お金は一番大事なものではないかもしれない。で、なにもかもうまくいかないとき、お金は人を助けてくれます。そのお金との正しい付き合い方を知らないせいで苦労している人はとても多い。そんな人に向けたストーリーです。

(本記事は、ボード・シェーファーの著書『マネーという名の犬 12歳からの「お金」入門』飛鳥新社 (2017/10/27)の中から一部を抜粋・編集しています)

マネーという名の犬
(画像=Webサイトより、クリックするとAmazonに飛びます)

白いラブラドール犬、マネー

もうずっと前から、わたしは犬が飼いたいと思っていました。

でも、わたしたち一家は賃貸マンションに住んでいて、大家さんは犬を飼うことを絶対に許してくれませんでした。父が大家さんに掛け合おうとしましたが、むだでした。世の中には、まったく話し合いにならないタイプの人もいるものです。

そのときから、動物を飼えるようにするためにも、家を買ったほうがいいのかなと思うようになりました。

しばらくして、わたしの両親はほんとうに庭つきの家を買いました。わたしは念願の自分の部屋を手に入れ、天にものぼる心地でした。でも、両親はあまりうれしそうではありません。予算よりもかなり高くついてしまったからです。

うちにお金がほとんどなくなってしまったことは、わたしにももちろんわかりました。ですからわたしは、自分の願いごとはしばらく言わずにおこうと決めました。でも、どうしても犬が飼いたくてしかたがありませんでした。

ある日の朝、母が興奮した声でわたしを起こしました。

「キーラ、早く起きて! 家の前にケガをした犬が倒れてるわ」

「何でもかんでもお金しだいだ!」

わたしたちは犬を注意深く車に乗せると、獣医さんに連れていきました。

大きな傷口を縫(ぬ)い、何本か注射を打つと、犬はぐっすりと眠りこんでしまいました。 獣医さんの説明によれば、傷はやっぱりかまれてできたもので、でもすぐに治るだろうとのことでした。獣医さんはこの白い犬のことについても教えてくれました。これはラブラドール犬といって、とてもおとなしく、かしこい犬で、子どもにもやさしいのだそうです。 獣医さんが話しているあいだ、わたしはずっと犬をなでていました。なんて柔らかくて、なんてかわいらしいんでしょう。

家に連れて帰ったときも、犬は眠ったままでした。キッチンに毛布をしいて、その上に犬をそっと寝かせました。わたしは犬から片時も目を離すことができませんでした。

「元気になってくれればいいなあ」

心配にはおよびませんでした。犬はみるみるうちに元気を取り戻しました。でも、ここで大問題が浮かび上がってきました。この犬がどこから来たのか、誰に飼われていたのか、わからなかったのです。

まず父が届け出をし、それから近くの動物保護施設にも電話をかけました。でも、誰も白い犬のことを知りませんでした。

そうしているあいだに、犬はすっかり元気になりました。

ある日、わたしは犬とくたくたになるまで遊びました。それから朝食のテーブルに着くと、両親はまたもお金のことで言い合いをしていました。一番聞きたくない話です。だって、わたしにはちっとも理解できませんし、お金の話をしているときは誰も楽しそうではないからです。

会話が途切れたところで、わたしはもっと大事なことに話題を向けました。

「そもそもこの犬、何て名前なのかな?」

犬の名前を知らなかったことに、わたしたちは突然気づいたのです。

このままではよくありません。犬にだって名前が必要です。わたしは毛布の上で寝ている白い犬を見つめました。そのあいだに、両親はまたお金のことで言い合いを始めていました。父が不意に大きなため息をついて言いました。

「マネー、マネー、マネー……世の中、何でもかんでもお金しだいだ!」すると眠っていた犬が突然起き上がって、父のほうに歩きかけました。

「マネー!」わたしは叫びました。「マネーって呼んだらこっちに来るわ」犬はすぐさまわたしのところへ走ってきました。

「名前は『マネー』がいいわ。この子が自分で選んだんですもの」

わたしは思ったことを言いました。でも母は乗り気ではありません。

不意に走っていなくなったマネー

6週間たっても、マネーがどこから来たのかわからないままでした。

両親もすっかりマネーに慣れていました。いつか飼い主がやってきて、マネーを連れていってしまうんじゃないかという不安はいつもどこかにありましたが、こうしてマネーはわたしたちと暮らすことになりました。マネーとわたしが親友になったことは言うまでもありません。

事件が起こったのは、半年ほどたったころのこと。マネーは、ほんとうに信じられないくらいかわいらしくて、がまん強く、かしこい犬でした。

日曜日になると、わたしたちの住む町を流れる大きな川のほとりをみんなでよく散歩しました。その大きな川は、ほんのちょっぴりですが、海のように見えるのです。とくに橋の下のところは流れがとても激しくなっていて、危険でした。

