前週(9/11〜9/15)の東京為替市場で円は大幅反落、週末の東京銀行間のインターバンク市場の17時のレートは110円72銭で終え、週間で2円97銭(2.8%)の円安となった。その前の週に円は地政学リスクの高まりで有事の円高により週間で2円44銭(2.2%)の円高となったが、その上げを完全に埋めた。

9月9日の北朝鮮独立記念日を前に北朝鮮がミサイル発射の準備をしているとの報道があり、米国には8月下旬の「ハービー」に続く大型ハリケーン「イルマ」が直撃する懸念があった。世界金融市場のリスクオフのピークとなった9月8日にはNYダウは1万9700ドルまで売られ、米長期債利回りはトランプラリー以降最低となる2.01%まで下げ、ドルは対ユーロで1.2092ドルと2年8カ月ぶり、対円では107円32銭と10ヶ月ぶりの安値をつけた。

ただ、北朝鮮の独立記念日を無事通過、イルマの威力は弱まったことで、週初からリスクオフの巻き戻しで株、債券、ドルの買い戻しが一気に入った。ドル円は14日、15日と海外市場で一時111円台をつけている。12日の国連安保理での北朝鮮の追加制裁も市場のセンチメント改善をサポートした。原案では北朝鮮への原油の供給停止など厳しい制裁も含まれていたが、米国が妥協したことで、中国、ロシアも含む全会一致で採決された。中国、ロシアが賛成したことで北朝鮮の地政学リスクは落ち着くのではないかとの見方が拡がっている。

15日早朝には北朝鮮が日本領空を通過する弾道ミサイルを再発射したが材料視されなかった。多くの金融商品が9月8日に大きく反転しており、典型的なターンラウンド(トレンド変換)と考えられるだけに流れは止まらなかった。

今週は19〜20日の米FOMCが最大のイベント。12月利上げに対してタカ派的な発言が出た場合はドル高・円安が加速する可能性がある。米経済指標は予想を上回るものが増え始めている。アトランタ銀が発表しているGDPナウでは7-9月期のGDP予想が9月5日時点では2.8%まで下がっていたが8月ISM非製造業景況指数や小売統計が予想を上回ったことで9月8日には3.0%まで切り上がってきた。

一方で、14日に発表された8月CPIは前月比0.4%上昇と市場予想以上を上回った。FRBの利上げ環境は整いつつある。一時3割程度まで下がっていた12月FOMCでの利上げの確率は、CPIを受けて5割程度まで上昇した。12月利上げの公算が高まれば、日米金利差拡大への期待から、ドル高・円安が進行する可能性が高いだろう。

前週(9/11〜9/15)の振り返り

為替展望
(写真=PIXTA)

11日の東京為替市場で円は大幅反落、東京インターバンクの17時のレートは108円43銭と前週末比68銭の円安となった。

北朝鮮が9日の建国記念日に挑発行為にでなかったこと、米国のハリケーン「イルマ」の勢力が弱まったことから、リスクオフで先週末に売られた株やドルにショートカバーが入った。8日にNY時間で10ヶ月ぶりの円高水準となる107円31銭までつけたドル円は東京時間では108円50銭前後まで大きく戻した。

12日の東京為替市場で円は2日続落、東京市場の17時は109円56銭と前日比1円13銭の円安となった。

リスクオフの買い戻しが継続。NYダウが259ドル高と急騰、米長期債利回りは2.13%台まで上昇した。国連安全保障理事会が北朝鮮への追加制裁を決議したことも市場のセンチメントを改善させた。石油の供給停止など北朝鮮を追い込むような厳しい内容ではなく、中国とロシアも賛成したことで地政学リスクは一旦落ち着くとの見方が強くなった。

13日の東京為替市場で円は3日続落、東京市場の17時のレートは109円95銭と前日比39銭の円安となった。

NY市場では、ムニューシン財務長官が税制改革に前向きな姿勢を示し、NYダウや米長期債利回りが上昇し、ドル円は9月1日以来となる110円台を付けた。もっとも円安は主に海外で進行しており、ドルは日本ではギャップアップしてはじまったものの一日の東京市場でのドル円のレンジは36銭と小動きだった。

