論点とは「何について話し合っているのか」ということです。論点がズレていれば、いつまでたってもゴールにたどりつかず、だらだらと生産性のない会議が続いて行くことになります。

このように、会議がまとまらない、あるいはせっかくのプレゼンが受け入れられない……といったその大きな原因のひとつは「論点のズレ」にあります。これはとてもよく見受けられる現象です。

特に、議論が白熱していたり、複雑な問題について話し合っているときには、往々にして論点はズレていってしまいます。そして、その渦中にいるほどズレていることになかなか気づきづらいものです。

(本記事は、井上龍司氏の著書『 会社では教えてもらえない 生産性が高い人の思考整理のキホン 』すばる舎(2017年6月24日)の中から一部を抜粋・編集しています)

議題を最初に共有する癖をつける

思考整理
(写真=Pressmaster/Shutterstock.com)

議論がきちんとかみ合うように、プレゼンや会議では最初に論点を示しておく必要があります。その際、たとえば「営業の方針について話をします」ではあいまいです。そうではなく、「今後営業を重点的にかけて行くべきエリアについて話します」のように具体的に示します。そして了解を取ってから、ようやく本来の説明や議論に入ります。

しかし、すんなりと了解をとれないこともあります。その場合は、何を優先して議論すべきかという「議論のための議論」が必要になるでしょう。

面倒ではありますが、論点に納得がいかなければ、その後の主張に納得してもらうことは絶対にできません。

主張を理解してもらう前に、まずは論点を理解してもらう。プレゼンや会議は、そのように二段構えで進めるものと覚えておきましょう。そして、会議の途中途中で、常に「発言が論点からズレていないか」を確認する癖をつけましょう。

要点を絞って主張を明確にする

精一杯自分の意見や考えを伝えたのに、それがうまく伝わらず、相手をイライラさせてしまったとか、出直してこいと言われてしまったという、若手の悩みをよく聞きます。

この場合、「主張」(=もっとも伝えたいこと)が整理されていないことに、多くの原因があります。前項でお伝えしたように、論点の整理をしたら、次は「主張」の整理が必要です。

また、主張はできるだけシンプルにまとめましょう。

「コスト削減のためには、まず原材料の調達先を見直すべき。ただし人件費にも削減の余地がある。また、売上増のためにはマーケティングも強化したほうが良い」

このような主張を聞いたらどう思いますか。「つまり何が言いたいの?」と聞き返したくならないでしょうか。その原因は「あれこれ盛り込み過ぎ」なことです。

誰かに何かを伝えるときも同様です。主張はひとつに絞り、関係のない情報は取り除きます。言いたいことが複数あるのなら、別の話として区切って伝えましょう。

立場が上の人ほど複数の仕事を抱えて時間がなく、説明を簡潔にしてほしいと思っています。まわりくどい説明をしていると、しびれを切らします。忙しい人が聞き手の場合ほど、シンプルな説明を心がけましょう。

主張をする際には、もうひとつ大事なことがあります。それは「相手にしてほしいこと」を明確に伝えることです。そこで的確に答えられないと、「考え直してからまた来るように」と言われ、せっかくの機会と時間をムダにしてしまいます。

「この新商品の企画を採用してほしい」
「工場改善プロジェクトが1週間遅延するので了解してほしい」
「名古屋支社の売上向上のためのアドバイスがほしい」

このように、相手にしてほしいことが頭の中で具体的になっているでしょうか。説明の前に必ず書き出して確認してみましょう。

聞き手に話を伝えやすい 「PREP法」

論点や主張をはっきりさせたら、次はそれをもとに話を組み立てます。わかりやすい説明のためにぜひオススメしたいのが、「PREP法」です。

①主張(Point)→②根拠(Reason)→③具体例(Example)→④主張(Point)の頭文字を取ったのが名前の由来です。

使い方は、これまでに述べてきた「主張と根拠」の考え方に「具体例」を追加し、最後にまた「主張」を繰り返して終わる、というものです。一例として「良いアイデアを出すには?」という論点で短い例を挙げてみます。

