大切なことは、毎日かならず「成功日記」をつけることです。10分あればできる作業を続けることで、将来に大きな違いが出てきます。忙しい時も、問題が起きたことも、成功日記をもとに、自分で決めたことを実行することが重要です。お金をもうけた人たちは、問題を抱えているときほど、最高の仕事ができる人たちなのです。

(本記事は、ボード・シェーファーの著書『マネーという名の犬 12歳からの「お金」入門』飛鳥新社 (2017/10/27)の中から一部を抜粋・編集しています)

マネーという名の犬
(画像=Webサイトより)

「マネー、それはいい名だ。うん、とてもいい」

翌日、学校へ行きたくありませんでした。

帰ってきたときにはマネーがいなくなっているんじゃないかと不安だったのです。でも、エルナおばさんの近所の人のところへは、わたしも一緒に連れていくと父が約束してくれました。

近ごろでは、モニカはわたしがあまりしゃべらなくなっていることに慣れていました。でも3限めになるころには、わたしはこのことを胸に秘めていられなくなりました。とうとうわたしはモニカに打ち明けました。

「マネーを隠すんだったら、わたしのところへ連れてくればいいわ」

モニカは同情してそう言ってくれました。わたしはおどろくほど気持ちが軽くなりました。何らかの解決法が見つかる気がしてきました。

とはいえ放課後、父とエルナおばさんと一緒に例の近所の人の家へ向かうあいだは、胸に何かがつかえたような気分でした。

まもなく、みごとな庭の真ん中に立つ大きなお屋敷が見えてきました。門番が門を開けてくれ、わたしたちはお屋敷に向かってゆっくりと車を走らせました。

「誰であれ、こんなところに住んでいるのはものすごい金持ちなんだな」父が感心して声を上げました。

おばさんが説明してくれました。「ゴールドシュテルンさんは株でばく大な財産を築いた人なの。でも、少し前に事故にあったって聞いたわ。もう退院しているのかどうかはわからないけれど」

まもなくゴールドシュテルンさんが姿を現しました。ゴールドシュテルンさんは小柄(こがら)な人で、とてもやさしそうな顔をしていました。ほんとうは彼を憎(にく)むつもりだったのですが、どうしたことか、わたしはこの人がいっぺんで好きになっていました。それに、ゴールドシュテルンさんはとてもかしこい人でした。マネーと一番親密なのはわたしだとすぐに見抜きました。

「君はこの犬を何て呼んでいたんだ?」

ゴールドシュテルンさんはやさしい声でわたしに聞きました。わたしは答えられませんでした。マネーにはかつて別の名前があったのだということに気づいて動揺(どうよう)していたのです。

「マネーです」と父が答えました。

「マネー、それはいい名だ。うん、とてもいい」ゴールドシュテルンさんはうれしそうに言いました。「元の名前よりずっといい。ではこれからもマネーと呼ぼうじゃありませんか」

わたしはおどろいて彼を見つめました。とても話のわかる人のようでした。わたしも、名前は絶対マネーのままがいいと思っていました。

ゴールドシュテルンさんはわたしたちを居間に案内しました。そこで話してくれたことによると、ゴールドシュテルンさんはわたしたちの家から数キロ離れたところでマネーと車に乗っていて、事故にあったのだそうです。そのとき彼はかなりひどいけがをして、意識を失ってしまいました。意識が戻ったのは病院に着いてからでした。それ以来、マネーはいなくなってしまったのです。

わたしはマネーについて知っていることを話しました。マネーがおぼれかけたことも。でも、マネーが話せることについてはもちろん何も言いませんでした。

ゴールドシュテルンさんは椅子(いす)から立ち上がると、わたしのほうに歩みよりました。そこではじめて、彼は歩くのがとても不自由なことに気がつきました。きっと事故のせいなのでしょう。ゴールドシュテルンさんはわたしの両手を握ると、やさしいまなざしでわたしを見つめました。

「うちの犬を見つけてくれて、ほんとうにうれしいよ。マネーが君のところでとても幸せなのがわかる。心の重荷がおりたよ」

わたしは赤くなりました。「わたしも、マネーのことがとても、とても好きです」

「それはわたしにもわかる。そのことがとてもうれしいんだよ」ゴールドシュテルンさんは言いました。「というのも、わたしはまだたくさんの治療を受けなくちゃならないんだ。次の治療としてまた4週間、リハビリ専門の病院へ行かなくちゃならない。だから、君がベ……じゃなくてマネーのことを引き続き世話してくれたら、じつに助かるんだ。もちろん、費用はわたしが払うよ」

