「家賃は手取り月収の3分の1まで」、家計管理をする際の目安としてよくアドバイスされる内容だ。しかし地域によって家賃には大きな差があるため「都内だと厳しい」といった声も多いのが現実だ。
そして、東京都内の物件であれば高くならざるを得ない。ここでは、「高い家賃」と上手く付き合っていく、健全な家計のラインを考えていきたい。
月収「3分の1」 都内で借りられる物件は?
手取り月収の3分の1とはいくらだろうか。年収600万円の独身会社員なら、手取りで月約40万円、その3分の1は、約13万円になる。これで借りられる都内の物件は、都心部(千代田区、中央区、港区)なら20~30平方メートルのワンルームマンションが相場である。世帯年収が1200万円の共働き世帯であれば、手取りで月約80万円、3分の1は約26万円だ。予算がこれだけあれば、50平方メートル前後のファミリータイプのマンションを借りることもできる。ただし、広めの部屋を希望するなら、駅から遠かったり、築年数が30年以上になったりなど、何かしら我慢は必要になる。
そして実際には、家賃を月収の3分の1に設定しても、生活費全般のコストが都内では高いことや、子供がいる世帯は教育費も捻出しなければならないため、家計は厳しくなりがち。毎月の収支が赤字にならないようにするだけで精一杯になってしまう。さらに将来の住宅購入を視野にいれるのであれば、できるだけ家賃は低くおさえて貯蓄を増やしていきたいところだ。
しかし都内でこれよりも家賃を安く抑えようとしても、なかなか希望物件は見つかりにくいのが現実だ。古いだけならまだしも、狭すぎると充分な家財道具を収納するスペースすら確保できなくなってしまう。また、幹線道路や鉄道線路の近くなどで騒音がひどければ、ゆっくり休むこともできない。風通しや日当たりが極端に悪ければ、健康にも悪影響が出かねないだろう。
家賃が安くても、休息が充分にとれず病気で働けなかったり、医療費がかかったりすれば、トータルでは高くつくことになってしまう。
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家賃だけでなく、家計全体のバランスをとる
そこでアドバイスしたいのが、家賃だけにフォーカスするのではなく、家賃、光熱費、通信費などを合計した基本の生活費を、手取り月収の2分の1に納めるようにすると全体のバランスがとりやすくなるだろう。
家賃だけを節約しようとすると、どうしても無理が出る。確かに、家賃は家計の中で大きな出費だし、入居したら家賃の変更はまずありえない。それだけに、新たに賃貸契約をする時には広く情報収集をして、できるだけ有利な条件にするよう、誰しも細心の注意をはらっている。
しかし、賃貸契約を結んだ後にも、家計のためにできることはある。更新のタイミングになったら、周辺地域の物件の家賃をリサーチしてみよう。相場より高ければ、交渉の余地がある。また、経年劣化により水回りなどの設備に不具合が出てくることもある。そんな時は家賃の値下げができないか、まずは確認だけでもしてみるとよいだろう。
固定費を見直すことで基本生活費を抑える
光熱費や通信費を見直すことで、基本生活費を抑えることができる。たとえば、携帯電話を格安スマホにして通信費をおさえたら、月に5000円以上の節約になることも珍しくない。電気代は省エネ家電に切り替えると節電効果が高くなる。
エアコンや冷蔵庫など、大型のものは買い換えたほうが得になるケースも多いので、長年使っている家電があれば、チェックをしてみよう。環境省の省エネ製品買換ナビゲーションサイト、「しんきゅうさん」は、エアコン、冷蔵庫、テレビ、温水洗浄便座、照明器具などの家電製品の年間消費電力や電気代を比較することができる。家電は毎日使うものなので、買換えの効果がずっと続くのも魅力だ。
都内在住にこだわらない暮らしもある
通勤の便利の良さなど、都内に暮らすメリットは少なくないが、あえて都内在住にこだわらない暮らしもある。
小田原や宇都宮などに広々とした住宅を構え、新幹線で都心に通勤する人たちがその一例だ。会社員であれば通勤定期券の費用は会社が負担しているだろう。金額の上限など勤務先によってルールが異なるが、1ヶ月の定期券代の会社負担上限額によっては、小田原や宇都宮は充分通勤圏内だ。
小田原なら東海道新幹線こだまで東京まで3駅、約35分。1ヶ月の定期券は7万2580円だ。100平方メートルの物件が10万円前後で借りられる地域なので、広々とした環境で子育てをしたいといった希望もかなえられる。勤務先の負担する定期券代が、新幹線の場合でも全額ならば助かるが、もしも在来線のみだった場合は1ヶ月3万9320円なので、新幹線との差額は3万3260円。差額を自分で負担したとしても、家賃の安さでカバーできると考えられれば選択肢のひとつとして検討してみてもよいだろう。食費などの物価も都内とくらべて安く、新幹線通勤なら電車のラッシュアワーとも無縁であることも無視できないメリットと言える。
マネープランは10年、20年先まで見通すことが大切
お金をどのように使うか、それはその人の価値観そのものだ。どうしても住みたい都心の物件があれば、家賃だけで手取り月収の2分の1を使う人もいる。一方で、小田原などの地方都市に住居を構え、都内に通勤する人もいる。
どちらが正解というものではないが、目先のことにとらわれず、10年、20年先に自分や家族がどのような暮らしをしていたいかを見据えたマネープランを考えることで、自分だけの「家賃のベストバランス」が実現できるだろう。
タケイ啓子
ファイナンシャルプランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。
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