タスクを管理するという基本的な使い方以外に、手帳は「頭の中を整理する」「頭の中のアイデアを組み合わせる」という作業を行うことができます。手帳の一部をメモ部分と割り切り、混乱した頭を整理し、新たなビジネス提案に利用しましょう。

(本記事は、伊庭 正康氏の著書『 会社では教えてもらえない 仕事が速い人の手帳・メモのキホン 』すばる舎(2016年11月22日)の中から一部を抜粋・編集しています)

ビジネスマンは、記憶力に頼ってはいけない

手帳,ビジネス
(画像=Webサイトより)

さて白状すると、私は記憶力が悪いほうで、名前を覚えるのも苦手だし、昨日食べたものすら考えないと出てこない。ホント、自分でも大丈夫か、と思うほど。

ただ、仕事となると話は別。執筆、研修、講演、商談……。おおむね、常に20個くらいの仕事が同時並行で走っているのですが、言ったことは忘れないし、先の見通しも万全です。相手が忘れていることも覚えています。

種明かしをしましょう。何でもかんでも手帳に書く。それだけです。格好良く言えば、手帳に記憶をアウトソースしている。これだけでも、会話で出た数字をミリ単位、分単位で覚えています。誰が何を言ったのかも記録しているので、後で相手が違うことを言った場合でも、訂正することができます。

「では、来月の中頃までには、よろしくお願いします」
「2ヶ月前のミーティングでは、今月中とおっしゃっていましたが、大丈夫ですか?」

これも、手帳にメモをしていただけのこと。記憶力がいいのではありません。会議などで、メモを取っていない人を見ると、ちょっとマズイな、と思います。本当に記憶なんてアテになりません。エビングハウスの忘却曲線を胸に刻んでおくといいでしょう。これはドイツの心理学者エビングハウスが発見した論理で、人間は記憶したことを20分後に42%、1時間後に56%、1日後に74%、1週間後には77%忘れてしまうというのです。

それが脳の限界なのです。まず、記憶力をあてにしないことです。
複数の仕事を動かす際は、小さなことこそ、覚えておかねばなりません。どんなことでもメモをとっておきましょう。どこに書いたかを忘れないよう書く場所を決めておけば、殴り書きでも大丈夫。とにかく記憶には頼らないことです。

クリエイティブな仕事は「掛け合わせ」から始まる

あなたは次々とアイデアが浮かぶほうですか? もし、そうではないとしても安心を。ある方法を使えば、アイデアを無尽蔵に生み出すことができるからです。

アイデアマンになるために、特殊な能力はまったくいりません。ある発想とは、「アレ、いいね。掛け合わせたら、どうなるだろう」と掛け合わせを考えることです。

アイデアの権威ジェームス・W・ヤング氏は著書『アイデアのつくり方』のなかで、こう言っています。「アイデアは古い要素の新しい組み合わせであり、それ以上でもそれ以下でもない」と。

また、希代のアイデアマンと言われた故スティーブ・ジョブズも、こう言っています。「優れた芸術家はまねをし、偉大な芸術家は盗む、とピカソは言った。だから、すごいと思ってきた様々なアイデアをいつも盗んできた」と。

かなり直接的な表現ですが、たしかに、iPhone、iPad、またそのなかのアプリのアイコンの角がない四角いデザインは、スティーブ・ジョブズが、日本でたまたま見た陶器の形からインスパイアされたものだと言われています。

話が長くなりました。だから、こうしてみてください。アイデアが必要なとき、手帳のフリースペースを使って、「いいじゃんアレ」と思うことを書いてみて、それを掛け合わせるとどんなことができるか、と考えてみてください。

たとえば、あなたが飲食店に勤めていたとしましょう。パートの募集をしてもなかなか応募がない状況です。アピールできることがないことに悩むあなたは、手帳のフリースペースに書きためていた「アレ、いいな」のなかから「料理教室が活況」をピックアップします。そして「パート募集」とそれを掛け合わせます。すると、こうなりました。

「調理長の『料理教室付きパート』の募集!」と。

料理教室といっても、投資はゼロ。まかない(従業員用の食事)を調理する時間を「料理教室」にしてしまう方法です。ただ掛け合わせただけのアイデアですが、これは主婦(主夫)にウケること間違いなしでしょう。たくさんの応募がありそうです。

さて、結論です。

「アレ、いいじゃん」と思ったことは日常的に手帳に書き込む習慣をつけましょう。そして、アイデアがほしいときは「掛け合わせると何ができるか」という視点で、良さそうなものを検討する。その瞬間に、あなたにはスティーブ・ジョブズのようなアイデアマンの発想法が手に入ります。

手帳に書き込むことで、頭を整理する

きっとあなたもあるのではないでしょうか。なかなか人に言えない「しんどい」日々を過ごしたことが。「しんどい」ことをひとりで抱え込んでしまうと、どうしてもリズムが狂い出し、さらにしんどくなります。

自分のコンディションは自分で守る。これは社会人として、とても重要なことです。ストレスやプレッシャーをうまくかわす、とっておきの方法を紹介します。

まず、「しんどいな」と思ったら、こうしてみてください。自分の感情を思いつくままに、手帳のフリーページに「今の気持ち」として書きまくる、と。

私はどちらかというと楽観的なほうなのですが、それでも人並みに幾度となく「しんどい」と思うことがありました。そのときのメモにこんな文章が残っています。

「味方はいないと思った方がラク」
「期待するから、しんどくなる。ならば、最初から期待しないこと」

今振り返ると、バカすぎて笑いが出ます。少なくとも普段の私は、そんなことを1ミリも思っていません。まあ、たしかにそのときは本当にツラかったのですが、強いストレスを受けると、人はおかしな感情に陥ることがよくわかります。

愚痴を言う相手がいればいいのですが、実際はその瞬間にそんな相手が目の前にいない場合がほとんどです。だからと言って、無防備にSNSやブログで書くなんて愚の骨頂。必ず後悔することになります。

そんなときは、手帳にこっそり書き(吐き)出してみてください。書くことの効果はふたつ。

(1)書けば吐き出せるので、スカッとする(その瞬間の効果)
(2) 後で見返すと、そのときにはほとんどの悩みは解決している。ほとんど忘れていたりするので、改めて「ストレスなんて、たいしたことない」と再確認できる。

特に②は、ストレスを客観視できるようになります。この繰り返しのなかで、「ほとんどのことは、たいしたことない」と思えるしなやかさが自分の中に醸成されます。

伊庭 正康
1991年リクルートグループ入社。営業としては致命的となる人見知りを4万件を超える訪問活動を通じ克服。リクルート社においても珍しいとされるプレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰4回を受賞、累計表彰回数は40回以上。その後、営業部長、(株)フロムエーキャリアの代表取締役を歴任。2011年、(株)らしさラボを設立。営業リーダー、営業マンのパフォーマンスを飛躍的に向上させるオリジナルの手法(研修+コーチング)がリーディングカンパニーの目に留まり、年間260回の営業研修、営業リーダー研修、コーチング、講演を行っている。リピート率は91%。また、ストレスコーピングコーチとして、ビジネスパーソンのメンタルタフネス強化の支援も行っている。近著には、『苦手な人がいなくなる(中経出版)』『強いチームをつくる!リーダーの心得(明日香出版社)』など多数。その活動は、日本経済新聞、日経ビジネス、など多数のメディアでも紹介される。

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