有効求人倍率が上昇し、失業率が低下するなど求職者側には明るいニュースが増えている。しかし、企業側としては人手不足が続き、働き手の奪い合いも生じ始めている。そんな中、正社員が不足している企業が49.1%と5割近くに達していることがわかった。最も正社員が不足している業種はどこなのだろうか?

3カ月前から3.7ポイント、1年前と比較して7.3ポイント増加

調査を行ったのは帝国データバンク。2017年10月18日〜31日、全国2万3,235社にアンケートを行い、有効回答企業数は1万214社。現在の従業員の過不足状況を尋ねた質問では、正社員が「不足している」と回答した企業は49.1%、5割近くにのぼった。2017年7月に行った同調査から3.7ポイント、2016年10月に行った調査に比べると7.3ポイントも増加しており、過去最高を更新する結果だ。企業の人手不足感はより強まっている。

一方、非正社員について不足していると回答したのは31.9%。適正と回答した企業は61.7%でこちらも過去最高を更新した。不足と回答した企業の割合は前回より2.5ポイント、前々回よりも4.7ポイント増加している。適正と考えている企業の割合は61.7%と6割を超えてはいるが、非正社員に関しても人員不足は起こり始めている。

従業員が不足している上位10業種は?

では、従業員が不足している業種を見ていこう。

順位 業種/2017年10月のポイント(2017年7月時点)
10位 自動車・同部品小売/58.2(55.7)
9位 金融/58.6(54.7)
8位 家電・情報機器小売/59.0(61.5)
7位 電気・ガス・水道・熱供給/60.0(40.0)
6位 再生資源卸売/62.5(58.1)
5位 リース・賃貸/63.0(52.9)
4位 建設/63.5(59.2)
3位 運輸・倉庫/63.7(60.9)
2位 メンテナンス・警備・検査/64.3(56.7)
1位 情報サービス/70.9(60.9

特に正社員が不足しているのが、ソフト受託開発などを行う「情報サービス」だ。不足していると答えた企業の割合は70.9%と7割を超えている。前回から1.2ポイント、1年前となる前々回の調査からは10.0ポイントも増加している。2位の「メンテナンス・警備・検査」2位の「運輸・倉庫」、4位の「建設」、5位の「リース・賃貸」、6位の「再生資源卸売」、7位の「電気・ガス・水道・熱供給」までの上位6業種では6割を超える企業が、正社員が不足していると回答している。

規模別でみていくと、大企業では56.4%が正社員が不足していると回答している。3カ月前に比べると4.6ポイント増加しており、大企業において人手不足感はより強まっていることがわかった。企業規模が小さくなるにつれ、不足と回答する割合は少なくなっており、中小企業で47.2%、小規模では42.2%となった。しかし、どちらも3カ月前と比較して中小企業は3.5ポイント増、小規模企業は3.4ポイント増と、人手不足感はどちらも強まる傾向にある。大手企業が人手不足から中途採用に力を入れていくにつれ、中小企業の人手確保はより難しくなってきている、特に中小企業では人手不足解消のため賃金を上げなくてはいけないが、その分を製品価格に転嫁できず企業経営が圧迫されていく負のスパイラルが起こり始めているとの声も聞かれた。

健全な企業経営には十分な人員確保が欠かせない、しかし、人員確保のために必要となる賃金上昇は企業収益において大きなマイナスとなる。賃金上昇による収益の悪化と、人材確保のバランスをとることが今後は大きな経営課題となるだろう。(ZUU online編集部)