「自分が喜んでやりたいことは何か?」をはっきりさせることが重要です。そして、他の人が抱える問題を解決することが出来るか、どうやってお金を稼げるか考えるべきです。また、一つの仕事だけを当てにすることはリスクであるということを覚えておきましょう。思ったより早くだめになるかもしれないです。トラブルに直面した時にでもお金を稼げる自分をつくろう。

(本記事は、ボード・シェーファーの著書『マネーという名の犬 12歳からの「お金」入門』飛鳥新社 (2017/10/27)の中から一部を抜粋・編集しています)

マネーという名の犬
(画像=Webサイトより)

「あんたって、顔はカエルみたいだけど、頭はいいのね」

家に帰ると、わたしはベッドに横になって考えました。

どうしてもお金をかせぐ方法を見つけなければなりません。でも、何をどうやって始めたらいいのでしょう。デリルがあれだけのことを成しとげたのはほんとうにおどろきです。すぐに思いついたことが二つありました。

1.秘密を守ることができた
2.お母さんに笑われてもあきらめなかった

少し考えてから、さらに四つの「成功」を見つけました。

これらを書きとめながら、身近にデリルのような人がいるかしらと考えました。そういう人と話ができたら、きっとためになるにちがいありません。

ふと、いとこのマルセルのことを思い出しました。マルセルはわたしより10か月だけ歳上です。彼とは1年に1度か2度会うくらいでした。でもわたしの知るかぎり、彼にはいつもお金がありました。ただ、マルセルはいやなやつなのです。彼とまともに遊んだことは一度もありませんでした。それでも、いまはわたしを助けてくれるかもしれません。もう遅い時間でしたが、すぐにマルセルに電話をかけました。さいわい、彼はまだ起きていました。

マルセルが電話口に出るやいなや、わたしは用件を切り出しました。

「もしもしマルセル、キーラよ。大事な話があるの。わたし、来年交換留学でカリフォルニアに行きたいの。それでお金がいるのよ。うちのお父さんとお母さんには助けてもらえないわ。だから自分でかせがないといけないの」マルセルは笑いました。

「そんなこと簡単さ。だけどおどろいたよ。おまえのこと、人形にしか興味のないくだらないやつだってずっと思ってたからさ」

マルセルはばかにしたように笑いました。

「お金はどこでだってかせげるんだよ。周りを見回してみればいいだけさ」

デリルも同じようなことを言っていました。

「でもねマルセル、わたしの友達にはお金をかせぎたがっている子が何人もいるけど、何も見つけてないのはどうしてかしら?」

「そいつらはきちんと見なかったってことだ。きっと人形遊びをしすぎたんだろ」

「おまえ、一度でも真剣に仕事を探したことがあるかい? つまり、午後まるまる使って、どうやったらお金がかせげるかだけを、集中して考えたことがあるか?」

正直言って、わずか1時間でもそのために時間を費やしたことはありませんでした。

正直に「ないわ」と答えました。

「そうだろ、だからおまえにも何も見つからなかった。探さなければ、よっぽど幸運でもないかぎり何も見つからないぜ。おれがどうやってお金をかせいでいるか、教えてやるよ。おれは自分の会社をもってるんだ」

「ええっ? だってあんたはまだ、わたしと同じ12歳じゃない」

「それでも会社をもってるんだよ。パンを配達する会社なんだ。もう14人のお客さんがいる」

「でもそれだけじゃない。週3回、午後に近くの老人ホームで働いてるんだ」

「どこで働いてるって?」

「老人ホームだよ。お年寄りの代わりに買い物に行ったり、一緒に散歩をしたり。お年寄りと話をするだけのときもあるし、一緒にゲームをすることもある。それに対して、1時間あたり1000円をホームからもらうんだ。それで、1週間あたり7000円から9000円の収入だ。たいていひと月で3万円になる」

わたしは感激しました。

「自分が喜んでやりたいと思うことは何かをはっきりさせるのが一番だよ。それから、そのことでどうやってお金をかせげるかを考えるんだ。最初はおれもそうやってパン配達サービスを思いついたんだ。もともと自転車に乗るのが好きだからな。いまはその好きなことでお金がかせげる。これって最高だぜ。ちなみに、おれは毎日何軒かの家を訪ねて、パンの配達はいかがですかって聞いてまわってる。目標はお客を50人に増やすことなんだ。そうすれば、ひと月に5万円以上かせげるからね」