午後の散歩に出かけると、マネーが不意に走っていなくなってしまったのです。わたしたちはマネーの名前を呼びながら、必死で探しました。

すると突然、マネーが川のなかを漂っているのが目に入りました。どうやって川に飛び込んだのかは、いまでもわかりません。この場所で川に入ってはいけないことは、マネーも知っていたのですから。

マネーを助けなきゃ! わたしは川に飛び込みました。落ち着いて考えている暇などなかったのです。すべてはあっという間でした。わたしは水を飲みこんでパニックになりました。

目の前が真っ暗になりました。そのあとどうなったのかは覚えていません。

あとから両親が話してくれたところによると、わたしは、マネーがからまっていたのと同じ網に引っかかったのだそうです。さいわいなことに水上警察のボートが近くを通りかかりました。水上警察の人たちはわたしとマネーをほぼ同時に水から引きあげてくれました。

「ずっと昔、犬はみんな、少しばかり話せたんだよ」

彼らは手をつくして、わたしの息を吹き返させてくれました。

さいわいにも、病院には数時間いるだけですみましたが、まだ体が弱っていて、数日はベッドで寝ていなくてはなりませんでした。

マネーはずっと早く元気になりましたが、わたしのベッドのそばから離れようとしませんでした。

マネーは何時間も、やさしく、感謝の気持ちをこめてわたしを見つめていました。でも、このあとどんなことが起こるのか、もちろんわたしはまだちっとも知りませんでした。

そうこうするあいだにわたしは12歳になっていました。事態は何も変わっていません。両親は相変わらず、「不(ふ)況(きょう)」というものに苦しんでいました。つまり、うちがお金に困っているのは世のなか全体の経済状況のせいだと言うのです。

「でも、友達のモニカの家はどうしてどんどんお金持ちになっているの? モニカの家だって同じように『不況』の影響を受けているはずなのに」

そんなわたしの質問は、不機嫌な顔で無視されてしまいました。

ある日、不思議なことが起こりました。わたしは、パソコンをもっていませんし、お店が遠いので、好きなグループの新しいCDを電話で注文することにしたところでした。

ちょうどテレビでコマーシャルを流していて、電話番号が出ていたのです。

わたしは電話の前に座り、番号を押し始めました。

すると突然、声が聞こえてきました。

「キーラ、ほんとうにそのCDを買っていいのか、まずよく考えなくちゃ」

びっくりして、わたしは部屋を見回しました。ドアは閉まっていますし、部屋にはわたししかいません。これは、ほかの人間はいないという意味で、もちろんマネーはわたしのそばにいました。

「気のせいかしら……」

少ししてから、わたしはびっくりして置いてしまった受話器を再び取り上げました。番号を押し始めると、突然、また声がしました。

「キーラ、そのCDを買うと、今月の君のおこづかいはほとんどなくなってしまうよ」わたしの前には、マネーが首をちょっとかしげて立っていました。いまの声はマネーから聞こえてきたようでした。でもまさか。

「犬が話せるはずないわ。マネーがいくらかしこい犬だってそれは無理よ」と思いました。

「ずっと昔、犬はみんな、少しばかり話せたんだよ。人間とはまったくちがう方法でだけどね。その後、この能力は退化してしまった」マネーがわたしを見つめて言います。「だけど、ぼくは話せるんだ」

わたしは急いで腕をつねってみました。あいたっ、夢ではありません。

ただ変に思えたのは、マネーがしゃべるときに口をまったく動かさないことでした。

「ぼくたち犬は人間よりずっと進歩したやりかたで話ができたんだ。伝えたいことがあれば、その考えを直接、相手の頭のなかに送るんだよ」とマネーが言います。「だから、君が何を考えているかもわかる」

これにはまったくびっくりしてしまいました。

「もちろん、君の考えていることはわかるよ。二つの生きものが近くにいれば、相手の考えはいつもある程度はわかるものだ。だから、両親がお金に困っているせいで君がずいぶん悲しい思いをしていることもわかってる。それに、君が同じあやまちを犯そうとしていることも。お金とうまくつきあえるかどうかは、とても早い段階で決まるものだからね。 ふつうなら、ぼくは君と話をするべきじゃない。こんなことが科学者に知れたら、ぼくは檻(おり)に閉じこめられて、いろんな実験台にされるだろうからね。だから、ぼくは自分の能力について誰にも話さなかった。でも、君は命を危険にさらしてぼくを助けてくれたから、特別なんだ。だけどこのことはぼくたちだけの秘密だよ。誰にもしゃべっちゃいけない」

