たいていの人は、実は「自分の本当の望み」を知りません。夢や目標は、「夢アルバム」を作り、写真や絵を張って、目に見える形にすることが重要です。そして、夢や目標を達成したらどうなるか、何度も心に思い描いてみましょう。

(本記事は、ボード・シェーファーの著書『マネーという名の犬 12歳からの「お金」入門』飛鳥新社 (2017/10/27)の中から一部を抜粋・編集しています)

マネーという名の犬
(画像=Webサイトより)

10の願いごとのうち、どれが一番大切なの?

宿題なんかほとんど手につきませんでした。

4時になって急いで庭に飛び出すと、マネーはもうそこで待っていました。

わたしはマネーにリードをつけると、一緒に森のなかへ歩いていきました。「隠れ家」に着くまで、わたしには口をきく勇気はありませんでした。

わたしたちの隠れ家は、木イチゴのしげみの真ん中にぽっかりとあいた空間です。そこまでは、しげみのなかの細いすき間を5メートルほど這(は)っていかなくてはなりません。そのなかにちょっとしたスペースを見つけたのです。とてもいい感じです。わたしとマネーのほかは、誰もこの隠れ家を知りません。

「キーラ、お金があるのは君にとって意味があることだってわかったかい?」

「もちろんよ」わたしは急いでポケットからリストを取り出しました。

「読んで聞かせてよ」マネーに促されて、わたしは10の願いごとを読みあげました。

するとマネーが尋ねました。「それで、どれが君にとって一番大切な願いごとなの?」

「ぜんぶ大切よ」

「そうだろうね。でも、もう一度リストをじっくり眺(なが)めて、一番大切な三つに丸印をつけてくれないかな」

わたしはもう一度リストを見つめました。どの三つがほかの願いごとより大切かを決めるのはとても難しいことでした。

やっとのことで心が決まり、次の三つに丸をつけました。

1.来年の夏、交換留学生としてアメリカのカリフォルニアに行きたい
2.パソコン(できればノートパソコン)がほしい
3.両親が借金を返す手助けをしたい「とてもいい動機だね。かしこい選択だよ。きっとうまくいくよ」マネーはとてもうれしそうです。

「『やってみる』じゃなくて、『やる』んだよ」

人生を大きな通販会社のようなものだと想像してみるといい。

君が通販会社に『何かすてきなものを送ってちょうだい』と頼んでも、何も届かないだろう? ぼくたちの願いごとはみんなそれと同じだよ。ほしいものを手に入れるには、何を望んでいるのか、自分できちんとわかっていなくちゃならないんだ」

わたしは疑問を抱きました。「それは、自分の望みがわかっていれば、望むものがすべて手に入るということなの?」

「もちろん、そのためにはしなくちゃならないことがあるけどね。でも、その最初の一歩を君はもう踏み出したんだよ」

「わたしの望みをリストにしたってこと?」

「そのとおり。さて、これから君はこの願いごとリストを毎日眺めるようにするんだ。そうすることでくり返し思い出すことになる。そうすると、願いごとを実現させるために何をすればいいかがだんだんわかってくるよ」

「うまくいくかどうか不安だわ」

わたしが疑わしげに言うと、マネーはわたしをじっと見つめました。

「そんな考えで始めても、ぜったいにうまくいかないよ。でも、これから言う三つを実行すれば、君の考えはすぐに変わるよ。第一に、何も貼っていないアルバムを用意して、それを君の『夢アルバム』にするといい。そして、君のほしいものの絵や写真を探して、それをアルバムに貼るんだ。つまり、イメージで考えるってことだね」

「イメージで考える?」

「言葉で考えるんじゃないってことさ。たとえば君がカリフォルニアのことを考えるとき、『カリフォルニア』という文字を思い浮かべるかい、それともなにか光景を思い浮かべるかい?」

たしかにマネーの言うとおりです。ディズニーランドやゴールデンゲートブリッジ、ハリウッドサインなど、カリフォルニアのすてきな光景がすぐに頭に浮かんできました。「わかった。アルバムと写真を手に入れるわ。それでもまだ、なぜイメージで考えるべきなのか、よく理解してないんだけど」

「物ごとには、それがなぜ、どういうしくみで働くのかなんて、正確にわかっていなくてもかまわないときがあるよ。大切なのは、それが役に立つということさ。たとえば、君は電気のしくみを説明できるかい?」

そんな質問をされるとは思ってもいませんでした。なぜマネーはよりによって電気のことを聞くのでしょう。重力についてなら、学校で習ったばかりだったので、少しは何か言えたかもしれないのに。

マネーはかまわず続けます。「電気のしくみをきちんと説明できなくても、スイッチを押せば明かりがつくだろ。ぼくたち犬は理屈をくどくど話すのは好きじゃない。それが役に立つってことがわかれば十分さ。だから、君はアルバムを手に入れて写真を貼ればいいんだよ」

