中小企業の経営者が持つ課題のひとつに、経営者の高齢化および事業承継があります。2016年12月に中小企業庁が公表した「事業承継ガイドライン」によると、経営者の年齢のボリュームゾーンは、1995年は47歳前後でしたが、2015年には66歳前後になるなど、経営者年齢は高齢化し、世代交代も難しくなっている状況です。今回は、事業承継におけるM&Aのメリットについて解説します。

後継者不足に悩む中小企業

M&A
(写真=one photo/Shutterstock.com)

2016年に日本政策金融公庫総合研究所が実施した、「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」によると、中小企業において後継者が決まっている企業はわずか12%程度で、約半数が廃業予定となっています。

廃業予定の理由のうち、約3割は、「後継者がいない」という理由です。また、廃業予定の企業の3割程度は、業績は悪くない、と回答しており、また、廃業後の不安として、「今後の生活が不安」と回答しています。このように、後継者不足というのは、中小企業にとって、決して小さな問題ではないのです。

一方、もうひとつの課題として、後継者に関する悩みを誰にも相談できなかった、ということがあります。親族や役員、顧問税理士・会計士以外には、なかなか相談できる人がいないのかもしれません。

事業承継の解決策として、M&Aが有効

昨今、事業承継の解決策として、M&Aが注目されています。大手企業や中堅企業に企業を売却することで、事業を継続させていくという考え方です。中小企業のM&Aの市場は拡大しつつあり、事業承継のひとつの方法として、注目されつつあります。

事業承継には、「資産の承継」という側面と、「経営の承継」という側面があります。このうち、経営の承継に目がいきがちですが、資産の承継の方が承継対象としては困難なのです。

事業を数十年続けていると、資産というのは蓄積されていきます。これを承継しようとすると、資産の総額だけで数千万円~数億円になることがあります。従業員に承継しようと思っても、なかなかこの金額を支払うことができる従業員は存在しません。また、資産を受け継ぐと、同時に負債も承継することになるので、個人保証などの問題も出てきます。

資金力がある会社であれば、数億円程度の支払いであれば問題ないことがほとんどです。また、多くの場合、従業員もまるごと引き取ってくれることが多いので、経営の承継も問題なく行われることが多いのです。今まで以上にリソースをかけることで、買収された企業がさらに成長した、というケースも見られます。

M&Aは、M&Aブティックと呼ばれる仲介事業者や、会計事務所、コンサルティング会社、銀行などがその仲介の役割を担います。一般的には、複数の銀行や会社に相談し、最も良い案があるところと契約します。M&Aは、やると決めてから成約までに約3ヵ月~半年くらいかかり、その期間にさまざまなことを整理していきます。

事業承継の際は、M&Aも視野に入れ、幅広い視点で検討を

事業承継は、経営者にとって避けて通れない問題です。M&Aは、数百万円から数千万円の手数料がかかり、かつ準備も必要なので、決して楽な道ではないかもしれません。

しかし、経営者として築き上げてきた資産や、技術、従業員を承継し、さらなる発展をさせていくことが可能です。長期的な視点に立ってM&Aをして良かった、というケースも多くあります。事業承継に悩んだら、まずは金融機関などに相談し、幅広い選択肢の中から考えてみるといいでしょう。(提供:ビジネスサポーターズオンライン)