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地下鉄やバスで進むAI化 アリババやテンセントがけん引
中国政府は2017年11月、AI国家プロジェクトを認定した。自動運転、都市計画、医療映像、音声認識の4部門である。この中には含まれなかったが、公共交通システムへのAI技術応用もかなりのスピードで進行している。
その象徴的な事例があった。同年12月上旬、「世界互連網(インターネット)大会」に合わせ、上海電通地鉄集団とアリババ、アント フィナンシャルの三者が、戦略提携を締結すると発表したのである。アリババグループの最新AIテクノロジーを、上海地下鉄に導入していこうという内容である。その他、広州市や香港の地下鉄でもAI化計画は進行している。さらに路線バスや、鉄道、また無人運転バスの実験も進行している。
こうした現状についてニュースサイト「今日頭条」や「易網」などの各ネットメディアが伝えている。以下、中国の公共交通AI化の現状とその進展ぶりについて見ていこう。
上海地下鉄とアリババの提携
国際的大都市である上海の地下鉄は17路線、367駅、営業キロ数はすでに世界最長クラスである。今後21路線780キロまで計画されている。そこへアリババが導入しようとしている技術は次のようなものだ。
まず「語音購票(音声認識によるチケット購入)」。上海地下鉄の片道キップを買うとき、あまりにも複雑な路線図に、めまいを起こす人もいるだろう。アリババが今回展示した語音購票技術は、発券機に目的地を告げるだけで、切符を購入できる。例えば「私は、東方明珠塔へ行きたい。」と言えば、発券機は乗客に推奨路線と、最適な下車駅を知らせてくれる。乗客はQRコードをスキャンするか、虹彩認証で購入することができる。全部でものの数秒間しかかからない。
このAI発券機は会話、発音のやりとりだけなら問題はない。しかし、「人山人海(黒山の人だかりの意)」などの字面だけでわからない言葉の真の意味までは、これまで認識できなかった。
ここでアリババ中の最も神秘的な部門といわれるIDST(Institute of Data Science and Technologies)の登場である。IDSTの誇るAI専門家、声楽専門家、コンピューター視覚認識の専門家などが大挙して出動した。そして「多模態智能語音交互解決方案」という研究成果につなげた。これによって声質や上記の問題を解決できるとしている。
片道キップを買おうと苦闘している情景を別にすれば、地下鉄を利用で頭の痛いのは、プリペイドカードを忘れたときだ。「刷臉進站」は、この面倒を解決してくれる。最新型自動改札装置では、新しいディスプレイが一つ追加されている。ここでほんの少し留まるだけで、虹彩認証は完成だ。扉は開き、乗客は改札を通過できる。このアリババの人臉識別システムは、国際的に公開されている計測基準によるデータでは、精度99.5%の好成績を挙げている。
ただし音声識別、虹彩認証はもう少し先になる。まず「Metro大都会」というスマホアプリを起動し、自動改札の読み取りでスキャンして、通過するシステムに取り込む。このシステムを2018年初めから、全17路線に順次導入していく。
もう一つ、智能客流監測(人の流れを観測して可視化)の最新技術についても導入される予定だ。