前週(9/4〜9/8)の日本株は、地政学リスクの高まりと米ハリケーン被害拡大から円高が進行したことを嫌気して大幅反落、日経平均株価の週間の引け値は1万9274円82銭と前週末比416円65銭(2.1%)安となった。

北朝鮮は8月29日に日本領空を侵犯するミサイルを発射、9月3日には核実験を断行、有事の円高、株安が進行した。米朝関係は9月9日の北朝鮮の独立記念日、9月11日の米国の同時多発テロの日など特別な日を控えて緊迫度を増している。

米国には相次いで大型ハリケーンが上陸、被害は過去最大級のレベルに達する見込み。エネルギー産業や住宅が大打撃を受けており、米景気への影響は必至だ。FRBの利上げ観測が後退、米長期債利回りは一時2.01%とトランプラリー以来の最低水準を付けた。日米金利差縮小から円高が進み、8日にはドル円が昨年11月以来10ヶ月ぶりとなる107円台に下落した。

もっとも、107円台の円高にしては日経平均は下げ渋っている。ドル円が前回107円台だったのは17年11月15日。同日の日経平均は1万7600円台だった。現在の日経平均は約1700円高い水準だ。

日本株が日銀のETF買いで支えられているのと、今回の円高はユーロ高が主導しているためだろう。日銀は先週、739億円のETF買いを3日間発動した。円高による日経平均の下方感応度は低下している。日本のファンダメンタルズがミクロ、マクロとも良好だ。すでに機関投資家は地政学リスクから日本株のウェイトをある程度下げており、さらに売り込む余地は少ないと見ている。

仮に日経平均が1万9000円を割ったとしても、米朝の軍事衝突が起きない限り日柄的には底値固めの展開に入り、リバウンドへの材料待ちの展開を予想する。

前週(9/4〜9/8)の振り返り

株式展望
(写真=PIXTA)

4日の日経平均株価は4営業日ぶりに反落、前週末比183円22銭(0.9%)安の1万9508円25銭で引けた。3日に北朝鮮が核実験を断行した。午後には、北朝鮮が弾道ミサイル発射準備と報道されたことで、有事の円買いが一時109円台前半まで強まった。日経平均は一時212円安で1万9500円の節目を下回った。午後から日銀のETF買いが739億円入ったので下げ幅を縮小して引けたが、東証の9割の銘柄が下げる全面安だった。

5日の日経平均は続落、引け値は前日比122円44銭(0.6%)安の1万9385円81銭だった。米国がレイバーデーの祝日で休場なため、前日のリスクオフの流れを引き継ぎ、日経平均は寄り後に下げ幅を広げた。本日もほぼ全面安だったが、午後から日銀のETF買い739億円が連日で入った。今まで堅調だった新興市場などの中小型株の売りが厳しく、マザーズ指数は4.5%安、ジャスダック平均は2.0%安と日経の下げを大きく上回った。

6日の日経平均は3日続落、引け値は前日比27円84銭(0.1%)安の1万9357円97銭だった。連休明けのNYダウが234ドル安と大幅安だったため、日経の売りも継続し一時131円安の1万9254円とザラ場では4カ月ぶりの安値を付けた。午後に日銀が3日連続のETF買い739億円が入り、午後に下げ幅を縮小した。

7日の日経平均株価は4日ぶりに小幅反発、前日比38円55銭(0.2%)高の1万9396円52銭で引けた。NY株は反発。懸念材料の一つであった米債務上限引き上げの延期問題が、ハリケーン被害の復興を支援する補正予算とともにパッケージで採決出来る見通しとなったことが支援材料だった。日経平均も一時124円高まであったがショートカバーが中心で、ECB定例理事会を控えて上値を買い上がる向きは少なく上げ幅を縮小して引けた。

