた条件のなかからアイデアを出す

思考整理
(画像=Webサイトより)

「営業部の成績が落ちている。受注を増やすアイデアを出してほしい」

このように頼まれたとき、急いでアイデアを出したいところですが、いきなりアイデアを捻り出そうとするのは、実はあまり効率の良いやり方ではありません。

たとえば「営業マンのモチベーションを上げるために飲み会を開催しよう!」と思いついたとします。しかし、それが有効なのはあくまで彼らのモチベーションが低い場合だけです。モチベーションに問題がないのなら、あまり効果は見込めません。さらに言えば、業績が悪くて予算がないのなら、そもそも飲み会を開くことは難しいでしょう。

こうしてみると、アイデアを考える前に、まずその置かれた状況を整理する必要があることがわかります。アイデアを出すために最初に考えなければならないのは、「アイデアそのもの」ではなくて「アイデアの検索条件」です。この手順を忘れると、検索条件を満たさないアイデアが出てきてしまいます。

アイデアは、きちんと効果が期待できるものでなくてはなりません。ムダな時間や労力、費用を抑えるためにも、まずは求められたときの状況を整理して、きちんと「検索条件」に則ったアイデアを出せるようにしましょう。

「特徴」をピックアップしてアレンジする

なかなか仕事がうまくいかず、「もっと効率的なやり方を考えよう」と思い立ったとき、「効率的、効率的……?」とウンウン考えても、いきなりアイデアは出てこないでしょう。

そんなときは、まず自分の仕事の特徴を思いつく限り大量に挙げてみます。やみくもに考えるのではなく、「特徴を洗い出してアレンジする」。これが、遠回りを避けられるアイデアの出し方のひとつです。

また、アイデアを考える手法に「ブレインストーミング」があります。これは何人かで「質より量」「批判NG」で自由にアイデアを出しまくる、というものです。そこでオススメしたいのが、具体的なアイデアではなく、「特徴」を挙げるという方法です。ある程度出し終わったあと、それらの特徴をアレンジできないか考えていくわけです。

ブレストで特徴を挙げてアレンジを加える。この方法もぜひ試してみてください。

現場を観察することで「気づき」を得る

インプットや情報収集というと雑誌、書籍、インターネットなどの文字情報を読むことが思い浮かびますが、中には文字になっていない情報もあります。実際の人間の行動を観察してヒントを得ることも、そのひとつです。

たとえばラーメン屋の売上向上を考えるとき、お客様をじっくりと観察してみます。

すると、「長い髪を手で押さえながら食事をしている女性のお客様」「スープが服に跳ねないよう気をつけているお客様」などを観察できたとします。そこで「髪留めを店内に置いたら喜ばれるのではないか」「紙エプロンを渡したら喜ばれるのではないか」などといったアイデアのヒントを得ることができます(実際、このように髪留めや紙エプロンを置く店が増えています)。

このように、商品やサービスの利用者をよく観察すると、売上や満足度の向上のためのアイデアにつながるヒントを見つけ出すことができるのです。

観察を行うことでお客様自身も気づいていない不便さや、お客様が言いづらくて言えないような不満に気づくことができます。そして、それは見つけにくい分だけ、見つけることができたらライバルに対して大きなリードとなります。

「なぜ」を繰り返すことでベストアンサーを導き出す

アイデアを出すとき、「そのアイデアで何を実現したいのか」を考え直すことで、新しいひらめきを得ることがあります。そのための手法が「バリューグラフ」です。聞き慣れない言葉かもしれませんが、決して難解なものではありません。

バリューグラフとは、アイデアの目的を箱と矢印で順を追ってつなげていき、それぞれの目的を実現する方法を考える、というものです。

たとえば、飲食店で「来客を増やすアイデアを出せ」と言われたとします。そこで、いきなり具体的な方法を考えず、まずは、「来客を増やす目的は?」と考えます。もちろんそれは「店の売上の増加」でしょう。そう考えると、来客を増やすアイデアでなくても、(客単価を上げる余地がある限りは)お客様が高い料理を注文してくれるアイデアでも良い、ということになります。

さらに「売上増加の目的は?」と考えます。それは「店の利益の増加」のはずです。 となると、利益は売上から費用を引いた残りですから、(その余地がある限りは)費用を下げるアイデアでも良い、ということになります。

このように、当初は「来客を増やす」ことだけを考えていましたが、バリューグラフによって「高い料理を売るには?」「費用を下げるには?」といった視点も出てきました。こうすることでさまざまな視点から考えることができるようになります。

井上龍司(いのうえ・りゅうじ)
1976年生まれ。東京音楽大学を中退後、慶應義塾大学環境情報学部を卒業。 外資系コンサルティング会社であるプライスウォーターハウスクーパース(現在はIBMにより買収)に入社。以後、自動車メーカー、総合商社、都市銀行、生命保険会 社など各業界の大手企業における戦略策定や業務改善、システム導入などのコンサルティング業務に長年にわたり従事。現在は、外資系金融機関において業務改善、システム開発などのプロジェクト管理に携わっている。一方で中小企業診断士の資格も有し、これまで小売店や理髪店、飲食店などのコンサル ティングや人材育成にも携わる。コンサルティングの仕事を通じて、仕事のスピードアップや品質の向上をもたらす「思考整理」の威力に気づき、その技術を習得し活用している。

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