わたしは感心してしまいました、でも、わたしの可能性は何なのでしょう。

「おまえ、毎日自分の犬を散歩に連れていかなきゃならないんだろ」

「連れていかなきゃならないんじゃなくて、好きでマネーと散歩に行ってるの。それに、わたしをまぬけ頭って呼ぶのはやめて」

「それだよ! そのとき、よその犬も一緒に散歩に連れていけるだろう。そうすればお金がもらえる」

わたしは興奮して言いました。「すごいわ。あんたって、顔はカエルみたいだけど、頭はいいのね」

お礼を言ってそそくさと電話を切りました。わたしは再びデリルのことを考えずにはいられませんでした。

「芸を仕込んでくれたら、一つにつき2000円を払おう」

そうしていつの間にか、眠ってしまったようでした。

次の日、わたしは学校でも計画を練りつづけていました。近所にシェパード犬とロットワイラー犬とさらに何かの雑種で「ナポレオン」という名前の犬がいました。飼い主はオオカミ男みたいな顔をしたおじいさんでした。少し前からその人の奥さんがナポレオンを散歩させていますが、あまり楽しそうではありません。犬も言うことを聞かなくて、注意していないとすぐに走っていなくなってしまうのです。おそらく、奥さんは犬の扱いがあまりうまくないのでしょう。ご主人のほうは、軽い脳卒中を起こしたせいで、それ以来あまり歩けないのでした。

わたしはその「オオカミ男」と奥さんに話をすることにしました。ところがまだ彼らの名前さえ知らないのです。

学校からの帰り、わたしは回り道をしてナポレオンの家へ行きましたが、門のところまできて勇気がなくなってしまいました。

何て言ったらいいんだろう? 駄賃(だちん)はいくらと言うべきだろう? こんなふうにしてお金をもらっていいの? 

わたしは逃げ出したくなりました。でも、庭でまどろんでいたナポレオンがわたしに気づいて、門のところまで走ってきました。

この犬には大きな声で吠えるくせがありました。それで誰が来たのかと、飼い主が窓辺に近づいてきました。

その人はわたしに何か用かと尋ねました。いま言わなければもうチャンスはありません。

わたしは勇気をふりしぼって、早口で言いました。

「わたし、交換留学でアメリカに行きたいんです。そのためにお金がいります。そのお金をかせぎたいんです。奥さんのことをお見かけしましたが、ナポレオンと散歩するのがあまり楽しそうではないと思いました。それで、代わりにわたしが毎日ナポレオンを散歩に連れていくことにしたらどうかと思ったんです。どう思われますか?」

おじいさんの顔をまともに見る勇気がありませんでした。頭が燃えるように熱くなっていました。

その人はやさしい声でわたしを招き入れました。

「それはすばらしいアイデアだね。家に入りなさい。ゆっくりその話をしようじゃないか」「わたしにはほんとうに手に余るのよ。毎日3回ナポレオンを散歩させるなんて。よその犬が来ると、わたしの力ではナポレオンを引き止めておけないの。あなたならできると思う?」

「ナポレオンは、うちのマネーのそばからは離れないと思います」わたしは答えました。

「ですから一緒に散歩すればいいんです。一度試してみたらどうでしょう」

「君が犬の扱いがうまいことは知ってるよ」おじいさんが口をはさみました。「君ほどうまく扱える人はいないと思うよ」

「まず自己紹介しないとね。わたしたちはハーネンカンプというんだ。こちらは妻のエラ、わたしはワルデマール」

「わたしはキーラ。キーラ・クラウスミュラーといいます」わたしも自己紹介をしました。

「どうぞよろしく、お嬢さん」ハーネンカンプさんは重々しくうなずきました。「それでさっそく提案だがね、毎日午後にナポレオンを散歩させてくれないか。ブラシもかけてもらおう。それから、彼が言うことを聞くようにしつけてほしいんだ」ハーネンカンプさんは少し間をおいてから言いました。「お金はいくらほしいかね?」