14日の東京為替市場で円は4日続落、東京市場の17時は110円42銭と前日比47銭の円安だった。

朝方は円安が110円台73銭まで進行、日経平均も50円を超える上げで続伸していたが、午後に北朝鮮が国連安全保障理事会の制裁に反発する声明を発表すると若干円高に振れた。

15日の東京為替市場で円は5日続落、東京市場の17時は110円72銭と前日比30銭の円安だった。

NY為替市場で、CPIが前月比0.4%増と市場予想を上回ると、ドル円は発表直後に一瞬111円04銭まで上昇したが、その後戻り売りに押されて往って来いとなった。朝7時頃に北朝鮮が日本領空を横切る弾道ミサイルを発射した。110円台前半だったドル円は有事の円高で一瞬109円55銭まで売られたが、すぐに110円台に戻し反応は限定的だった。むしろ日経平均が102円高の1万9909円で引け、8月8日以来の高値となったことで、ドル円は110円77銭までジリ高となった。

先週の海外動向を振り返る

15日のNYダウは6日続伸、64ドル高の2万2268ドルと過去最高値を更新した。トランプ大統領が移民問題や国境税問題で野党の民主党に歩み寄り合意が近づいているとの報道があり、見返りに税制改革の協議が進展し、法人減税への期待が高まった。

NYダウは週間では大幅反騰し470ドル高と週間上げ幅では今年最大となった。円は欧州時間で一時111円33銭まで売られ、7月28日以来の円安をつけた。英国中銀行やECBの高官からは利上げに前向きな発言が相次ぎ、英ポンドとユーロが急騰し、クロスレートで円が売られた。NY時間でもその流れを引き継ぎ、111円24銭の円の安値があって110円90銭で引けており、東京時間の安値110円77銭からさらに円安が進行している。

「9/19〜9/22」の為替展望

今週のドル円のメインシナリオは、110円55銭から112円19銭でのレンジを想定している。

米FRBが19〜20日にFOMCを開催する。政策は据置がコンセンサス。10月から始めるとされる保有資産の圧縮や12月の追加利上げについての方向性がポイント。資産圧縮、利上げに対するタカ派的な発言がでるなら、円安が進み、日本株が一段高となる可能性が高い。利上げに対してハト派的だった場合は、円高となり日本株安が再燃することもあり得る。ただ今の株式市場はいいとこ取りをしており、ハト派の場合は金融緩和が続くことでNY株はいずれにしても高いというパターンもあり得そうだ。

テクニカル的では、90日移動平均、50日移動平均がともに110円55銭どころにあり、ここがサポートとなる。円安が進んだ場合は7月27日の円の安値112円19銭がレジスタンスだろう。

今週のイベントは、日本では19日は敬老の日で休日。20〜21日が日銀決定会合。コンセンサスは現状維持。21日には黒田総裁の記者会見。

海外では19〜20日の米FOMC。コンセンサスは現状維持。20日にはイエレン議長が記者会見。19〜25日まで国連総会。19日にトランプ大統領、20日に安倍首相、21日に韓国の文大統領、22日に北朝鮮のリ・ヨンホ外相が演説予定。21日には米日韓首脳会談を予定している。22日には英メイ首相のEU離脱方針に関する演説、24日にはドイツ総選挙。

経済指標は、日本では20日に8月コンビニ売り上げ、8月貿易収支、8月訪日外客数、21日に8月百貨店売上、スーパー売上がある。海外では19日に米8月住宅着工、21日に米フィラデルフィア連銀製造業景況感指数、8月CB景気先行総合指数、22日にユーロ圏9月製造業PMIがある。FOMC直後の米景況感を示す指標にも注目が集まりそうだ。(ZUU online 編集部)