うれしくて胸がドキドキしました。マネーがわたしのところにいてもいいのです。でも、急にゴールドシュテルンさんが気の毒になりました。

「でもマネーがいないと、とてもおさびしいのではありませんか?」わたしはたずねました。

「さびしいよ」ゴールドシュテルンさんはため息まじりに言いました。「だからお願いがあるんだ。1週間に1度、マネーを連れて病院を訪ねてくれないかね? わたしの運転手が君たちを迎えに行って、また家まで送るから」

「喜んで」わたしはすぐに言いました。この人の願いをかなえたいと思ったのです。それに、わたしは彼がいっそう好きになっていました。

何かをやろうと決めたら、かならず72時間以内にやること

わたしたちはおばさんを家へ送り届けると、まっすぐ自宅に帰りました。父が母にことの顛末(てんまつ)を説明しているあいだに、わたしはマネーとすぐに森の隠れ家へ駆けつけました。「君とゴールドシュテルンさんがわかりあえてうれしいよ。彼はすばらしい人だよ。ぼくは彼からたくさんのことを学んだんだ」

わたしはびっくりしました。マネーにも学ばなければいけないことがあるなんて。でも、考えたら当然です。マネーだって最初からかしこく生まれてきたわけではありません。

「ねえ、どうしてこれまでゴールドシュテルンさんのことを話してくれなかったの?」

「ぼくたちはお金のことだけ話そうって決めたじゃないか」

「そうね。でも、マネーだって彼に会いたかったはずよ」

「事故のとき、ぼくはご主人が死んでしまったと思ったんだ」マネーが説明してくれました。「あたりは血だらけで、彼はぴくりとも動かなかった。ぼくももうろうとしていて、必死で体を引きずってやぶのなかに入って、そこで気を失ってしまった。かなり長いこと眠っていたらしい。気がついたときには、ご主人も車も、もう見当たらなかったからね。

また会えるなんて、思っていなかったんだ」

これでいくらかわかってきました。マネーが続けます。

「さあ、お金の話に戻ろう。ほかの話はなしだ。まだ何か知りたいことがあるなら、今度ぼくのご主人を訪問するときに彼に聞くといい」

そうは言っても、わたしはお金の話をする気にはなれませんでした。こんなにいろいろ

とわくわくすることが起こるのですから。それに、この機会になぜマネーが話せるのかを聞きたかったのです。

ところが、マネーの声は断固としていました。

「ぼくたちは、君の両親がこれ以上お金に困らないようにするんだろ。でも、その前にこれまでに話したことをおさらいしておこう。夢アルバムはどうなってる?」

わたしは赤くなりました。「始めたところよ。でも、ノートパソコンとカリフォルニアのいい写真がないの。夢貯金箱にも写真がいるわ。その写真を手に入れようと思ったんだけど、すっかり忘れていたの」

マネーは厳しい目でわたしを見て、容赦なく続けました。

「イメージを思い描いてみたかい? それから成功日記のほうはどうなってる? 昨日は何か書きこんだかい?」

「だって、別の心配ごとがあったから」わたしはぶつぶつ言いました。「あなたがいなくなるんじゃないかと不安だったの。だから、そういうことに集中できなかったのよ」

「わかるよ。でも、それはお金に困っている多くの人が犯しているのとまさに同じまちがいだよ。彼らはいつも、目の前の差し迫ったことにかまけていて、大切なことに心を配る時間がないんだ」「わからないわ。マネーがわたしのところにいること以上に大切なことなんて何があるの?」

「だから言ったじゃないか、君の言うことはわかるって。でも、君のおばさんが訪ねてくる前はどうだった? 何か言い訳があるかい?」

「あのときは、ナポレオンを散歩に連れて行くことでお金がたくさんかせげるってことがあまりにうれしかったから……」

マネーは真面目な顔でわたしを見つめました。

「それなら、とても大事なことを三つ教えてあげる。第一に、何か問題が起きたときにも、やろうと決めたことを実行すること。万事順調なときに決めたことをやるのは誰だってできる。でも、困難が生じたときにはじめて、それがほんとうにできるかわかる。決めたことを一貫してやり通せる人はわずかしかいない。でも、とくにたくさんのお金をもうけた人たちは、多くの問題を抱えているときほど、むしろ最高の仕事ができているんだ」