わたしは顔が赤くなりました。それについてはまだ考えていませんでした。

「わたし、よくわからないんです」わたしは小声で言いました。

「それならわたしから提案しよう」ハーネンカンプさんが言いました。「1日200円でどうだね?」

わたしはちょっと計算しました。ひと月で6000円にもなります。なんと、わたしのおこづかいの3倍です。でも二人は、わたしが黙っているのでがっかりしたのだと思った

ようです。それでこう提案してきました。

「それから、ナポレオンに芸を仕込んでくれたら、一つにつき2000円を払おう」

今回は急いで答えました。「とてもすばらしいと思います。すごくうれしいです。お二人とも、ご親切にありがとうございます」

二人は満足げに互いを見交わしました。「よかった。じゃあ、今日の午後から始めてくれるかしら」奥さんが期待をこめて言いました。

「もちろんです」わたしはそう答えると、急いでおいとましました。昼食のあと、すぐにマルセルに電話してことの次第を話しました。

「ほらみろ、キーラ、できるじゃないか」

彼が言ったのはそれだけでした。わたしはちょっとがっかりしました。ほめてもらえると思っていたのです。でも、マルセルがはじめてわたしを「まぬけ頭」ではなく、キーラと呼んだことに気づきました。これだけでもいい徴候です。

「でもな、大事なことを二つ言わせてくれ。第一に、一つの仕事だけをあてにしちゃいけない。おまえが思っているより早く終わりになるかもしれないからな。すぐに追加の仕事を探すことだ」

これは少し大げさな気がしましたが、彼のアドバイスに従うことにしました。

「第二に、きっと何か問題が起こる。予想もしなかったような問題がね。そのときに、おまえがまぬけ頭の意気地なしなのか、それともおれのようにお金をかせぐのにふさわしい人間なのかがわかる。順調なときは誰だってお金をかせげる。トラブルに直面したときにこそ、そいつがほんとうに持っている力がわかるんだ」

二つめの助言についてはどうしたらいいのかよくわかりませんでしたが、わたしはていねいにお礼を言いました。

それから、マネーと一緒にナポレオンを迎えに行きました。思っていたとおり、ナポレオンはとてもかわいい犬でした。マネーと遊べることで大喜びしていました。2匹はわたしがもっていったボールを追いかけて、くたくたになるまで走り回りました。

ようやく家に帰ると、エルナおばさんが来ていました。おばさんの住まいはここから少しか離れていないのですが、しばらく会っていませんでした。マネーがわたしたちと暮らすようになってから、おばさんがここへ来るのははじめてのことでした。

あいさつをしているあいだも、おばさんの視線はマネーに向けられていました。母が、この犬が迷いこんでこの家に居ついてしまったこと、飼い主が見つからなかったことなどを説明しました。おばさんは額にしわを寄せています。何か気になることがあるようすでした。

「この犬はもうどのくらいここにいるの?」おばさんはマネーから目を離さずに尋ねました。

「9か月くらいかしら」母が答えました。

エルナおばさんは真面目な声で言いました。「わたし、この犬の飼い主を知ってるわ。たぶんまちがいないと思う」

「飼い主はわたしよ!」わたしは急いで叫びました。「ちがうわ、これはうちの近くに住んでいる男の人の犬よ」おばさんはゆずりません。

不安がわたしの心に広がりました。

「でも、いまはわたしたちの犬よ。もうこんなに長くここにいるんだもの!」

母が厳しい目をして言いました。「おばさんに向かってどなるんじゃありません!なんて行儀の悪い子なの」

「それなら明日にでもマネーを連れてその人のところへ行って、この件をきちんとすることにしよう」

わたしは部屋から飛び出しました。マネーがあとを追ってきます。ぼくは君のもとを離れたりしないよ。彼の目はそう言っていました。



【『マネーという名の犬』より】
マネーという名の犬(1)「お金があったらしたい願いごとを10個書いてきて」
マネーという名の犬(2)「人生は大きな通販会社のようなもの」
マネーという名の犬(3)「子どもがお金をかせぐ250の方法」がベストセラーに
マネーという名の犬(5)何かをやろうと決めたら、かならず72時間以内にやること

ボード・シェーファー(Bodo Schafer)
1960年ドイツ・ケルン生まれ。経営・資産形成コンサルタント。16歳で渡米し、20歳で最初の会社を設立。26歳のとき多額の借金をかかえ倒産するが、30歳で借金を完済。経営コンサルタントとして成功を収める。お金と資産形成に関する本の著者としても人気で、とりわけ本書(旧訳は『イヌが教えるお金持ちになるための知恵』として草思社より刊行)は23か国語に翻訳され、子どもから大人まで400 万人以上に愛される超ロングセラーとなっている。

村上世彰(むらかみ・よしあき)
1959年大阪府生まれ。1983年から通産省などにおいて16年強、国家公務員として務める。1999年から2006年までファンドを運営。現在、シンガポール在住の投資家。著書に『生涯投資家』(文藝春秋)など。

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