まず理解すべきは「段取りの基本」です。段取りをよくするといっても、何から始めたらいいか分からないという人も多いかと思いますが、段取りにはコツがあるのです。「手段の目的化の罠」や「早めにちょくちょく確認」などのコツで業務スピードを速めていきましょう。

(本記事は、伊庭 正康氏の著書『 会社では教えてもらえない 残業ゼロの人の段取りのキホン 』すばる舎(2017年7月11日)の中から一部を抜粋・編集しています)

「課題は何?」とまず考える

段取りのキホン,書籍
(画像=Webサイトより)

やるべきことを絞るべきと誰もが言いますが、上手に絞れないから悩みます。やることを絞れない原因の1つが、「課題を設定していない」ことです。課題とは、目的を達成するための鍵のこと。

以下を見てください。これは課題から対策を考える時のプロセスです。

STEP1:「課題」を絞る
STEP2:「選択肢」を出す
STEP3:「対策」を決める

この「STEP1」が抜けているわけです。職場の残業を減らすシーンで例えてみましょう。あなたなら、何から着手しますか?いきなり、「ノー残業デーを導入しよう!」「時間になったら消灯しよう!」と考えると失敗します。

これが「課題を設定せずに、いきなり対策から考える」と言われるものです。成功する人は、事実を正確に把握し、それをふまえて課題から設定します。その上で、選択肢を持ち、基準を決めた上で優先順位を決めます。

あるケースで考えてみましょう。データを見ると、月末に作業が偏っており、月末の残業が問題になっている。だとするなら、課題は「作業を平準化させる(1カ月で平均的にバラす)」ことにあると判断。

課題を出したら、次に解決策をいくつか挙げます。平準化の課題を解決する対策案の候補として、「月に3回の締切を設ける」「ポスターを掲示し意識を高める」「毎週、朝礼で啓蒙する」等を上げたとしましょう。

この時、実行の確実性で「効果の大きさ」を基準に決めると、「月に3回の締切を設ける」となるわけです。これこそが、課題を設定し、効果的な対策を打ち出す流れです。

その次に対策。この順番でキレイに整う

実は、この課題設定に苦手意識を持つ人は少なくありません。もし、そう思われたなら、こう考えてみてください。

課題設定は、まず「あなたの直感」で考えてみる。ただし、思い込みではなく、「現場」を知ること。事実を正確に把握していないと、良い課題は生まれません。

この例として、ダイエーの代表取締役社長、日本マイクロソフトの代表執行兼COO、パナソニックの専務役員などを歴任する名経営者の樋口泰行氏は、著書『僕がプロ経営者になれた理由』(日本経済新聞出版社)の中でこう言っています。

「日本マイクロソフトの法人営業の課題は直感で、お客様への関心を高めること だと考え、それを確かめる行脚に出た」と。なので、直感を高めるためにも、現場のリアルを知っておきましょう。具体的には、従業員、お客様等の声を知ること。現場に関心を持つことが課題設定の精度を高める鍵となります。

まとめましょう。まず対策を講ずる際は、「課題」を設定してみてください。そのためにも、現場のリアルに関心を持っておきましょう。最初は難しく感じるかもしれませんが、そうすることで、自信を持ってやるべきことを絞れるようになります。

求められる役割を期待以上に果たす

「自分自身のやるべきことが、いまいち定まっていない」と考える人は少なくありません。時間通りに来て、一生懸命に頑張り、また明日も時間通りに来る、その繰り返し。

上司からは、「やりたいことは何?」と聞かれたりもするけれど、うまく答えられない。あまりにしつこく聞かれるので、「やりたいことがないとダメなのか!」と言い返したくなったりもする……。そんなことはないですか?

そりゃ、「やりたいこと」が明確なほうが、短時間で成果を出しやすくなります。でも、だからと言って、諦める必要は全くありません。

オススメの方法があります。まずは、「人事評価を上げることにトライする」のです。えっ、それ……(出世ばかり考えている嫌味な人にならない?)、と思われたかもしれません。でも、まずはこれを第一歩と考えてください。これをクリアした時、次の飛躍が期待できるのです。

説明します。評価を上げるとは、「求められること」に対して、期待以上の成果を出すことを意味します。野球で言えば、先発投手が二ケタ勝利を上げることに躍起になることに等しいわけです。先発投手にはホームランを打って、しかも打率を3割に上げるための努力は不要です。プロとは、求められる役割に応えることが大前提。評価を上げるとは、求められる役割に「応える」レベルではなく、「超える」ことを意味するのです。

その資料、時間をかけるべきところ?

「しなくても良いものを効率良く行うことほどムダなことはない」と言ったのは、経営学の大家、ピーター・ドラッカーでした。この格言の本意は、「手段が目的化」してしまうことへの警鐘。手段が目的化するとは、やること(作業)自体が目的になってしまう現象を言います。「社内の会議資料なのにデザインにこだわりすぎて、残業してしまう」というのは、その典型例。

説明が必要ですよね。これは、「目的を見失っていないか」ということ。この場合、いくらデザインに手間をかけても、効果が変わるわけではありません。でも、一生懸命になればなるほど、そうなってしまいやすいのも事実。

オススメの対策があります。どんな時でも目的思考になれる「呪文」を紹介しましょう。「ここは時間をかけるところではない。なぜなら……」これだけです。このセリフを呪文のように唱えるだけで、目的思考になれるから不思議です。

先日のこと。大学生の息子が、パワーポイントを使って、宿題のレポートを書いていました。どの図を挿入しようかと、フリー素材のサイトを見ながらアレコレと悩んでいたので、この呪文をつぶやくと、どうなるかを提案しました。「ここは時間をかけるところではない。なぜなら……なぜなら、イラストはテーマに関係ないから!」彼は、すぐにフリー素材のサイトを閉じ、箇条書きで済ませました。振り返ると、我々の仕事には、目的に影響しない業務が必ず潜んでいます。

まずは、そのことに気付けるかどうかがポイントです。ぜひ、「呪文」を唱えてみてください。簡単にそのことに気付けるようになれます。

いつも「こうじゃない」と返される……

上司からいつもダメ出しをもらってしまう人にインタビューを重ねる中で、確信を得たことがあります。この人達に共通するキーワードがありました。

「上司に説明するのが面倒」だと言うのです。そこにあるのは「何を言われるかわからない」、もしくは「よけいな仕事が増えそう」、そんなところ。わからないでもないですが、段取り良く仕事を進めるためには、上司の意向を把握することはもちろん、上司の力を借りることは不可欠です。これは、能力ではありません。手順の問題。

そのためにも、上司に説明するのが面倒、と思っている方にトライしていただきたいのが、「早めの段階でちょくちょく報告、相談をしておく」です。白状しますと、私も上司に相談するのが得意ではありませんでした。だから、たくさん失敗をしました。失敗の多くは、「伊庭の言っていることは間違いじゃないけど、今の優先順位を考えるとそうじゃないんだよな」、そんな感じ。

20代だった私は、さらに誤解をしてしまいます。「もっと企画書のページ数を増やして、上司のニーズに応える確率を高めよう」と考えてしまいました。もう、わかりますよね。順序が違いますよね。そう。「上司は何を問題としているのか」を、報告・連絡・相談を通じて把握することが先です。

伊庭正康
1991年リクルートグループ入社。営業職としては致命的な人見知りを4万件を超える訪問活動を通して克服。その後は、プレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰4回、累計40回以上の社内表彰を受けた。営業部長、(株)フロムエーキャリアの代表取締役を歴任。2011年、研修会社(株)らしさラボを設立

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