2009年に国内で絶版になったトヨタ・ハイラックスが、タイからの輸入という形で13年ぶりに復活する。ランドクルーザーとともにトヨタのヘビーデューティー4WDの歴史を築いたハイラックスは、リバイバルヒットとなるだろうか。

導入はピックアップトラックのダブルキャブのみ

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(画像=TOYOTA Webサイトより)

今回導入されるのは、4ドア5人乗りのキャビンと屋根の無い荷台を組み合わせたダブルキャブのピックアップトラックとなる予定だ。北米や東南アジアの新興国では今でも多大な人気を誇るピックアップトラックだが、ハイラックスと日産ダットラが絶版になって以降、日本ではほとんど見かけなくなった。

SUVでは積めないほど長く大きな荷物や、泥などで汚れた荷物を運ぶには便利なピックアップトラックだが、雨や雪の多い日本では荷物が濡れる。商用車でもパネルバンが主流で、開放型の荷台の小型トラックは用途が絞られ需要も少ない。バブル期に一世を風靡したSUVのハイラックスサーフではなく、国内での需要が少ないピックアップトラックを、わざわざ導入するのはなぜなのか?

頑丈なボディーと悪路に強い4WD性能が魅力

ハイラックスはSUVで多く採用されるフルタイム4WDではなく、悪条件でも走破性能の高い後輪駆動ベースのパートタイム4WDを採用。ボディーは梯子状のラダーフレームを使い、モノコックボディの乗用車をベースに作られたSUVよりも頑丈だ。サスペンションの支持剛性が高いため、悪路で足回りをぶつけても簡単に走行不能にはならない。

頑強なボディーと駆動力の高い4WDのおかげで、トーイング(けん引)能力は3500kg(輸出仕様)もある。日本ではなじみの薄い使い方だが、重量のあるキャンピングトレーラーやボートトレーラーをトーイングしてもまったく問題はない。けん引免許が不要な750kg以下のトーイングはSUVや普通車でも可能だか、3tを超える重量を牽引できる国内の現行モデルはランクルとパジェロぐらいしかない。

ニッチ市場ほど根強い需要

トヨタにはヘビーデューティー4WDのランクルがあり、ハイラックスサーフが廃止された際に統合されたランクルプラドもある。ランクルシリーズには無いピックアップトラックを導入するのは、カニバリズムを避ける意味もあるだろう。価格も、中心価格帯が400万円台のランクルプラドより安価な320万〜390万の予定だ。

また2014年から1年間の期間限定、バンとピックアップの2タイプで販売されたランクル70の再販モデルで、ピックアップが予想通り完売したのもハイラックスの導入を後押しした。

トーイングのヘッド車のニーズだけでなく、マリンレジャーなど本格的なオフロード性能を必要とし、武骨なスタイルを好むユーザーは少なからず存在する。また農場や林業、スキー場など不整地を走る機会が多く、荷台を必要とする商用車としてのニーズもあるだろう。

特殊なモデルだけに購入者は指名買いで、国内ではライバル車も無いので値引きせず販売できる。大量に売れるわけではないが、ビジネスとして損はしないはずだ。

ユーザーの多様化への対応でイメージアップ

ハイラックス導入の背景には、SUVのブームもある。SUVはオンロードメインのモデルがほとんどだが、すそ野が広がったことで本格オフローダーの需要拡大も期待できるだろう。国内では少子化が進み新車販売も落ち込む中、万人受けする基幹モデルの量販にも限界がある。ニッチで大きくはない市場とはいえ、需要を取りこぼしたくないトヨタの思いも感じる。

ビジネス面だけでなく少数ユーザーの声にも耳を傾け、需要に応えるメーカーの姿勢はイメージアップにもつながるだろう。またクルマの本質的な性能で秀でているという点では、スポーツカーと同じく本格オフローダーにも、メーカーのイメージリーダーとなる資質がある。頑丈で信頼性に優れたハイラックスは、トヨタのイメージアップに貢献するはずだ。(ZUU online編集部)