「ちょっと聞いてみただけなのに」わたしは口をとがらせました。

すぐに答えが返ってきました。

「それはそれでいいんだ。ただね、そのせいで、やると決めたことをその場でやらなくなっちゃだめなんだ。ためらってばかりいる人があまりにも多いからね。決めたことはさっさとやるほうがずっとかしこいんだよ」

「わかったわ。やってみる」わたしは約束しました。

ところがマネーの声がわたしをさえぎりました。

「『やってみる』じゃなくて、『やる』んだよ。何かをやってみようと言う人は、それがうまくいかなくて結局は失敗するんだって心のどこかで考えているんだ。やってみるというのは、失敗を前もって言い訳しているにすぎない。やってみる、じゃなくて、やるか、やらないかだよ」

わたしは少し考えこみました。父も、まさにこの言葉をしょっちゅう使っています。いつも「今日は新しいお客を獲得(かくとく)してみよう」と言っていますが、たいてい獲得できていません。たしかに「やってみる」という言葉のなかにすでに失敗のもとがあるのかもしれません。そういうわけで、「やってみる」という言葉を使わないようにしてみようと決心しました。

するとマネーが小さくうなりました。

「ああ、だめ、また言っちゃった。これからは『使わないようにしてみよう』じゃなくて、『絶対使わない』ね」

「ね、それほど簡単じゃないだろ?」そういえば、マネーは三つのことをやれば願いごとが実現すると思えるようになると言っていました。一つめは夢アルバムをつくることでした。でもあとの二つは何でしょう?

すぐに答えが返ってきました。

「二つめに君がやることは、アルバムに貼った写真を毎日何回か眺めることだよ。そして、自分がアメリカにいるようす、ノートパソコンを手に入れているようす、それからお父さんが借金を返していばっているようすを想像するんだ」

「それじゃ夢を見てるみたいね。お母さんは白昼夢(はくちゅうむ)を見てはだめだっていつも言ってるけど」

「それは『視覚化』というんだ。人生で何事かを成しとげた人はみんな、まずそれを夢に描いている。目標を達成したらどうなるかを何度も心に思い描いているんだ。もちろん、それがただの夢で終わってはだめだけどね。きっとお母さんが言いたいのもそういうことだよ」

なんだか、すべてがとてもおかしく思えてきました。お金についての最初の授業は、わたしが想像していたのとはまったくちがっていたのですから。

「それが学ぶということだよ。新しい考えかたや新しいアイデアを知ることだ。ずっと同じ考えかたをしていたら、得られる結果もまた同じだよ。

「三つめは、『夢貯金箱』をつくることだ」とマネーが続けました。

「夢貯金箱?」

「そうさ、お金がないとカリフォルニアにも行けないだろ。お金持ちになるための一番の方法は夢貯金箱だ。なんでもいいからふたのついた入れ物を探して、それを貯金箱にすればいいだけさ。そして、ふたに君の夢を書くんだ。ただし、一つの夢に一つの貯金箱が必要だよ。夢貯金箱をつくったら、君が使わずにとっておけるだけのお金を入れるんだ」

「でもそうしたら、たくさんの貯金箱をつくらなきゃいけないし、それぞれに100円ずつ入れたとしたって、お金が貯まるまでにわたしは20歳を超えちゃうじゃない。それに、そんなことをしたらほかのことに使うお金がなくなっちゃう」マネーは静かにわたしを見ていました。「ねえ、君ははじめから失敗する理由ばかり考えているよね」

「そうかもしれないけど」わたしはぶつぶつ言いました。「でも、だったらもっとおこづかいをもらうことを考えたっていいんじゃない。いまの2倍もらえたら最高だわ」

「キーラ、いまは信じられないかもしれないけど、たとえ10倍のおこづかいをもらったって、問題は大きくなるだけだよ。収入が増えれば、そのぶん支出も増えるものだからね」 いくらなんでも大げさです。10倍のおこづかいがあれば、天国にいるような生活ができるはずです。

でも、マネーは引き下がりませんでした。

「君の両親を見てごらん。君の10倍どころか、100倍以上のお金をもってる。それでもうまくやっていけていないんだ。お金がどれだけあるかはあまり重要なことじゃないんだよ。もっと大事なのは、お金とどうつきあうかだ。ぼくたちはまず、いまもっているお金とうまくつきあうことを学ぶべきなんだ。そうしてはじめて、もっとたくさんのお金を得られるようになる。でも、これについてはまた詳しく話すとして、いまは夢貯金箱に戻ろう。すぐに始めたらどうだい」

「両親の借金のことは2、3日のうちに話すことにしよう。君が思っているよりずっと簡単だよ。とにかく、君は二つだけ夢貯金箱をつくればいいんだ。それならできるだろ」 「わかったわ、やってみる……じゃなくて、やります」

「じゃあ、すぐに始めて」

わたしはびっくりしました。「いま、ここで?」マネーはうなずくだけです。

それで、わたしは目を閉じて、まず、自分のパソコンで宿題をやっているところを想像しました。パソコンを使うとずっと見(み)栄(ば)えがいいですし、修正も簡単にできます。成績もよくなるにちがいありません。それに、おもしろいゲームもできます……。