8日の日経平均は反落、前日比121円70銭(0.6%)安の1万9274円82銭で引けた。4月28日以来4カ月半ぶりの安値だった。注目のECB定例理事会では、ユーロ圏の成長率見通しを上方修正、テーパリングの議論は10月に先送りした。ドラギ総裁の記者会見後、ユーロ高・ドル安が再燃した。ドル円も16年11月以来10ヶ月ぶりの107円台を付けた。日本時間の午後にメキシコで大地震が発生したことも有事の円高要因となった。

先週の海外動向を振り返る

米国では、8月下旬の「ハービー」に続く「イルマ」など複数の大型ハリケーンが発生している。9日の米国株はハリケーンの経済への影響を見極めたいことから模様眺め気分が強く、NYダウは前日比13ドル高の1万9274ドルで引けた。週間では前週比189ドル(0.9%)安と3週間ぶりに下落した。

金曜日の日本時間で107円台に入ったドル円は一時107円32銭の安値をつけた。週末とあって利益確定のドルの買い戻しも入り、NY為替市場の引けは107円90銭と東京時間の引けから15銭円安で引けている。

一段の円高の進行がなかったことで日経平均先物の夜間取引は1万9160円と先週末の大阪市場の引け比20円高だった。

「9/11〜9/15」の株式展望

今週の日経平均のメインシナリオは、1万9000円から1万9570円でのレンジを想定している。有事の円高が続く限り本格的な日本株買いは期待出来そうもない。ただ、すでに日本株のポジション整理はかなり進行している。何かのきっかけで、地政学リスクが好転すれば一気にショートカバーが入る可能性があると見ている。

外国人は日本株の現物だけでも過去6週間連続売り越しで約8500億円売った。7日に東証が発表した8月5週(8/28ー9/1)の売買動向では、外国人は現物は614億円と6週連続の売り越しだったが、先物は7週間ぶりに1542億円の買い越しに転じた。その結果、現物先物合計では929億円と7週間ぶりに買い越しだった。現物の売り越し幅も縮小してきている。

大きく売ったのは個人投資家。現先合計で1788億円、現物は860億円、先物は927億円を売り越した。8月5週に売ったのは外国人でなく個人投資家だった。

地政学リスクを抜きにすれば、日本はマクロ経済も企業業績のミクロも好調だ。4〜6月の法人企業統計では、全産業の経常利益は22兆3900億円の22.6%増と過去最高になった。設備投資は1.5%増と3四半期連続で増加した。法人企業統計の経常利益と日本株の相関関係は高い。日経平均のPERは13倍台と過去のレンジの下限にありバリュエーション的にも割高感は少ない。

テクニカルでは、下値のサポートはボリンジャー2αの1万9144円、心理的抵抗戦である1万9000円、ここを抜ければ100日移動平均の19737円がターゲット。上値のレジスタンスは、25日移動平均線である1万9570円。これを抜ければ1万9800円だろう。

今週の重要なイベントは、日本では安倍首相が13日からインド訪問(15日まで)を予定している。安全保障、新幹線の建設などについて論議する予定。

海外では、9日に北朝鮮建国記念日、10日にはRCEP閣僚会合@フィリピン、12日にはアップルの新製品発表会でiPhone8が発表される見込み。12日からは、米携帯見本市(14日まで)、フランクフルト国際自動車ショー(24日まで)、国連総会(25日まで)も予定されている。13日には国際オリンピック委員会総会があり、24年パリ、28年ロスが決定される見込み。その他9月には、20〜21日の日銀決定会合、9月24日のドイツ総選挙、25〜26日の米FOMCなど重要イベントが控えている。

経済指標では、日本では11日の7月機械受注、13日の7-9月法人企業景気予測調査、14日の8月の首都圏新規マンション販売などが注目される。海外では13日に米8月生産者物価指数、14日に米8月消費者物価指数、中国8月小売売上、固定資産投資、鉱工業生産、15日に米8月小売売上高、9月NY連銀製造業景気指数、9月ミシガン大学消費者マインド指数が注目される。(ZUU online 編集部)