言うまでもありませんが、時間は有限です。「この1分でいったいないができるのか」ということを細かく切り出していき、無駄な時間をできる限り省くことで、自分に必要な時間を捻出することが出来ます。「なんとなくやっている習慣を疑う」、「手帳に『終了時間』も書く」などのコツを自分のものにしましょう。

(本記事は、伊庭 正康氏の著書『 会社では教えてもらえない 残業ゼロの人の段取りのキホン 』すばる舎(2017年7月11日)の中から一部を抜粋・編集しています)

電車移動の数分も貴重な情報収集の時間

段取りのキホン,書籍
(画像=Webサイトより)

新幹線に乗っていて思うことがあります。状況に応じて、「普通車」と「グリーン車」を使い分けているのですが、気付くのは乗客の過ごし方の違い。グリーン車に乗っている人が偉いというわけではないですし、別にイケている人だとも思いません。ここで言いたいことは、時間の使い方が明らかに違うということだけです。見慣れた「片手にビール一息」「スマホでゲーム」という人が少ないのです。だいたい、PCを立ち上げているか、本を読んでいるか、会社の資料に目を通しているか、それともワインを片手に映画を見ている人か、そんな感じ。彼らにしてみれば、移動時間は、デスクではできないことをするための時間なのでしょう。

本題に移りましょう。そもそも隙間時間は、どこに隠れているのか。そして、その隙間時間に何をするのか。

一例を紹介しましょう。ここで申したいのは、ちょっとした時間もムダにしない姿勢が重要だということ。たとえば、電車での移動中とします。降車までは2分。ボーッと車窓の風景を眺めてしまうのはムダと彼らはとらえ、2分で何ができるかを考えます。

たとえば、観察にあてると決めたとしましょう。すると、「中吊り広告から、何らかの潮流をつかめないだろうか?(ここの私鉄は週刊誌の中吊りがない。なぜだ?)」「スマホを触っている乗客の比率を数えてみよう!(6割か。何しているのかな?)」「本を読んでいる人は、スーツの男性ばかり。なぜだ?」……こんな感じ。

隙間時間を有効に活用する、そのわずか数分をムダにしない姿勢の積み重ねは、時間とともに、大きな差になっていると考えて間違いありません。時間は「ある」ものではなく、「確保する」もの。電車やバスなどの移動中は、頭の整理をする絶好のタイミングです。脳がリラックスしている状態なので、雑念に邪魔されず、落ち着いて頭の整理ができます。ここでの頭の整理が、結果的に残業を減らしてくれたりします。ぜひ活用してください。

段取りのキホン(4)の画像
(画像=本誌より (C) 村山宇希)

毎朝の会議を週2回に減らせないか?

ムダなことをするな、とよく言われますが、こう思うことはないですか?「それが、わかれば苦労しない」と。その気持ち、よくわかります。私は元々、営業マンでした。常に目標達成のプレッシャーを抱えながら、1日20〜 30件を訪問していましたので、訪問を減らすことは「未達成」を意味すると考えていました。さらに夜遅くまでかかって作成した企画書のおかげで、大型契約をいただくこともあり、「何1つムダなことはない」、それが当時の私でした。

でも、目標が翌年には倍になり、その翌年にはその倍になり、そこでようやく気付きました。優先順位をつけないとダメだと。2年で目標は4倍のアップ。同じやり方で頑張るなら、1日40時間かかってしまいます。体がもたないので、やむを得ず、やることを大胆に絞りました。すると、時間内でしっかりと成果が上げられたのです。改めて思いました。どんなことにもムダはない、と思っていました。でも、それは「経験にはムダがない」のことであり、「段取り」については、ムダなことはムダでしかない、と。

さて、話が長くなりました。これは、どんな仕事でも一緒でしょう。ここではムダを見つけるステップを紹介します。

【ムダを見つけるステップ】
STEP1:まずは、思いっきりやってみる(やってみないとムダはわからない)
STEP2:やってみて、「成果に影響しない作業」を探してみる
STEP3:思いきってやめてみる(やめてみないとムダかどうかわからない)