わたしは考えました。この話は一度どこかで聞いたことがありました。そうだ、マルセルです。彼の謎めいた二つめの助言でした。「うまくいっているときは誰でもお金をかせげる。でも、困難が生じたときにその人の真価がわかる」マネーがわたしに向かってうなずきました。

「問題はいつだって起こる。それでも、君は将来のために大事なことを毎日やらなきゃならない。10分もかからないことだよ。でもこの10分が大きなちがいを生むんだ。たいていの人はこの10分を利用しないから、現状のままで終わってしまう。そういう人たちはいつも、状況が自分にいいように変わってくれないかなあとつごうよく思ってる。でも、まず自分が変わらないかぎり状況は変わらないということに気づいていないんだよ」マネーは少し間を置いてから続けました。

「この10分は君を変えるためにあるんだ。一番いいのは自分自身に約束することだよ。これからはいつも、何があっても毎日、日記を書くことと、イメージを思い描くってことをね」

わたしは誓いました。これからは日記を書き、イメージを思い描くことを日課にします。

「二つめに」マネーは厳しく続けました。「この二つの日課を、万事がうまくいっているときにも続けること」

わたしはびっくりしてマネーを見ました。どういう意味でしょう?

「ナポレオンの仕事を手に入れたとき、君はすっかり舞い上がっていたよね。それで二つの日課を忘れてしまっていた。わかるだろ、注意をそらさせる出来事は山ほどあるんだよ。

だからこの日課を確実にこなすために、1日のなかで時間を決めるといい」わたしは考えこみました。時間を決めるといっても、夜だと、疲れていてできないかもしれません。日中はいつも何かほかの用事があります。すると朝しか残っていません。でも、それだと早く起きないといけないし……。

「たったの10分だよ」マネーがまたもわたしの考えを読んで言いました。

そう簡単なことではないと思いながらも、わたしは承知しました。これからは10分早く起きて、すぐに顔を洗って目を覚まして、それから日記をつけることに決めました。

「それからもう一つ」マネーはさらに容赦なく続けます。「君がまだ写真を手に入れてないのはなぜか、わかるかい?」

マネーは自分で答えました。「それは君が72時間ルールを守ってないからだよ」

「72時間ルール?」

「簡単さ。何かをやろうと決めたら、かならず72時間以内にやること。72時間以内にやらなかったら、きっと二度とやらないよ」

わたしはよく考えてみました。これまでもやろうと決めてやらなかったことがたくさんありました。マネーの言うとおりかもしれません。それに、結局のところいつもマネーの言うとおりなのですから、マネーのアドバイスに従うことにしました。やると決めたことはすべて、72時間以内にやることにします。



【『マネーという名の犬』より】
マネーという名の犬(1)「お金があったらしたい願いごとを10個書いてきて」
マネーという名の犬(2)「人生は大きな通販会社のようなもの」
マネーという名の犬(3)「子どもがお金をかせぐ250の方法」がベストセラーに
マネーという名の犬(4)「どうやったらお金がかせげるかだけを考えたことがあるか?」

ボード・シェーファー(Bodo Schafer)
1960年ドイツ・ケルン生まれ。経営・資産形成コンサルタント。16歳で渡米し、20歳で最初の会社を設立。26歳のとき多額の借金をかかえ倒産するが、30歳で借金を完済。経営コンサルタントとして成功を収める。お金と資産形成に関する本の著者としても人気で、とりわけ本書(旧訳は『イヌが教えるお金持ちになるための知恵』として草思社より刊行)は23か国語に翻訳され、子どもから大人まで400 万人以上に愛される超ロングセラーとなっている。

村上世彰(むらかみ・よしあき)
1959年大阪府生まれ。1983年から通産省などにおいて16年強、国家公務員として務める。1999年から2006年までファンドを運営。現在、シンガポール在住の投資家。著書に『生涯投資家』(文藝春秋)など。

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