「ぼくたちが語り合えるってことは大きな贈り物なんだ。あとになったらもっとよくわかるよ。でもいまは、あれこれ質問して時間をむだにするべきじゃない。一つのテーマ、そう、お金のことについてだけ話し合おうよ。リスクはできるかぎり小さくしたいからね」 「それなら別にもっとおもしろいテーマがあるんじゃないかしら」とわたしは思いました。それに、「人生お金がすべてじゃないわ」と母もよく言っています。

「うん。ぼくも、人生でお金が一番大事なものだとは思わない。でも、なにもかもがうまくいかないとき、お金はすごく大切なんだ。ぼくたちが川でおぼれそうになったときのことを思い出してみて。ぼくたちはとにかく川から脱出しなきゃならなかった。ほかのことは二の次だったろ? いまの君の両親も同じだよ。お金のことばかり話さなくちゃいけないくらい、お金に困ってる。いわば、まさに川でおぼれかかっているんだ。

ぼくは、君が彼らとはちがう行動をして、同じような状況に陥(おちい)らないようにする助けになりたいんだ。君さえよければ、お金が君の人生でいかに幸せをもたらす力になるかを教えてあげるよ」

わたしは、両親にもっとお金があったらいいのにと思うことはもちろんありますが、お金についてきちんと考えたことは一度もありませんでした。それに、犬にお金の相談相手がつとまるのかしら、というかすかな疑問もわいてきました。

「いまにわかるよ」マネーがわたしをさえぎりました。ちょっと得意げな笑みさえ浮かべているように見えます。「でも、もっと大事なことがあるんだ。ぼくは、君がほんとうに望んでいるときにしか君を助けられない。だから何を望んでいるのかをよく考えてほしいんだ。君たち人間は考えがすぐあやふやになったりするからね。そのためには、時々考えたことを書きとめるといいよ。明日までに、お金があったら何をしたいのか、願いごとを10個、書いてきてくれないかな。それで明日の夕方4時、一緒に森へ散歩に行こう」

わたしは、お金についてあれこれ学ぶにはまだ早すぎる気がしました。それに両親を見ていると、お金はちっとも愉快(ゆかい)なものではありません。

「はっきり言おう。両親がこんなに困っているのは、君くらいの歳(とし)のときにお金とのつきあいかたを学ばなかったからだよ。中国の賢人が言ってる。『大事は小事のうちになせ。すべての大事は小事に始まる』ってね。お金にはちょっとした秘密や法則があって、それを君に教えたいんだ。」

いますぐにお金について考えなければならない、ということにはまだ納得がいきません。 でも、中国の賢人の言葉を思い出しました。「大事は小事のうちになせ」。これはどういう意味でしょう?

というわけで、わたしはお金持ちになりたい理由を10個見つけなければなりません。簡単なことではありませんでした。だって、わたしのたいていの願いごとはそんなにお金がかからないのですから。3時間かけて、わたしはリストをつくりました。

1.18段ギアのついたトレッキングバイクがほしい
2.好きなだけCDが買いたい
3.前からほしかったすてきなスニーカーが買いたい
4.200キロ離れたところに住んでいる一番仲良しの友達と、もっと長く電話でおしゃべりしたい
5.夏に交換留学プログラムでアメリカに行きたい。そうすれば英語もうまくなる!
6.両親を借金から救いたい
7.両親をイタリアンレストランに招待したい
8.わたしほど幸せではない、貧しい子どもたちを救いたい
9.デザイナーズブランドの黒いジーンズがほしい
10.パソコンがほしい

リストを書き終えてみると、「お金持ち」になることが急に価値あることのように思えてきました。お金持ちならどれも簡単にかなえられるはずですし、もっとおもしろいこともできるでしょう。

【『マネーという名の犬』より】
マネーという名の犬(2)「人生は大きな通販会社のようなもの」
マネーという名の犬(3)「子どもがお金をかせぐ250の方法」がベストセラーに
マネーという名の犬(4)「どうやったらお金がかせげるかだけを考えたことがあるか?」
マネーという名の犬(5)何かをやろうと決めたら、かならず72時間以内にやること

ボード・シェーファー(Bodo Schafer) 
1960年ドイツ・ケルン生まれ。経営・資産形成コンサルタント。16歳で渡米し、20歳で最初の会社を設立。26歳のとき多額の借金をかかえ倒産するが、30歳で借金を完済。経営コンサルタントとして成功を収める。お金と資産形成に関する本の著者としても人気で、とりわけ本書(旧訳は『イヌが教えるお金持ちになるための知恵』として草思社より刊行)は23か国語に翻訳され、子どもから大人まで400 万人以上に愛される超ロングセラーとなっている。

村上世彰(むらかみ・よしあき)
1959年大阪府生まれ。1983年から通産省などにおいて16年強、国家公務員として務める。1999年から2006年までファンドを運営。現在、シンガポール在住の投資家。著書に『生涯投資家』(文藝春秋)など。

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