では、STEP1を解説しましょう。絶対にやってはいけないのは、やる前から「ムダ」かどうかを考えることです。よく、新人社員に「やってもムダだから」という人がいますが、順番が違います。大事なことをも、そぎ落としている可能性があるのです。いわゆる「早く仕事をさばく」だけの人になる危険があります。そもそも「さばく」と「段取り」は、似ているようで全く違います。違うのは目的。「さばく」は、速く済ませることであり、「段取り」は効果的に成果を出すこと。「ムダかも」の仮説は大事ですが、まずはやってみないと成果が出るかどうかは、わかりません。

なんとなくやっている習慣こそ疑う

私が研修や講演で紹介している方法なのですが、まずは「リーンスタートアップ」でトライしてみることです。これは、新規事業を立ち上げる際に用いられる技能で、具体的には、アイデアが浮かんだら、理屈や不安は横に置いて「影響のない範囲で小さく実験」をし、その結果を検証してから、「どうするのか」を決める方法です。

私はこの方法で、

  • 事務所への出勤(→改善策:直行直帰の推奨)
  • 朝の会議(→改善策:毎日から週2回に)
  • 会議室に入っての打合せ(→改善策:立ち話、もしくは電話で済ませる)
  • 肉厚な企画書作成(→改善策:多くても4〜5枚まで)を捨てることができました。

やってみてわかることは、なんとなくやっている習慣にこそ、ムダはたくさん潜んでいるということ。悩んだら「リーンスタートアップに従う」と決めれば、それだけでも、大胆な判断ができるようになります。まずはムダなことも含めてやってみることです。

ただ、ムダを判断する期間だけは決めておきましょう。期間はケースバイケースですが、成果の兆しが見えるタイミングであることが条件。その中で、最短で設定をしてみてください。
ここでは、仮に1週間と期間を決めたとしましょう。その間は、上司に理由を説明し許可をもらい、その期間だけは残業しても良しとします(いわゆる投資です)。もし、あなたが新人ではなく、十分な経験があるようなら、そんな実験をせずとも、「今までの努力のすべてが実験」と発想を切り替え、すぐにSTEP2に移行してみてください。

優先順位の「点数」をつけるのは悪くない

STEP2は、「成果に影響しないこと」を見極めるステップ。この実験期間中にやってみたことを書き出します。それらに対して、自分なりに点数をつけると良いでしょう。観点は「やめると成果がどれだけ落ちるか」です。「成果」は今の成果でも良いのですが、長期的な観点も必要なミッションなら、 1年後の成果の影響で考えても良いでしょう。

ここで、1つだけ注意点があります。点数のつけ方です。「やめると不安」は横に置いておくことです。それを言い出すと、やめられなくなります。あくまで、あなたのミッションに対する「成果へのインパクト」で決めます。たとえば、先ほどの私の例ですが、目標は4倍になりました。そうなると、優先順位を考えねばなりません。

  • 1年で10万円のご契約をいただけるお客様
  • 2年で1万円のご契約をいただけるお客様

どちらかをやめる選択をしなければならないわけです。あなたならどちらを選びますか?そうですよね。「2年で1万円のお客様」への優先順位が下がりますよね。だとするなら、訪問先には指定せずに、電話に切り替えようとなるのです。

これがSTEP3。「思いきってやめてみる」ステップです。少しドライに感じられたかもしれません。でも、それは誤解。期待を超える仕事をすれば、それが満足につながります。必要のない時に、必要のない頑張りをすることは、ムダでしかないと考えると間違いないでしょう。必要以上の手間をかけることと、提供価値の大きさは、全く別です。

伊庭正康
1991年リクルートグループ入社。営業職としては致命的な人見知りを4万件を超える訪問活動を通して克服。その後は、プレイヤー部門とマネージャー部門の両部門で年間全国トップ表彰4回、累計40回以上の社内表彰を受けた。営業部長、(株)フロムエーキャリアの代表取締役を歴任。2011年、研修会社(株)らしさラボを設立

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