お金を稼ぐのに大事なのは「自分ならできる」と信じる。つまり自信を持つことです。自身を持つためには、うまくいったことだけを書く「成功日記」をつけることも有効です。また、問題を解決するために自分が何を知っているか、何ができるかを考え続けましょう。

(本記事は、ボード・シェーファーの著書『マネーという名の犬 12歳からの「お金」入門』飛鳥新社 (2017/10/27)の中から一部を抜粋・編集しています)

マネーという名の犬
(画像=Webサイトより)

「パソコンがあれば宿題がよくできる。だからそのために貯金するの」

母の目が夢貯金箱に向けられました。母はそれを一つずつ手に取り、その上に「ノートパソコン」「カリフォルニア」と書かれているのを見ると、額にしわを寄せました。

「これはいったいなあに?」と母が尋ねました。わたしは真っ赤になりました。

「わたしが交換留学でアメリカに行きたがってるのは知ってるでしょ。それに、パソコンがあれば宿題がもっとよくできると思って。だからそのために貯金するのよ」

「あら、ほんとにお金が入ってるわ」母がおどろいて言いました。「いったいいくら?」答えるのはいやでした。

「500円」わたしは小声で言いました。

母は部屋から出ていくと父を呼びました。「ねえお父さん、わたしたちの娘はお金の天才よ。あの子はもうすぐカリフォルニアへ飛ぶんですって、アハハ」

もうがまんできませんでした。わたしは廊下に向かって叫びました。

「見てるといいわ、来年の夏休みには飛ぶんだから。でもお父さんとお母さんには絵はがき1枚だって出さないから! 借金を抱えたままでいればいいんだわ。わたしは助けないからね!」わたしはドアをバタンと閉めました。

学校へ行ってもおもしろくありませんでした。わたしはまったくうわの空でした。さいわいなことにテストも筆記の課題もありませんでした。あればきっとしくじっていたで しょう。となりに座っている友達のモニカとも話をしませんでした。

「使っていないノートか日記帳を用意して、表紙に『成功日記』と書くんだ」

やっとのことで学校が終わると、わたしは走って家に帰りました。

昼食を急いですませると、マネーにリードをつけて、一緒に森へ走っていきました。隠れ家に着くと、わたしは一気にまくし立てました。

「マネーのアイデアのせいでいやな目にあってばかりよ。お母さんが夢貯金箱を見つけてわたしのことを笑ったのよ。わたしがアメリカに行くまでには50年かかるって。それじゃあ、おばあさんになっちゃうじゃない」

マネーは黙ってわたしを見つめ、それから頭をたれました。少し悲しそうに見えました。 ようやく、マネーの声がかすかに聞こえてきました。

「君はほんとうにアメリカに行きたいの? ほんとうにノートパソコンがほしいの?」

「もちろんよ」わたしはきっぱりと答えました。これには自分でもおどろきました。願いごとをイメージすることや夢貯金箱やつくりかけの夢アルバムを通じて、ほしいと思う気持ちがいつしか確固たるものになっていたのです。

「いいぞ」マネーは鋭い目でわたしを見ました。「それが一番大事なことなんだ。どうやってほしいものを手に入れるかはすぐにわからなくてもいい。大事なのは『君がほんとうにそれを望んでいる』ってことだよ。そうでないと、やっかいなことにぶつかるとすぐにあきらめてしまうだろ」

そのとおりでした。母に笑われたことで、わたしはあきらめるどころか、負けるもんかという気持ちになっていました。ぜったいに目標を達成したいと思ったのです。

「それに、簡単に達成できるとは一度も言ってないよ」マネーが続けます。

「そうね。でも、お母さんがあんなふうに言うなんて全然予想してなかったから」

「災難ってのは、いつも予想外の方向からふってくるものだ。でもいまは、君がおばあさんになる前にどうやってお金をかせぐかを考えるべきだよ」

「そんなの、むだよ。モニカとも話し合ったんだけど、わたしにはお金を出してくれるお金持ちの親戚もいないし。絶望的だわ」

マネーが怒ったように前足で地面をかきました。

「失敗することばかり考えちゃだめだよ。働いてお金をかせげばいいじゃないか」

わたしは自分に腹が立ちました。最初から失敗すると考えるのはやめようと決めたばかりなのに。でも、12歳になったばかりの女の子がどうやってお金をかせげばいいのでしょう。