①主張:良いアイデアを出すには「引き算」の発想が有効です。
②根拠:なぜなら、引き算によるヒット商品が最近増えているからです。
③具体例:たとえば、シャンプーやひげそりを引いたQBハウスや、保温機能を引いた電気ケトルがヒットしています。
④主張:だから、良いアイデアを出すには「引き算」の発想を使ってみましょう。

このように、PREP法を使うと内容が整理され、聞き手に伝わりやすくなります。時間がない場合には主張と根拠だけ述べて終わることもありますが、可能であればやはり具体例やエピソードがあったほうが話はわかりやすくなります。

主張や根拠は抽象的な内容になりがちです。自分の主張を取り入れてもらうためには、より効果的な具体例を提示して、聞き手の理解を深める必要があります。人間は具体的に想像しやすいことのほうが、理解もしやすく記憶にも残るのです。

たとえば、「営業部では業績が低迷しています」と聞いたらどう感じるでしょうか。おそらく「大変そうだなあ」くらいの印象になると思います。

しかし、「営業部では業績が前年度比30%ダウンと低迷しており、創業以来最悪の数値です」といった具体的なデータがあったらいかがでしょうか。

「部内では責任の押しつけ合いが発生し、険悪な雰囲気になっています。ベテラン営業マンの加藤さんなどは嫌気が差して転職を考え始めているそうです」といった生々しいエピソードがあったらいかがでしょうか。

「これはマズい。何とかしなければ」と情報の受け取り方が大きく変わると思います。

「声に出す」ことで自分の理解度を確認できる

講演や研修の仕事をする際、必ずその内容を実際に声に出して確認することの目的は、スピーチの練習や所要時間の確認ももちろんありますが、特に大きいのは「思考整理ができているかの確認」です。

不思議なことですが、自分の中で理解できていると思っていても、実際に口に出してみたり、人に話してみるとうまく説明できないことがよくあるのです。話す内容を口に出して一文字ずつ追っていくことで、目や頭だけでざっと読み流していたときには気づけなかった問題点に気づけるからなのかもしれません。

リハーサルはひとりで行っても構いませんが、聞いてくれる相手がいるとさらに良いでしょう。聞き手は会社の人でなくとも、ご家族や友人でも結構です。専門的な話はわからないかもしれませんが、話がわかりやすいかどうかくらいは答えられますし、やはり人がいると緊張感が生まれます。

自分の中でわかっていないものを、人にわかってもらうことはできません。皆さんは本番ではなく、リハーサルで問題点に気がつけるようになりましょう。

次に、相手に伝える際に避けたい言葉遣いや表現を説明します。まずは「言い切り」についてです。不確かな情報を話すときは、「~と考えられます」「~だそうです」といった言い方をします。それ自体は良いのですが、これを何度も繰り返していると、自信のない印象を与えます。

また、説明をする際に、うまく話がまとまらず、自分でもわけがわからなくなって「要は私の言いたいことは」と強引にまとめようとする方を時々見かけます。しかし、これでは話の流れが理解できません。言うまでもなく、事前の整理不足が原因です。

事前に内容を口に出してみて、本当に自分の考えが整理できているかをチェックしておきましょう。プレゼンにおいて「要は」が出てきてしまうようなら、うまく思考整理できていないのだと考えてください。

井上龍司(いのうえ・りゅうじ)
1976年生まれ。東京音楽大学を中退後、慶應義塾大学環境情報学部を卒業。 外資系コンサルティング会社であるプライスウォーターハウスクーパース(現在はIBMにより買収)に入社。以後、自動車メーカー、総合商社、都市銀行、生命保険会 社など各業界の大手企業における戦略策定や業務改善、システム導入などのコンサルティング業務に長年にわたり従事。現在は、外資系金融機関において業務改善、システム開発などのプロジェクト管理に携わっている。一方で中小企業診断士の資格も有し、これまで小売店や理髪店、飲食店などのコンサル ティングや人材育成にも携わる。コンサルティングの仕事を通じて、仕事のスピードアップや品質の向上をもたらす「思考整理」の威力に気づき、その技術を習得し活用している。

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