次に、3週間カリフォルニアで過ごすことを想像しました。わたしは親切なホストファミリーのところにホームステイしています。すてきな友達ができ、一緒に楽しい時間を過ごします。誰かとこんなにわかり合えたことはありません。それから、たくさんの知らないことを学びました……。

その合間に、父がわたしを空港まで送ってくれるところも想像しました。

「どうだった?」マネーがすかさず尋ねます。

「ほんとうにすてきだったわ。だけど、これがどうして役に立つのかわからないわ」

「電気のことを思いだしてよ」マネーが言いました。「納得する必要はないんだ。役に立つってことだけわかっていればいい。それに正直言うと、ぼくもあまり正確には教えられないし。あるかしこいカモメがこう言ってたよ。『飛び立つ前に、到着したときのことを知っておけ』ってね。君は、願いごとをすでにかなえている自分をイメージするんだ。そうすれば、はかない望みだったものが強い願望になる。カリフォルニアに行きたいという願いがどんどん強くなっていくんだ。そうして、君は望みを実現させる可能性を探し始める。

キーラ、可能性というものは十分にあるんだよ。でもそれは、探さなければ見つからない。そして可能性を探そうとするのは、強い願望があってこそだろ。目に見えるようにイメージすることで、強い願望が生まれるんだ」

「そのとおりかもしれないわ」わたしは考えながら言いました。「カリフォルニアに行くってことをこれまで真剣に考えたことはなかったの。一度、お母さんにおそるおそる相談してみたことがあるけど、『とんでもない』って。だからそれ以上はあまり考えてなかったのよ。でもいま、急に前よりもっと行きたくなってきたわ」マネーが満足そうにのどを鳴らしました。

「これは、ごほうびにおいしいビスケットをもらってもいいよね」

わたしはびっくりしました。マネーがわたしの先生になってからというもの、マネーを犬として見てなかったのです。急いで考え直さなくてはなりませんでした。すぐに犬用のビスケットをやると、マネーはうれしそうにぺろりと平らげました。

そろそろ夕食の時間になっていました。わたしたちは走って家に帰りました。 食事中、わたしはあまり食欲もなく、まったくうわの空でした。母が心配そうにわたしを見ました。

「キーラ、どうかしたの?」

わたしは大きなため息をついただけでした。何も言うことができなかったのです。考えなくてはいけないことや不思議なことがあまりにもたくさんありました。

ようやく夕食が終わり、わたしは自分の部屋へ引っこむことができました。

せめて夢貯金箱くらいは今日のうちにつくれそうです。家じゅうを探しまわって、ようやくチョコレートの空き箱を見つけました。そこに、貯金箱のように切れ目を入れました。ふたの上にペンで大きく「ノートパソコン」と書き、セロハンテープで箱を閉じました。

写真が手に入ったら、一番すてきなノートパソコンの写真を箱の上に貼ろうと思いました。大きな写真なら、ふた全体を覆うように貼ることができます。そうすれば、その箱がお金の投入口がついたノートパソコンのように見えることでしょう。いい考えです。それから父の葉巻の箱を探し出して、その上に「カリフォルニア」と書きました。結局、それぞれの箱に500円ずつ入れました。

誇らしい気持ちで貯金箱を眺めました。突然、それらがすごいものに思えてきました。これでうまくいかないはずはない、という感じです。



【『マネーという名の犬』より】
マネーという名の犬(1)「お金があったらしたい願いごとを10個書いてきて」
マネーという名の犬(3)「子どもがお金をかせぐ250の方法」がベストセラーに
マネーという名の犬(4)「どうやったらお金がかせげるかだけを考えたことがあるか?」
マネーという名の犬(5)何かをやろうと決めたら、かならず72時間以内にやること

ボード・シェーファー(Bodo Schafer)
1960年ドイツ・ケルン生まれ。経営・資産形成コンサルタント。16歳で渡米し、20歳で最初の会社を設立。26歳のとき多額の借金をかかえ倒産するが、30歳で借金を完済。経営コンサルタントとして成功を収める。お金と資産形成に関する本の著者としても人気で、とりわけ本書(旧訳は『イヌが教えるお金持ちになるための知恵』として草思社より刊行)は23か国語に翻訳され、子どもから大人まで400 万人以上に愛される超ロングセラーとなっている。

村上世彰(むらかみ・よしあき)
1959年大阪府生まれ。1983年から通産省などにおいて16年強、国家公務員として務める。1999年から2006年までファンドを運営。現在、シンガポール在住の投資家。著書に『生涯投資家』(文藝春秋)など。

【編集部のオススメ記事】
2017年も勝率9割、株価好調の中でもパフォーマンス突出の「IPO投資」(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
株・債券・不動産など 効率よく情報収集できる資産運用の総合イベント、1月末に初開催(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)