そのとき、アイデアが浮かびました。

「定期的に家の庭の芝刈りをするのはどう? きっと300円くらいはもらえるわ」

マネーはあまりいい顔をしません。

「君だって同じ家に住んでいて、庭も使ってるだろう。それなら手伝いをするのは当然じゃないか。そんなことで両親からお金をもらうわけにはいかないよ。それに、両親だって君のためにいろいろなことをしてくれるけど、その費用を請求したりしないだろ」

「そうね。それじゃ、どうやってお金をかせいだらいいの?」

「心配ないよ。あとで、デリルという男の子の話を聞かせてあげよう。ごくふつうの男の子なのに、たった17歳で億万長者になったんだ。でもその前に、大事なことを言っておかなくちゃ。お金をかせぐのに、いいアイデアがあるかどうかはそれほど重要じゃない。君がどれだけ有能かってこともそれほど重要じゃない。大切なのは自信だよ」

「自信? それがお金をかせぐこととどう関係するの?」

マネーは、大事なことだと言わんばかりに、ゆっくりと体を起こしました。

「『自分に何かができる』と信じられるかどうか、それを決めるのが自信だよ。自分を信じられるかどうかということだね。何かを信じていなかったら、始めることすらできない。始めなければ、何もうまくいかないんだ」

きちんと理解できているかは不安でしたが、思い当たることがありました。少し前に、学校で筆記テストがあるのを忘れていたことがありました。当日の朝になって、クラスメートから今日はテストの日だと聞いたのです。でもわたしは、いまから急いで勉強すれば間に合うと思い、美術の授業をさぼって校庭のベンチでにわか勉強することにしたのです。おかげでまずまずの成績をとることができました。自分を信じていなかったら、にわか勉強を始めることすらなかったでしょう。

「すごいじゃないか、それこそが自信だよ」

マネーが喜んで言いました。わたしはマネーがわたしの考えを読めることをつい忘れてしまうようです。

「それほど自信があるわけでもないと思うけど」

「そうだね。でも、自信をつけるのは簡単なことだよ。どうすればできるか、知りたいかい?」

「知りたいわ」

「それじゃあ教えてあげる。使っていないノートか日記帳を用意して、表紙に『成功日記』と書くんだ。そして、うまくいったことをぜんぶそこに書くんだよ。できれば毎日、うまくいったことを五つ以上書くといい。ほんのちょっとしたことでかまわないんだ。

最初は大変かもしれない。それがほんとうに成功と言えるのかどうか、迷うこともあるだろう。でも、迷ったときは『成功』のほうに入れればいい。自信はたくさんつけたほう がいいからね」

マネーは少し考えてから続けました。「いますぐ始めるのが一番だよ。それでまた、夕食のあとに会おう。そのときにデリルの話を聞かせるよ」

できればデリルの話をすぐに聞きたかったのです。でも、マネーに対する信頼はどんどん大きくなっていました。マネーは何が肝心(かんじん)なのかをよくわかっているようでした。それで、わたしはうなずいて一緒に家へ帰りました。

家に着くと、わたしはすぐに自分の部屋に入りました。学校の理科の時間に使っていた古いノートを引っぱり出すと、書きこみをしていた数ページを破りとりました。それから、新しいラベルに「成功日記」と書いて表紙に貼りました。

今日の日付を入れて、書き始めることにしました。わたしはノートのまっ白なページをじっと見つめました。昨日うまくいったことは何だったかしら? 何も浮かんできません。

夢貯金箱をつくったことは書いてもいいかもしれません。でも、それが役に立つのかどうかは自信がありません。それなのに書いてもいいのか迷いました。

そのとき、マネーが言ったことを思い出しました。

「迷ったときは『成功』のほうに入れればいい」そうして、わたしはとにかく書き始めました。

1.夢貯金箱を二つつくった。役に立つのかよくわからないけど、それでもつくった。つくっていなければ、どうしたって役には立たないのだ
2.それぞれの貯金箱に500円ずつ入れた
3.夢アルバムをつくり始めた
4.今日、わたしの「成功日記」を書き始めた
5.たくさんお金をかせごうと決めた
6.あきらめないと決心した
7.お金のこととお金をかせぐことについて、たくさん学んだ

わたしはリストを見つめました。急に、自分がえらくなったように思えてきました。こんなことをしている子どもはそうそういないはずです。自分でもちょっと変わっているような気がします。でも、並外れてすごい人はみんな、きっと少し風変わりなのでしょう。

宿題をおえて夕食をすませると、わたしはマネーと森へ行きました。いまは夏で、まだまだ明るいのです。

わたしはまず、成功日記について、うまくいったことを五つ以上見つけたと鼻を高くして報告しました。マネーは満足そうでした。

そして、デリルの話を聞くのがもう待ちきれませんでした。マネーもそれ以上わたしをじらすことはせず、話し始めました。

「デリルが以前、自分の身の上話をしたときに聞いた話なんだ。彼が8歳のとき、映画を見に行きたいと思ったことが始まりだった。彼にはお金がなかったから、根本的な問題に直面した。両親に頼んでお金をもらうか、自分でかせぐか、ということだ。

デリルは自分でかせぐほうに決めた。それで、レモネードをつくって街角に立って、通りがかりの人に売ろうとしたんだ。残念ながら、とっても寒い冬の日で、誰も買ってくれなかった。ある二人を除いてはね。それはデリルのお父さんとお母さんだった。

ほかの人のために問題を解決しようすればお金をかせげるようになる

デリルはこのころ、とても成功した実業家と話をする機会に恵まれた。

デリルが自分の『失敗』を話すと、その実業家は二つの大切なアドバイスをくれたんだ。

『いつもほかの人のために問題を解決しようとしなさい。そうすれば、どんどんお金をかせげるようになる。それから、自分が何を知っているか、自分には何ができるか、何が備わっているかをつねに考えなさい』

これはとても重要なヒントだった。8歳の男の子には、できることは限られていたからね。デリルは町じゅうを駆けまわって考えた。人々がどんな問題を抱えているのか、その問題を解決するために、自分の力で何ができるのか。

それは簡単なことじゃなかった。アイデアはなかなか浮かんでこなかった。でもある日、デリルの父親が、意図せずして彼を正しい道筋に向かわせてくれたんだ。

朝食のとき、父親はデリルに新聞を取ってきてくれるよう頼んだ。アメリカではね、新聞配達人は、家の前の生け垣(いけがき)のところにある新聞受けに朝刊を入れていくんだ。朝、くつろいで朝食をとりながら新聞を読みたければ、ぬくぬくした家から出て、雨がざあざあ降ってるなか、家の前の新聞受けまで新聞を取りにいかなくちゃならない。たかだか20 メートルか30メートルの距離だといっても、やっぱりいやなものだよね。

新聞を取りにいくあいだに、デリルにあるアイデアがひらめいたんだ。その日のうちに、彼は近所の家を訪ねては、『ひと月たったの1ドルで、毎朝、新聞を家のドアの下に差し入れてあげますよ』って申し出たんだ。たいていの人がこれに同意した。まもなく、デリルは70人以上の顧客(こきゃく)、つまりお客さんを抱えるようになっていた。最初のひと月が終わってはじめて集金したとき、彼はとっても幸せだった。

デリルは成功したけど、満足はしていなかった。彼はさらに別の可能性を探したんだ。いったん手がかりをつかむと、次々にアイデアが生まれた。デリルはお客さんに『家のドアの前にゴミ袋を出しておいてくれれば、毎朝それをゴミ収集場まで運びましょう。これもひと月1ドルでやりますよ』と申し出たんだ。彼はペットの世話もしたし、家の見回りもしたし、庭の水やりもやった。でも、時給では働こうとしなかった。そのほうがずっとたくさんのお金をかせげたからね。

9歳で、デリルはお父さんからパソコンの使いかたを教わった。彼は「広告」を書くことを学んだ。どうしたら子どもたちがお金をかせげるか、あらゆるアイデアを書きとめることも始めた。彼にはいつも新しいアイデアがひらめいていたから、それはすぐにたいそうなアイデア集になった。母親が帳簿つけを手伝ってくれた。そのおかげで、誰からいつ集金しなければならないかもひと目でわかるようになった。

デリルはほかの子どもたちを引き入れて、手伝ってもらった。子どもたちには、デリルがその仕事に対して受け取った報酬(ほうしゅう)の半分を支払った。こうして、まもなく相当な額のお金が彼のふところに入るようになった。

ある出版社が彼に注目して、本を書いてみないかと持ちかけた。タイトルは『子どもがお金をかせぐ250の方法』。この本は大ヒットして、デリルは12歳にしてベストセラー作家になった。

テレビ局がデリルに目をつけて、彼はたくさんの子どもむけ番組に出演するようになった。そこでわかったのは、彼はとってもテレビ受けがいいということだった。15歳で、彼は自分の番組をもつにいたった。こうして、信じられないくらいたくさんのお金をテレビ出演料や広告でかせいだ。17歳のとき、デリルは億万長者になっていたんだよ」

マネーは話の締めくくりに一つの質問をしました。「さて、デリルの成功のなかで、何が一番決定的な瞬間だったと思う?」

わたしはまだ感動にひたっていました。決定的だったのはテレビ出演だと答えようとしました。でも、本を出さなければテレビには出なかったでしょう。そして、お金もうけに成功していなければ、本を出すこともなかったでしょう……。

「そのとおり。デリルが自分のできること、知っていること、自分に備わっているもののことだけを考えたところから始まったんだ。子どもがたいていの大人よりたくさんのお金をかせぐのに、これで十分なんだよ。たいていの大人は自分にはできないこと、備わっていないもの、自分が知らないことばかりに夢中になって一生を終えてしまうからね」

「つまり、自信の問題なのね」わたしはピンときました。「でも、この町でうまくいくのかしら。デリルが住んでるアメリカでは、子どもがお金もうけをするのは、ずっと簡単なんじゃないかしら」

マネーが大きな声で吠(ほ)えました。それからハッと、自分の言ったことに気がつきました。

まさに、自分にはできないこと、備わっていないもののことばかりを考えてしまっていたのです。わたしはアメリカに住んだことさえないのです。でも、この町でもきっと何かできるはずです。急に勇気がわいてきました。



【『マネーという名の犬』より】
マネーという名の犬(1)「お金があったらしたい願いごとを10個書いてきて」
マネーという名の犬(2)「人生は大きな通販会社のようなもの」
マネーという名の犬(4)「どうやったらお金がかせげるかだけを考えたことがあるか?」
マネーという名の犬(5)何かをやろうと決めたら、かならず72時間以内にやること

ボード・シェーファー(Bodo Schafer)
1960年ドイツ・ケルン生まれ。経営・資産形成コンサルタント。16歳で渡米し、20歳で最初の会社を設立。26歳のとき多額の借金をかかえ倒産するが、30歳で借金を完済。経営コンサルタントとして成功を収める。お金と資産形成に関する本の著者としても人気で、とりわけ本書(旧訳は『イヌが教えるお金持ちになるための知恵』として草思社より刊行)は23か国語に翻訳され、子どもから大人まで400 万人以上に愛される超ロングセラーとなっている。

村上世彰(むらかみ・よしあき)
1959年大阪府生まれ。1983年から通産省などにおいて16年強、国家公務員として務める。1999年から2006年までファンドを運営。現在、シンガポール在住の投資家。著書に『生涯投資家』(文藝春秋)など。